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平成21年2月 第2349号(2月18日)

高めよ 深めよ 大学広報力〈22〉
  神田外語大 ハード・ソフト一体の改革
  武蔵野音楽大 新学科設置などで新機軸

こうやって変革した(19)

 これまで、この企画で取り上げた大学は総合大学が多かった。日本私立大学協会には単科系大学も加盟している。均衡を取るためにも、これからは単科系大学も取り上げていきたい。その嚆矢として語学の神田外語大学(赤澤正人学長、千葉市美浜区若葉)と音楽の武蔵野音楽大学(福井直敬学長、東京都練馬区羽沢)に登場してもらった。総合大学と違うのは大学の規模が小さいこともあって、広報体制も小粒になる。また、情報を伝達するマスコミ分野も若干、異なるようだ。少子化・大学全入時代の厳しい大学運営については総合大学と同じ「立ち位置」にいる。そうした単科系大学が展開する広報の現状とこれから、単科大学にとってのあるべき広報の形―などを尋ねた。(文中敬称略)

単科系大学広報の現状

 神田外語大は、学校法人佐野学園が専門学校の神田外語学院や神田外語キャリアカレッジなど六機関と共に運営する。神田外語大は一九八七年に開学。二〇〇〇年、留学生別科を、〇一年、国際コミュニケーション学科、国際言語文化学科を設置した。
 現在、英米語学科、中国語学科、スペイン語学科、韓国語学科と〇一年設置の二学科を加えて六学科。専攻できる言語は、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ブラジルポルトガル語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語の八つある。
 入試広報部次長の玉造美恵が語る。「自分で見て、聞いて、考える、そのすべての体験が勉強の場です。どの専攻言語も、四年間で、その専攻言語をマスターし、その言語の使用地域そのものについても深い知識を得ることができます」
 少子化・大学全入時代を迎え、神田外語大も総合大学に負けじと改革に取り組んでいる。同大のハードとソフトが一体となった改革を玉造が説明する。
 「二〇〇三年に、教育施設「SACLA」を開設。Self−Accses, Communication, Learner Autonomyの頭文字をとった、先端的な語学とIT学習センターです。一階がメディアセンター(メディアプラザ/カフェ/スタジオ・編集室)で、二階がランゲージセンター(ELIラウンジ/SALC/ラーニングスペース)です。
 国籍を超えてコラボ
 〇八年には、新教育施設七号館が完成。一階は図書館で、閲覧スペースは三五〇席、蔵書数は約一六万冊です。二階は、MULC(Multilingual Communication Center)。中国語、スペイン語、韓国語、インドネシア語、ベトナム語、タイ語、ブラジル・ポルトガル語のブースにはそれぞれの国の建物が配置され、学生と教職員が国籍を超えてコラボレーションする創造的空間になっています」
 広報面では、神田外語グループの法人広報がサポートしている。同グループ理事長室長の佐野元泰が語る。「大学はアカデミック、専門学校は実学というように、それぞれ特徴があります。語学教育のなかで、それぞれのいいところを取り入れ、シナジー効果があがるよう全体(の広報)をみています」
 毎年、夏休みに中高校生や教員向けに全国で展開する教育ルネサンス「英語と文化の公開講座」は大学と専門学校が一緒になって実施する。昨年夏の公開講座は全国十一ヵ所で開催、二五〇〇人もの参加者を数えた。
 映画の「字幕翻訳コンクール」(審査委員長・戸田奈津子)も人気のあるイベント。〇七年の同大創立二〇周年を記念して始まった。昨年は映画「幸せの1ページ」に海外含めて一万四六六四件の応募があった。これが縁で、字幕翻訳の第一人者、戸田さんをグループのアカデミックアドバイザーに招いた。
 グループ広報力活かす
 このような事業やイベントは、大学単独でなくグループとして行なう事が多い。これらに大学として積極的に関わるというのが同大の特徴だ。こうした“旬”の話題はマスコミも取り上げてくれるという。
 広報に関して日本私立大学協会への要望を玉造に聞くと、二つ返ってきた。「宣伝効果で実績を伸ばす企業広報から話を聞く機会を設けて欲しい。社会のニーズを敏感につかみ、発信するノウハウをプレスリリースの上手な使い方も含め、今後とも勉強していきたい」
 「入試関連のセミナーを開催してほしい。一般的な広報全般の話ではなく、大学入試に関する予備校等の偏差値予測方法や、それを進学指導に使わざるを得ない高校の状況、受験生指導の現実等を統計的に勉強できる機会です」
 佐野は、単科系大学の広報を、最後に、こう述べた。「総合大学は、様々な持ち味が伝えられます。単科大は小さくても、しっかりしたものがあれば持ち味になる。うちでいえば、人材であり、教育です。これだけは一流、というものをこれからも訴求していきたい」。前へ前へと進む神田外語大の歩みは止められない。
 私立音大では最古参
 武蔵野音大は、私立音楽大学としては歴史も古く、音楽教員も数多く輩出している。一九四九年に武蔵野音楽大学の前身、武蔵野音楽学校は創立された。創設者の福井直秋は、西洋音楽の美に感動、その普及と向上に強い情熱で取り組んだ。
 現在、器楽学科、声楽学科、作曲学科、音楽学学科、音楽教育学科、ヴィルトゥオーソ学科、音楽環境運営学科の七学科ある。一、二年生は入間キャンパス(埼玉県入間市)で、三、四年生は江古田キャンパス(練馬区羽沢)で学ぶ。
 大学にとって厳しい時代を迎え、音楽大学も総合大学と同じように改革に取り組んでいる。武蔵野音大の改革の歩みを理事の丸山徹薫が説明する。
 「〇二年度以降、毎年のように教育改革を進めています。近年では、〇五年に音楽学部の専攻実技のレッスン時間を延長しました。〇六年には、ヴィルトゥオーソ学科を、〇七年には音楽環境運営学科を新設しました」
 ヴィルトゥオーソ学科は、演奏実技に重点を置き、これに関連の深いカリキュラムを組んだ。音楽環境運営学科は、コンサートホールや劇場などで行う芸術文化活動の企画、制作、運営などアートマネジメントに能力を発揮できる人材を養成するという。
 同音大の広報体制と業務を広報企画室主任の二瓶武廣が語る。「広報企画は総勢六人です。受験生や父兄からの資料提供などに対する情報提供、新聞や雑誌などへの広告出稿、大学見学への対応、それに全国で春夏おこなう講習会や学校説明会の応援などが主な仕事になります」
 総合大学との違いについて、二瓶は、こう続けた。「広告出稿では、音楽系の雑誌にもウエイトがかかります。受験生が音楽に特化された形なので、どうしてもそうなります。新聞への広告も、音楽系の大学がまとまって出したりしています」
 一味違う学校説明会
 学校説明会は、総合大学と音楽大学では、かなり異なる。二つのキャンパスで行なう「学校説明会」と毎年、夏と冬に全国で行なう「講習会」。前半に大学の様子を説明、後半は同大の先生たちがピアノ、声楽など実技のワンポイントレッスンを行なう。講習会には広報担当者ら教職員は三泊四日で出かける。
 二瓶が説明する。「音大の入試には実技が必修です。大学はもちろん、受験生も実技には神経を使います。講習会は、受験生が先生から直に習える機会なので真剣です。毎年、全国の五、六都市で実施しています」
 同大の広報誌「MUSASHINO for TOMORROW」(年四回発行)は好評だ。「学外の著名な方々からも原稿をいただき、インタビューやニュースなどを通して学園の動向や卒業生の活躍なども掲載しています。音楽には熱心なファンが多く、そうした人たちにも読まれています」(二瓶)
 広報面での総合大学と違いは、こうなっているようだ。「こちらから音楽系の情報を発信するにしても一般紙に書いてもらうのは難しい。音楽系のメディアは演奏会など紹介してくれます。うちには熱心な、いい先生も多い、彼らが広報の一員になってくれればいい、と思っています」(丸山)
 最後に、丸山が音楽の単科大学の広報について語った。「建学の精神、教育方針の徹底が第一。音楽といっても、大事なのは人間形成。ただ、演奏するのではなく、音楽的な教養、教育力を高く持つ。これを教職員に徹底させる内向けの広報、外に向けては、自分らがPRできる能力を身に付けていく、ことではないでしょうか」。武蔵野音大の改革はまだまだ続く。

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