平成26年2月 第2552号(2月12日)
■大学は往く
新しい学園像を求めて 〈90〉
熊本学園大学
地域に根差し、世界に飛翔
グローバル化にも傾注 就職力と学生支援誇る
地域に根差し、世界に飛翔する人材の育成を目指している。熊本学園大学(岡本悳也学長、熊本市中央区大江)の建学の精神は、『師弟同行』『自由闊達』『全学一家』である。1942年、東洋語学専門学校として設立され、創立70周年(2011年)を迎えた。商学単科の大学から現在、五学部を擁する文系総合大学に発展した。基礎的学力の充実、インターンシップ・体験的学習の経験、教養科目の重視、国際教育や国際交流に力を入れる。充実した自由な学びの環境のなかで、学生の就職活動を強力バックアップする「就職力」と、特待生制度やスポーツ奨励金制度など「学生サポート体制」を誇る。「優れた教育環境と教育システムで実学に強い大学として、世界に飛翔し、地域社会に貢献できる人材を育成したい」という学長に、大学の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)
商学単科から文系総合大学に発展
キャンパスは、熊本市の中央に位置している。雄大で、世界にも稀なカルデラをもつ阿蘇の噴煙を望むことができる。阿蘇の山並が育んだ豊かな湧水の恵みの中に屹立するように学園がある。
熊本学園大学は、高橋守雄をはじめ熊本の有力者が協力して設立した東洋語学専門学校が淵源だ。高橋は、1883年、熊本県に生まれ、東京帝国大学法科大学を卒業後、内務省に入り、1922年、熊本市長となり、市の近代化を推進した。
31年、第34代警視総監に就任。退官後は熊本に帰り、42年、東洋語学専門学校理事に、戦後、校長となった。「東洋語学専門学校はマレー語やロシア語を教え、当時は東京外大、大阪外大、天理大と並び称されました」と学長の岡本。
同校は、50年、熊本短期大学となり、54年、商学単科の熊本商科大学(初代学長は高橋守雄)となった。67年、経済学部を設置。94年、大学名を熊本学園大学に改称、外国語学部・社会福祉学部を設置した。
2000年、社会福祉学部に福祉環境学科を増設。05年、商学部にホスピタリティ・マネジメント学科、06年、経済学部にリーガルエコノミクス学科、社会福祉学部に子ども家庭福祉学科、09年、社会福祉学部にライフ・ウェルネス学科をそれぞれ設置した。
新学科を次々に設置
新しい学科を矢継ぎ早に設けたのは?「ホスピタリティ・マネジメント学科は、観光、ホテル、航空などのサービス業が成長したのに対応、リーガルエコノミクス学科は学生の公務員志向、企業のコンプライアンス重視に、ライフ・ウェルネス学科は、命と健康、生涯スポーツという時代の要請にそれぞれ応えました」
現在、商学部、経済学部、外国語学部、社会福祉学部(第1部、第2部)の5学部13学科に5800人の学生が学ぶ。出身地は県内が8割、県外が2割、男子が6割弱で、女子が4割強だという。学長の岡本が大学を語る。
「大学は、専門知識の供与のみに集中していれば十分というわけではありません。若者は一人ひとりが異なる光を秘めた固有の原石に例えられます。嘘をつかない真摯な心を持つ若者は、磨き方さえ間違わなければ必ずや燦然と輝きを放ち、社会に、そして国際社会に役立つ宝石となるのです」
各学部の学び。商学部は、商学科、経営学科、ホスピタリティ・マネジメント学科。「いま、世の中は、『規模の経済』から『時速の経済』へ移っている。マーケットの変化が速く、グローバル時代に対応し、流通・金融・経営・会計をはじめ、様々な分野で活躍する教養知識豊かなスペシャリストを育成します」
経済学部は、経済学科、国際経済学科、リーガルエコノミクス学科。「経済学科では、1年次で経済の基礎をしっかりと学び、2年次から各専攻に進み、専門性を高めます。リーガルエコノミクス学科では、経済学の専門知識とリーガルマインドを持ったプロフェッショナルの育成を目指しています」
外国語学部は、英米学科、東アジア学科。「外国語でのコミュニケーション力と異文化理解力を育てることで、異文化社会での適応能力や問題解決力を高めます。外国語と関連分野の学びを通じて、国際的視野と知性を養い、国際社会で活躍できる人材を育成します」
社会福祉学部は、社会福祉学科(第1部、第2部)、福祉環境学科、子ども家庭福祉学科、ライフ・ウェルネス学科。「充実した福祉教育・環境教育・健康教育を基礎として、社会福祉関連の各種資 格取得を通じてのプロフェッショナルなケアワーカーやソーシャルワーカーを育成しています」
就職力。就職課は、総勢14人(専門アドバイザー5人を含む)。同じ規模の大学としては九州屈指の就職支援体制を誇る。学生のニーズに沿った多様な就職支援サービスを整え、学部と連携して就職活動を支援する。
「内定ピーク時に就職を決めることができなかった学生を対象とした個別相談会もヤングハローワークとタイアップしながら定期的に開催。在学中だけでなく卒業後も支援を継続し、一人ひとりに寄り添うサポートを充実させています」
インターンシップに毎年350人程度が参加。就職が内定した4年生が学生就職アドバイザー(GSA)として、3年生に助言。GSA主催の「活動塾」は、自己分析の仕方やPR法など実体験にもとづいた就職活動のコツなどを伝授する。
グローバル化。1961年の中南米事情研究所の開設で国際的な研究や調査を始めたことを契機に、教員の長期留学制度の発足、アメリカ・モンタナ州の大学との姉妹校締結など様々な国際交流を推進している。
学生を世界に送り出すとともに、多くの外国人留学生を受け入れている。交換留学、短期交換留学など三つの国際教育プログラムで派遣人数は過去5年間で249人。充実した留学生活を送るための留学援助金(最高50万円)がある。
「グローバル化の礎は、前身である東洋語学専門学校以来受け継がれてきた“世界志向”の精神にあります。教養・専門教育の側面から異文化を理解する真の国際人を育成するため、国際教育を進めています」
活発な地域貢献活動
地域貢献活動も活発だ。熊本市とともに、「肥後創成塾」を開設、熊本市経済を支える人材育成事業を実施している。「この塾は、少人数、異業種の集団であるメリットを生かし、受講生の能力向上や新たなネットワーク形成を目指す対話型の実践セミナーで人気があります」
大学のこれから。「大学がいわゆる『全入時代』に入り、『大学の大衆化』が否応なく進んでいます。大学がごく少数のエリートのためでなく、庶民、大衆のための教育機関へと変化してきたことは望ましいことだと考えています。
日本の将来は、この高等教育機関である大学の普及、拡大にあると言っても過言ではありません。大学の大衆化時代の学生に向き合い、大学生活に適応させるよう努力したい。熊本という地域に根を張り、九州のHUB(ハブ)大学、拠点大学を目指します」
具体的には?「多くの卒業生が県庁、市役所や地元の金融機関などで活躍、地元企業の社長もかなり輩出しています。地域に根差す大学として、今後とも、県や県警、県内の市町村など自治体、そして地元の企業に、これまで以上に学生を送りこんでいきたい。
学生全員に留学体験を
グローバル化では、教育では『日本とは何か』、『日本人とは何か』、『日本文化とは何か』といった自覚を持つよう教えていきたい。短期でもいいから、学生全員を海外に出したい。東南アジアなら可能だと思う。同時に多くの留学生を受け入れ彼らと交流することで国際力を身につけさせたい」。岡本は、「地域に根差し、世界に飛翔する人材の養成」を、言葉を変えながら繰り返して語った。