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平成25年5月 第2524号(5月22日)

大学は往く  新しい学園像を求めて〈73〉
 地域の保健と福祉に貢献
 看護学科と福祉心理学科  実学と少人数教育施す
 新潟青陵大学

 「こころの豊かな看護と福祉」の実践を通して地域社会の保健と福祉に貢献する。新潟青陵大学(諌山 正学長、新潟市中央区水道町)は、福祉・心理に強い看護職と、保健・医療に強い福祉・心理の専門家を育ててきた。新潟青陵大学の設置母体である学校法人新潟青陵学園の淵源は、明治33年に開所した裁縫伝習所。「日進の学理を応用し、勉めて現今の社会に適応すべき実学を教授する」という建学の精神を掲げ、女性の実学教育を施し、新潟県内の女性教育の中心だった。新潟青陵大学は、2000年4月、看護福祉心理学部の1学部2学科で開学。少人数の実践的教育と、医療・保健・福祉分野の国家資格を取得し、スペシャリストとして地域に貢献できるのが特長だ。「専門分野をただ学ぶだけではなく看護、保健医療、福祉、心理の連携の必要性を理解し総合的な実践力を身につけます」と話す学長に大学のこれまでの歩み、これからの改革などについて尋ねた。
(文中敬称略)

品格のある職業人育成 高い就職率を保持

 三好達治作詞、中田喜直作曲による学園歌が、この大学には似合う。学園化の一節に「海こえて流らふ雲に…」、「松籟の琴の音さやか…」。前者は、雲は目に見えるもので天上のもの、海は地上のもので、ひとつの対比を表す。後者は、松の間を渡る風の音が琴の音のようにという意味。
 海鳴りが聞こえてきそうなキャンパス。新潟市の中心部に位置しながら、広大な林と日本海など新潟海浜風致地区に指定された素晴らしい自然に囲まれている。「豊かな感性を磨いていただくには絶好の立地条件にある」という大学案内の惹句に嘘はない。
 新潟青陵学園の設立には、明治の女流歌人で、明治天皇の内親王の皇女教育をも担った教育者、下田歌子が関わっている。下田歌子は、明治31年、帝国婦人協会を設立、同時に実践女学校および女子工芸学校を全国に設置した。
 歌子の影響を受けて、明治33年、新潟市にも裁縫伝習所(のちに女子工芸学校と改称)が設置された。歌子は同年8月には女子工芸学校に来て生徒の編物などを見て回った。新潟県議会で、「女子教育将来の大方針」について講演した。
 女子工芸学校は戦後、新潟青陵学園となり、1965年、新潟青陵女子短期大学を開学。2000年、短期大学の福祉心理学科を4年制に移行。看護師養成の看護学科を創設、看護福祉心理学部(看護学科、福祉心理学科)という1学部2学科の大学が開校。男女共学になった。
 教育理念・目標は、「生命尊厳・人間尊重の理念に基づき、国民の福祉と健康を支え、全人的な視点からこれを保障するという社会の要請にこたえると共に、看護学科と福祉心理学科連携の下に教育・研究を行い、医療福祉面で地域社会に貢献できる人材の養成」
 現在、890人の学生が学ぶ。看護学科は男性1、女性9、福祉心理学科は男性2、女性8。教員は女性6割と全国の大学の中で13位。学生の9割以上が県内出身。学長の諌山が大学を語る。
 「高度な専門的知識と最新技術を身につけていることに加えて、品格ある真の職業人を育成します。看護・福祉・心理を連携して学べるカリキュラムで、看護・福祉・心理の専門職が互いに連携し、人間性に富んだ幅広い看護・福祉サービスを提供する人材を育てています」
 1学部2学科の学び。「教育課程の編成上は、両学科の学生が可能な限り、福祉、看護の共通領域を学べるようにし、他方で専門的職業人の育成のため、個々の国家資格試験対策のためのセミナーなど少人数教育を重視してきました」
 看護学科の教育目標は「ケアの心を備えた人材の育成」。「高い倫理性と豊かな人間性を備えた看護職を養成するのが目標。人々の健康の課題に対応できる専門的知識と技術を身に付け、関連領域と連携・協働して保健医療分野で貢献できる人材を養成しています」
 具体的には?「高度医療の病院や在宅医療に対応・貢献できる看護師や助産師、地域の人々の健康ニーズに対応できる保健師、地域で母子の健康管理を主体的にできる助産師、児童生徒の健康管理を行う養護教諭など多様な看護職を育成しています」
 福祉心理学科は、@ソーシャルワークコースA福祉ケアコースB子ども発達サポートコースC心理カウンセリングコースの4コースがある。「これらを包括的に学び、学外での実習やボランティアなどを通して、地域における生活者としての視点を育んでいます」
 各コースとも時代とともに変遷する多様な社会的ニーズに対応。「取得できる資格を多数用意。コースごとにめざす職業で必要な資格が取得できるよう、知識や技術を身につける授業を設けています。社会福祉士や認定心理士といった資格は、どのコースでもめざせるカリキュラムになっています」
 高い就職率を保持している。昨年度の実績をみると、看護学科は就職率100%を達成、福祉心理学科は、一般企業を志望する学生は苦戦したが、98.4%と前年度比3.8ポイント増だった。
 「看護学科は、看護師として就職するのが全体の70%程度で、残りが保健師・助産師・養護教諭です。福祉心理学科は、福祉職に就くのが全体の60〜70%、残りが一般企業。卒業生の90%以上が新潟県内に就職しています」
 地域貢献では、三条市と看護・福祉・心理の面で結びつきを強めている。「本学から臨床心理士である教員を派遣して、市の保健師と共に保育所や児童クラブへの巡回相談を行うなど、広がりをみせています。他の自治体とも同様の取組みをしたい」
他大と合同キャンパス
 長岡造形大学と新潟薬科大学とともに、新潟日報新社屋の「メディアシップ」に合同キャンパスを設けた。専門領域が異なる大学が、それぞれの強みを生かし、連携することで新しい価値の提供や地域との結びつきを強めるのがねらい。
 「地域の課題の解決に向けたワークショップ、新聞社と連携した子育て講座など子育て支援事業の展開、キャリア関連講座や公開講座などを計画しています。学生が地元テレビと連携して制作するテレビ番組の放送も行っています」
 国際交流も盛んだ。韓国のコットンネ大学(KKOT)とは、お互いの国を訪問し合い見学や交流を行っている。「コットンネ大学の学生は、勉強熱心で、日本語が話せる学生も多い。『自分は努力が足りない』と刺激を受ける学生も多い」
 今年1月には、コットンネ大学とフィリピンにボランティア研修旅行を実施した。「貧困地域のナボタスを訪れ、シャボン玉などの遊びを通してストリートチルドレンとも交流。今後とも、異文化や世界の実情を実感できる機会を提供したい」
 新潟青陵大学は、開学以来、2学科とも毎年入学定員を割ることもなく、90%以上の就職率も維持してきた。「経営が健全なときこそ、イノベーションが必要」と諌山は改革に乗り出した。
2学部への移行を計画
 二つの学科の専門教育が高度化、多様化するのに伴い、3、4年次における専門教養科目の相互乗り入れ履修が困難になるなど1学部2学科の見直しが求められている。そこで、2学部3学科への改組と看護系大学院の設置をめざす。
 「平成27年度を目処に実現したい」と力強く言った。最後は、心が開学時に戻った。「新潟青陵学園が100有余年掲げてきた“実学教育”の建学の精神は脈々と本学に受け継がれています」と述べ、こう締めくくった。
 「本学の規模にして初めて可能となる細やかな教育で、感性と知性が渾然一体となった品性に富む人材を養成していきたい」。新潟青陵大学のバックボーンは、実学と少人数教育である。


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