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平成21年2月 第2349号(2月18日)

変革の彼方に

福山大学学長 牟田泰三

 我が国の人口構成の変化や経済情勢を反映して、大学淘汰は否応なく進行している。その波を乗り切っていくためには、社会の変化に柔軟に対応できる経営感覚が要求されている。
 私は、平成十九年五月まで、前任地の広島大学で学長として大学の舵取りを務めさせて頂いたが、その任期中に国立大学法人化という明治以来の一大変革に遭遇した。学長在任中の六年間のうち、前半の三年間は法人化への準備に明け暮れ、後半の三年間は法人化した国立大学の基礎固めに専心した。
 平成十九年秋からは広島県東部の福山大学の学長をしている。私に課された使命は「大学の改革・改善を進め大学の発展を図る」ことだと理解している。私立大学は、これまで、社会の変化に対応しながら、それぞれの個性を生かした改革を進めてきた。国立大学が法人化された平成十六年以前は、明らかに私立大学の変革のテンポのほうが、全般的に、国立大学の改革の進度よりは早かったと思われる。しかし、平成十六年前後を境目として、変革のスピードは、国立と私立で逆転したようにみえる。教育体制に関していえば、教育改革の進んだ私学は、まだ、国立の前を走っているといえるかも知れないが、法人化によって大きく変わった国立大学の組織運営の有り様は、今後一〇年の間に、私学よりはるかに先へ進むのではないかと思われる。実際、教育・研究・社会貢献のあらゆる面で、旧来の固定観念から脱却し、より個性的で魅力的な姿へと進化することができない私学は、大学淘汰の中で生き残ることは難しいだろうと思われる。
 福山大学では、大学改革の最初の課題として、教育改革を取り上げ、大学教職員の全面的な協力の下に、教育改革構想「福山大学教育システム」を立案することができた。現在、この教育改革構想に基づいて、各学部・学科が具体的な教育プログラムを立案中であり、各学部の平成二十一年度計画の中で、教育改革の実施計画を記述することとなっている。今後は、時代の流れをつかんだ入試改革や、大学発展のための組織改革にも着手する予定である。これらの大規模改革を進めていくバックボーンとしての、大学の将来を見据えたビジョンも確立したい。
 国公私立大学は、それぞれの特質を踏まえた大学改革を続けて変革を遂げている。これらの変革の彼方にどんな姿が見えてくるのだろうか。全国で七〇〇以上ある大学が淘汰の果てに統合や廃止の波をかぶり、三〇〇ぐらいになってしまうのだろうか。それとも、それぞれの大学が個性を発揮して、社会人や高齢者などのニーズに対応して教育体制を整備したり、高学歴社会に則した大学院の整備を進めたり、社会で役立つ資格の取得をし易くしたり、国際的に高い評価を受ける研究大学として特色を打ち出していくなど、大学の顧客層を広げて広がりを見せ、それぞれが存続の道を見出していくのだろうか。これから一〇年後の日本の大学界の姿は、単純な予測をはるかに超えたものになるように思われる。

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