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平成26年9月 第2579号(9月17日)

改革の現場
 ミドルのリーダーシップ <68>
 グローカルに学生を育成
 留学生と共に地域活性化
 青森中央学院大学


 青森中央学院大学は、学校法人青森田中学園が1998年に、日本で唯一の経営法学部の単科大学として設立した。併設の青森中央文化専門学校は、東京の文化服装学院と連鎖校として提携している。東南アジアからの留学生比率が高く、地元企業と留学生を結び付けた地域活性に取り組もうとする中で、日本人学生のグローバル意識の醸成も行っている。2014年には看護学部を開設した。これまでの取り組みを、石田憲久理事長、花田勝美学長、齋藤正彦事務局長、櫻庭肇事務局次長、石田壮平企画部長に聞いた。

 大学開学時、「留学生10万人計画」と絡めて、文部省(当時)より「入学定員の増加分の3分の1は留学生に」という勧告があった。これを受け、段階別の日本語プログラムの充実や国際交流会館(国際寮)の設置など留学生に手厚い支援を行うとともに、正課内外のあらゆる機会に留学生を地域に送り出した。海外からの教育旅行生をコーディネートしたり、学校・農家・商店街で子どもや市民と文化交流したり、タイのマンゴーを直売したり、あるいは、リンゴや帆立を加工して輸出する等の地域経済活性化の試みも始まろうとしている。留学生にとっても、また、日本人学生にとっても、地域の現場は実践的な学びの機会である。
 これが留学生の母国でも評判を呼び、(一部は短期大学時代から)留学生の保護者や出身校関係者の口コミで主に東南アジアの海外提携先大学が急増した。「3年前からメディアの露出も増え始めています。学生にとっては自分の取組がメディアに載れば自信も生まれますし、保護者も安心する材料となります。当然、大学の知名度も上がり、志願者増にも結び付きます」と齋藤局長は述べる。また、市長村長リレートークを始め公開講座も充実させ、青森市街地にサテライトキャンパスを置いて学生主催の地域交流イベントを行う等グローバルとローカルのハブとして機能している。
 これらの取り組みを教育面からみると、全学年にわたる「キャリアプランニング」、「専門演習(ゼミ)」、「地域探究アクト」等と呼ばれる正課科目にうまく取り込まれていることが分かる。「特にキャリアプランニングでは、1、2年次はコミュニケーション能力や行動力を養い、3年次は就職活動に直結するプログラムで、地域探究アクトは、より実践性を活かした取り組みとなります。教員はコンサル経験者など現場志向の方も多いのが特徴です」と花田学長は説明する。地域の課題解決と国際交流と大学教育が見事に融合し、成果は卒業生に対して95%という高い就職率に表れる。一方、問題を抱えた学生は、ゼミ担当教員と、学生、学習、学生生活の支援を一体的に行う「学習支援センター」を中心に出欠状況や相談記録等のデータを踏まえてキメの細かい支援が行われる。
 大学は、これまでの短期的な計画を包括的に継続させた中長期計画を見直し、各部署に分散されたデータを一括で管理し、新たな中長期計画を策定することとなった。「事務局でIRプロジェクトを立ち上げています。現場のデータを集めて、うまく学生の支援等に繋げたい。自己点検評価は、認証評価が始まる数年前から始め、報告書を作成し、次年度の改善点を分析しています」と石田企画部長。経営体制は、全体の方針を決める大学経営会議オ落タ質的な調整機関である部局長会議オ頼w部教授会という流れで意思決定を行うが、その全てに職員は参加・陪席して意見を述べる。事務局運営や進捗状況は、職員の課長・リーダー会議で情報共有を図るなど会議体を適切に配置することで、情報共有が隅々まで行われる仕組みである。「教職協働は短大時代からの文化として続いています。教員の採用人事を人事委員会に権限移譲するなど、本年から2学部になったことを機に様々な学内改革にも手をつけようとしています」と述べる。
 SDは、昨年度から学内でのグループワーク形式に変更しテーマを設定、議論をして発表する。また、他大学視察や調査も積極的に行い学内で報告される。
 「元々、企業経営者にガバナンス等の法知識が不足していることを背景に創設したのが経営法学部ですから、今後はますます大学院に地元企業経営者が気軽に入学できるようにしたいと考えています。また、本学に看護学部がある意味を考えるようにしています。国際も強みですが、経営法学部を持っているのだから、経営と法律に強い看護師の育成等も視野に入れています」と石田理事長は展望を示した。

定員を満たせない学部があっても、超安定財政を実現
桜美林大教授/日本福祉大学園参与 篠田道夫

 戦後、手に職を付けて生活の自立を図ろうと珠算簿記学院と裁縫学院を設立した伝統。これは現在も、法律知識を持って経営の意思決定ができる全国唯一の学部、経営法学部と看護学部(平成26年度設置)に息づいている。
 教育の特色は、地域貢献、国際化、少人数教育の三本柱。とりわけ地域と連携した実践力を育成する教育を徹底する。その柱は「地域・企業との連携による課題解決・参加型プログラム」。地元企業とコラボし、学生たちの力で新商品を開発する。授業は体系的に組まれ、1年次は様々な業界の社会人と座談会、2年次は学生が青森県産品をプロデュース、3年次では企業が抱える課題や問題に学生目線で解決策を提案するプログラムに発展する。
 優れているのは、こうした地域連携に留学生も巻き込み、地元の国際化にも貢献している点。留学生は、現在、7つの国と地域から124人、ベトナム、タイ、中国、韓国、マレーシア、台湾、セネガルなどである。その留学生が語学サポートセンターに自分の特技なども含め登録、地元の要望に基づき派遣する制度は、小中高生の総合学習が人気で、地域の文化交流に大きな役割を果たす。留学生の活躍や学生の地域・企業との連携は、「地域企業とコラボ、学生ら新商品開発」(『朝日新聞』)など連日のように紙面を賑わし、大学評価の向上にもつながる。別々に見える地域貢献と国際化は一体となって強い特色となり、また、それ自体がサービスラーニング、実践教育として機能する。
 開学以来の徹底した少人数教育、1ゼミ10名程度の密度の濃い授業で顔の見える教育を行う。学習支援センターでは、学生相談記録、学生出席情報などを学習支援、生活支援に生かす。
 FDにも積極的に取り組み、FDネットワーク“つばさ”に参加、授業アンケートでの学生コメントに対する教員の回答を公開、各学期1回、授業方法検討会を実施、授業の状況、成績・評価、教育方法の報告、交流、改善議論を行う。
 就職率95.9%。朝日新書『就職力で見抜く!沈む大学・伸びる大学』(木村誠著)で、就職率が商・経営系で第1位と紹介された。入り易くて就職に強い大学と評価される。先述の地域・企業連携教育を含むキャリアプランニングを正課の人間探究科目群の柱として開講、就職を勝ち抜く実践力を養う。就職成功は学力や能力だけではなく、どれだけ事前準備したかで決まる。今日の環境では当然転職、再就職もある。率を上げるだけではなく、卒業後の就業生活まで含めたキャリア形成を目指している点が優れている。
 本州最北端、青森は志願者を安定的に確保していくには厳しい環境である。看護学部は順調だが経営法学部は定員を完全には満たせていない。短大は食物栄養、幼児保育とも順調だ。一方、財務状況は過去五年、消費支出比率80%台、人件費比率40%台、帰属収支差額比率10%台をキープ。看護設置で資産の取り崩しはあったものの経営判定A1の超健全財政を保つ。これはどのように実現しているのか。
 まずは支出の中心である人件費のコントロール。教員人事の決定権限を新設された人事委員会に移管、教授会は業績審査のみ行う方式に転換した。給与カットはせず、予算編成と執行を、財務指標を基に厳しくチェック、事業計画を見据えた人事計画・施設整備計画をすすめる。法人本部企画部を立ち上げ、中長期計画策定に向けての調査・分析も行う。
 その推進の中核は大学経営会議及び部局長会議で、理事長、学長、事務局長ほか役職者で構成、大学運営の基本事項、教授会付議事項、自己点検評価など法人・大学全体の改革推進をリードする。事務局は課長・リーダー会議を毎月開催、部門間の連携、問題意識の共有を図り、他大学の改革事例も調査、職員全員による事務局研修会も行う。職員が経営・教学のあらゆる場面で中心的役割を担っており、改革推進のエンジンとなっている。教職員の資質向上を最重要課題と位置付けてFD・SDに取り組む姿勢はこの学園の力の根源を表している。
 「改善は下から、改革は上から」の言葉通り、法人・大学、教・職一体の着実な改革と特色化の努力の成果がこの法人の成長を作り出している。



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