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平成26年4月 第2559号(4月9日)

改革の現場
 ミドルのリーダーシップ <61>
 文理融合の総合大へ 地域連携は学内で一本化
 中部大学


 大学改革の契機は2005年の山下興亜学長が就任した時だった。山下学長は即時にリーダーシップを発揮して、翌年、理工系から総合系の大学へと発展した大学の基本理念や使命・目的を改めて定義づけた。更に2007年には、全学部が関わる基礎力育成のため、全学共通教育部を発足させ、その後の継続的な教育改革に緒を付けた。「大変だったのは教員の意識改革です。教養は一部の教員だけがやればいいという考えでしたから。自分の学部の教育に責任を持つだけではなく、就職関係も『やるべきことをやる』という認識を持ってもらうようにしました」と後藤副学長は振り返る。
 学園全体のガバナンスは、運営協議会が核となる。事業計画、予算案等や各学校の報告等重要事項について、理事会・評議員会の前に自由討議ができる理事長の諮問機関である。一方、大学の最高意思決定機関は大学協議会で、学部教授会の上位に位置づけられ、大学の方針を決定する。隔月開催で、不開催月は、非公式の学部長会、研究科長会が開かれ大学全体の問題等を議論する。「大学における作戦本部は、月に2度開催される学長室会議で実質的な議論が行われます。これは学長の諮問機関であり、ここで固まった提案が運営協議会や大学協議会に上げられます」と大西本部長。なお、理事長の元には理事長室が置かれ、学園全体の課題について理事長室会議が行われている。更に学長は、副学長のほかに、学長補佐、そして、教職員から学監を指名し、学内の特定業務に当らせることができる。大学戦略はこうした万全のサポート体制で学長が主導で作るが、それに基づいたアクションプランは、各学部で副学部長が代表となって作成される。
 以上のように、同大学は急激に発展しても、理事長・学長が経営・教学をリードしていく仕組みが備わっている。
 さて、COCに採択された地域貢献について。推進体制は、COC担当理事に後藤副学長、地域連携教育センター(COC推進委員会によって運営)体制となる。教育研究面での地域連携は、他に研究支援センター、エクステンションセンターの3センターが連携して行う体制となっている。
 「COC事業は、教育、大学間連携、就業力育成のほか各種GPの成果など、これまでの様々な取組の集大成とも言えます。学園の基本方針に社会貢献を謳い、建学の精神である「あてになる人間」を掛けて「あてになる大学」として、立地する愛知県春日井市における地域の課題を解決する研究・協働を行い、「報酬型インターンシップ」「シニア大学」といった取組を正課・正課外教育に組み込みながら4年間、学生を地域と関わらせ、最後には「地域創成メディエーター」の称号を与えます。オープンカレッジ、エクステンションセンター等の従来の地域貢献も総合的に行ってきます」と庄山部長は解説する。特別に新しいモノを作るのではなく、現在の取組を少し広げる。取組を全学として組織化する。こうした取組も、学長室会議で原案が出され、先述の学部長会や研究科長会で説明をしてオーソライズされた。
 地域連携の体験教育へと方針転換する中で、こうした教育法が苦手な教員についてはどうするか。「すでに取り組んでいる教員のプロジェクトを一緒にやって頂く形で関わる教員を増やしていますが、浸透には時間がかかります。春日井市は、適度に課題も多く、関わる教員が多かったことが、本学の教員の取組が多かった理由ではないかと思います。教育方法については、教務委員会やFD委員会で改善を図っていきます」と伊藤准教授は述べる。
 COC事業のポイントは恐らくこういうことであろう。すでに現場レベルで取り組まれている個人の地域での取組を全て洗い出し、センターで一本化する。これらの中から、全ての学部に関わりがあるテーマを選び、一つの図に表わす。同時に、4年間、学生を関わらせる成長物語をやはり1枚の図に表わす。こうした動きについて、学内で辛抱強く議論を重ね、説得をしていく。何より、中部大学のように、ブレずに学内をまとめるトップとそれらを支援するミドルのリーダーシップの役割が大きいのではないだろうか。

経営・教学一体、教職員の力を生かし確実に
実行する運営で発展
桜美林大教授/日本福祉大学園参与 篠田道夫

  2013年度、文部科学省のCOC事業に採択された「春日井市における世代間交流による地域活性化・学生共育事業」は、7学部29学科に成長した中部大学が、学部・専門の枠を超えて共通する力を育成する中核教育システムである。学長主導で、COC担当理事兼副学長を置き取組全体を統括、七名の職員を配置した地域連携教育センターが強力に活動を進める。
 全学共通教育は、地域連携教育にとどまらない。学部とは別に全学共通教育部を設置し、初年次教育、キャリア教育、スキル教育、外国語教育、教養教育等を実施、どの専門を学んでも、共通する社会人としての基礎力を持った学生の育成を目指す。
 1984年、それまで工学部単科だった中部工業大学から校名を変更すると同時に経営情報学部と国際関係学部を設置した。それから2000年代にかけて、人文学部、応用生物学部、生命健康科学部、現代教育学部と数年おきに新学部を誕生させ、急速に文理融合の七学部を有する中部圏屈指の総合大学に成長してきた。
 こうした連続的な拡充・発展を担ったものは何か。この学園の法人・大学一体体制は強固だ。法人と大学の主要幹部がそろう運営協議会、ここから中部大学の進むべき道が発信される。常勤理事二名を置くが、大学の副学長で財務担当が法人の財務担当理事を兼務、大学の人事を担当する副学長が法人の人事担当理事になっている。理事長は大学総長を兼務し、学長、副学長が理事を務め、学監や学長補佐が渉外や入試、高大連携等の経営・教学一体の特命事項を担当、相互乗り入れの複合的な幹部配置で統一運営を作り出す。大学協議会は学部の上に立つ大学の最高意思決定機関だが、学長、学部長、教学役職者のほか法人本部長、大学事務局長も構成員として決定に参画する。その点では教職一体体制でもある。
 大規模組織なのに迅速な意思決定が可能な背景には、学内理事や主要教学役職、事務幹部で構成される理事長室会議や学長室会議を置き、この少人数での徹底した議論で理事長、学長方針を踏まえた実行方針案が練られる点にある。
 しかし、こうした方針策定は幹部だけで行われているわけではない。テーマに応じ時限的組織が作られ、しかもその答申は速やかにトップ機関に提案・決定され実行されることでこの大学の改革は推し進められてきた。例えばディプロマ戦略室は、副学部長を中心に特に就職実績向上にシフト、100%卒業、100%就職などを掲げ学科別工程表を策定、強力に推進した。就職率は95.1%、上場企業で資本金3億円以上、従業員300人以上の企業及び公務員への比率が53.2%と中部圏トップクラスの実績を作り出す。アドミッション戦略室は年度ごとの広報計画の立案、学科単位での計画の具体化を、学生支援戦略室は学生の自発性・自律性、学生の成長を支援する戦略の構築に取り組む。
 教職員の成長も重視する。大学教育研究センターでは教育総合評価・表彰制度を実施、学生の授業評価、教育研究活動、学内行政への貢献などをポイント化、教員の自己評価を加えた総合評価を取りまとめ表彰、評価することで教育改善に継続的に取り組む。研究費も特別研究費を設定、研究計画をA=外部資金を獲得できるレベルから、C=学内固有の課題研究まで三ランクで審査し競争的に資金配分する。職員も人事考課を実施、自己申告と目標管理制度を一体化させ、キャリア開発シートで自己実現と職務能力の向上を目指す。
 特に2007年からの事務部門の業務改善、学園の財政確立をめざす構造改革プロジェクトは優れている。毎年テーマを決め、第1ステップは学園を取り巻く環境と課題の共有化から始まった。収入増・収入確保策、管理運営の改善、支出抑制策等のテーマからスタート、次第に問題の構造解析、経営基盤確立、中期計画の研究、人件費・人材活用策、学生サービス、教務組織の強化、組織再編、施設管理、財政強化などに広がっていった。参加人数も20人〜50人、ワーキンググループも多い時は9グループが活動した。継続的に現状を分析、他大学を調査し、課室の壁を超えて情報を共有し、知恵を出し合うことで意識改革、力量向上に大きな役割を果たした。
 構成員の力を引き出し、これを徹底して生かしながら方針を策定、一旦決定したことは強力なリーダーシップと推進体制で実行し、急速な発展と中部圏での高い評価を作り出してきた。大学開学50周年夢構想事業で更なる飛躍を目指す。



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