平成21年2月 第2349号(2月18日)
■質の担保、公的支援を強調 大学全入時代の教育の在り方
教育再生懇談会(座長=安西祐一郎慶應義塾長)は去る二月九日、総理官邸会議室で第七回会合を開き、「これまでの審議のまとめ―第三次報告―(案)」について協議するとともに、以前の教育再生会議、同懇談会報告の実施状況のフォローアップを行った。
第三次報告として了承された審議まとめのポイントは、(1)携帯電話利用の在り方について〜有害情報、生活習慣の乱れなど携帯電話利用に伴う弊害から社会総がかりで子供を守る、(2)大学全入時代の教育の在り方について、(3)教育委員会の在り方について、の三点。
これまでの同懇談会での審議まとめでは、(1)携帯電話利用の在り方については「近年の情報化の進展により、パソコンや携帯電話、ゲーム機等による様々なコミュニケーションが子供の生活に浸透しつつある。有益なものもあるが、暴力・犯罪・いじめを誘発するような有害情報もあり、子供の生活習慣の乱れや対人関係の希薄化などの弊害も指摘されている。特に携帯電話は、保護者の目が行き届かないことから、特段の教育的配慮が必要である」と取りまとめられている。
また、(3)教育委員会の在り方については、「教育委員会が期待される役割を果たせず、形骸化し、信頼を失う事例も生じていることから、同懇談会においては、教育委員会制度の問題点を明らかにし、それらを克服するための方策を提言していく」と取りまとめられている。
なお、(2)の「大学全入時代の教育」の報告内容の詳細は次のとおりである。
@危機に立つ大学教育
▽大学は、大学教育の名に相応しい学生及び教育の質を確保できているか。
▽経済的事情にかかわらず、意欲と能力のある者の大学進学を保証する仕組みが整っているか。
▽トップクラスの人材を育てる環境となっているか。
A大学教育の質を担保する
●学生の質の担保
▽大学は入学者の基礎的な学力を確保する=必要な学力検査の実施、本来の趣旨での推薦・AO入試の実施など。
▽大学は卒業生の質に責任を持つ=GPA制度、単位・進級・卒業認定の厳格化など。
●大学教育に対する外部チェックの厳格化
▽設置認可段階での質の担保を図る=大学教育としての教育条件の審査の徹底、入学者選抜の方法の審査など。
▽大学の質に関する第三者評価の在り方を見直す=教育、研究水準の比較を可能にするための評価指標の明確化など。
B高等教育に対する公的支援の在り方を改革する〜中長期的な高等教育戦略の観点から〜
●大学財政が私費負担に依存せざるを得ない構造を転換
▽大学財政の公私負担割合の在り方の検討、大学の質の担保を前提に、納税者の支持を得られる大学への公費投入の検討など。
●家計への支援により、意欲ある学生に学問への途を開く
▽学生への給付型の経済支援方策の拡充の検討。
Cトップクラスの人材を育成・支援する
●学術研究の担い手・教育補助者としての大学院生の貢献を正当に評価し、給付制の支援方策を拡充する
▽若手研究者並みの水準を目指した給付制の支援方策(RA・TA等)。
●高大連携の推進により優れた高校生の能力を伸ばす
▽国際科学オリンピック優秀者に対する大学入学者選抜での特段の配慮など。