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平成25年10月 第2539号(10月9日)

 部局の壁を取り払う
   事務組織改革のねらい

 本欄連載の「改革の現場―ミドルのリーダーシップ」で各大学の取り組みを取材しているうちに、部局の壁を取り払う事務局組織改革を行う大学が多く見られた。そのねらいを探ってみた。

 大学事務局を、これまでのピラミッド型から、事務局長、事務局次長以外は全て平課員とするなど、いわゆる「フラット型」に改編する大学が増えている。意思決定の分権化と迅速化、情報共有化といったメリットが指摘されている。
 例えば、ルーテル学院大学では、総務管理、学生支援、経営企画の3センターを法人事務局も兼ねる事務センターが統括する編成とした。また事務室を一つに集約してワンストップサービスを実現し、業務を横断的に担当できるようにした。担当者しか分からない、という縦割りを崩し、諸サービスの多様化に対応させる狙いがあった。神戸学院大学では、2007年に事務組織を部課制からグループ制に再編し、組織をフラット化したことにより、学生・受験生の情報や社会的なニーズを新しい企画に繋げやすくした。東京造形大学では、部局制を廃止し、セクション制に変更、各セクションに権限委譲し、若手にもセクションマネジャーを任せ、身軽に動ける組織とした。金城学院大学では、2002年に課を廃止し、特に学生対応では、同じフロアでワンストップサービスを実現した。職員は各センターに配属されることになるが、部署内の異動は各部の長の責任で行う。
大学におけるこうした動きには二つの意味があろう。
 一つ目には、部局への帰属意識を廃し、建学の精神を起点とした中長期計画(政策)自体への帰属意識を抱かせることである。フラット化により他部局に無関心だった意識を、「全学」という鳥の目を持って中長期計画の達成をしていこうという意識へと変革させることが期待される。さらに、部局長の許可や組織上の発令の必要がないので、部局を超えてのプロジェクトを組みやすくなる。部局のタコつぼ化を廃し、専門を持つ職員同士がコラボレーションすることで、新しい学生サービスを生み出すことも可能となろう。
 二つ目には、エンロールメントマネジメント、学生支援のワンストップサービスの実現である。例えば、東京家政大学では、入試課と就職課を統合し、入学時希望調査や卒業時満足度調査を行いながらその結果を相互に反映させている。前述の東京造形大学でも、入学後の学生生活と就職を同一セクションとすることで、入口から出口まで一体となった学生支援をする体制が出来ている。
 ただし、こうした組織をうまく機能させるためには、二つの点で注意が必要である。
 一つは、繰り返すが、職員に部分最適から全体最適の目を持たせることである。形だけでも確かに一定の効果はあるかもしれないが、重要なのは「学生にとっての価値」という意識を生み出すことである。
二つは、一人一人の仕事の守備範囲が広がることになるため、知識やスキルがないと、立ち行かなくなる可能性がある点である。
 SDにより、ある程度共通する仕事についてはスキルレベルを合わせる必要があるだろう。また、グループリーダーの力量も問われることになる。裁量権が与えられるということは、決断をしなければならないことでもある。
企業ではすでに揺り戻しがあり、ピラミッド型組織に戻しているところもあるという。例えば、トヨタ自動車は平成22年に「係長職」を復活させている。
 フラット型を無批判に礼賛するのではなく、むしろ新体制のデメリット、旧体制のメリットもしっかりと勘案したうえで事務組織の改革は行っていくべきであろう。全職員が建学の精神を起点とした中長期計画、具体的な施策を熟知した上で、学生のための新しい価値を生み出す…それは大学の事情に応じて、様々な組織形態の「いいとこどり」をすることで実現できるのではないだろうか。


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