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平成25年1月 第2510号(1月16日)

改革の現場
 ミドルのリーダーシップ <36>
 国際・情報の地元ニーズに徹底対応
 新潟国際情報大学



 新潟国際情報大学は、新潟県や新潟市、地元の産業界が協力して設置、1994年に開学した。当初から学生1人1台のパソコンを用意、また、2000年からは2年次後期の約半年間、学生全員が留学することができるプログラムを行っている。JABEE認定プログラム、夏休みインターンシップ制度、学業優秀者・課外活動・資格取得における奨学金制度、ラーニングコモンズの設置に1年次からのゼミ等、学生の学習意欲を高める工夫が充実している。これまでの大学経営の経緯を佐々木辰弥事務局長、五傳木功学務課長、浅野一仁入試・広報課長、西脇茂雄キャリア支援課長に聞いた。
 新潟県は高等教育機関が少なかったため、1990年代には大学進学率が都道府県で下から2番目だった。これに危機感を抱いた地元の小澤辰男元衆議院議員や当時県知事の平山征夫学長は、大学増加を公約に掲げる。かくして、いくつかの私立大学とともに新潟国際情報大学が開学した。
 当時、環日本海パートナーシップの重要性が認識され、パソコンが市場に出始めたころ。国際・情報、そして、文理融合の1学部で設置した着眼点も秀逸だった。情報文化学部長には、情報システム学の第一人者である浦 昭二氏を迎えて発足。当時から現在まで、同じ看板を掲げた競合大学は新潟県下にはなかったため、「国際や情報を本格的に学ぶならこの大学だ」という評判が定着してきた。
 目玉教育である海外派遣留学制度について五傳木課長はこう説明する。「情報文化学科の4割近くの学生がロシア、中国、韓国、アメリカに留学しますが、全員が行けるだけの準備は整えています。情報システム学科の学生は夏休みにカナダに5週間留学できます」。
 もともと県外にも出ない学生が、どのように海外志向となるのか。「留学準備と動機づけは1年前から始まります。異文化理解については授業外に教職員が総出でガイダンスを行い、学生を「その気」にさせ、留学の目的をはっきりさせます。特に英語については、ネイティブを含めたインストラクター3名のCommunicative English Programにより、学生を英語漬けにさせます」と浅野課長。小規模大学の特徴にもれず、教員は教育熱心で学生と非常に仲が良い。留学生全員に奨学金が支給され、アルバイトを10カ月やれば留学先の生活費をまかなえる。保護者に経済的負担をさせないためのプランとなっている。「留学した学生は考えも視野も広がります。帰国後は国際交流インストラクターとして、県内の小・中・高校生に国際理解ワークショップを行う活動も行っています。休学してもっと勉強したいと更に留学する学生もいます。留学しなかった学生にもどうやって成長してもらうかということも日々工夫しています」と浅野課長は続ける。こうした取り組みは、現場の教員の発案により、徐々に積み上げてきたものである。海外派遣留学制度も、1人の教員の発案により、まずは中国からスタートし現在の制度に拡充した。
 大学経営についても、理事長、学長、事務局長が密に連絡を取り合って経営方針・予算編成を決めて素案を作るので、トップの意思決定は非常に速い。教学は七つある委員会に、事務局では課長会議にすぐさま下ろされて具体的な話が展開される。一方で、現場からの意見を吸い上げる仕組みとして「キリットチーム」が組織されている。これは平山学長が立ち上げた組織で、若い教職員が全学の課題について学生や各部署に意見を聞いて、解決策をまとめるチームである。例えば、食堂などの改善、生協の導入の是非などがこれまでに検討された。更に学内に設置された「キリット目安箱」には学生からの意見が出される。また、教員と職員は開学当初より垣根なく議論する。
 今年は入学志願者が激減したが、学長は緊急に意見書を教職員に向けて投げかけ機敏に対応し、「非常事態」であることを宣言した。そして、「単なる広報活動・学生募集ではなく、根本的に建学の精神、国際、情報の定義、教育の質、教育理念、教育研究活動、学生支援活動が社会とマッチしていないのではないか」と全学に大学教育の本質や魅力は何かの原点に立って考えるように促した。「学長の想いを伝えて、意見を言い合う。議論はするけど、決定したことはきちんと実行して頂く。学長は教育改革が1年で目に見えて変わっていないと駄目だと言っています」と佐々木事務局長は言う。
 現場の意見に耳を傾けつつ、それを経営方針に反映させる。トップダウンとボトムアップのバランスのとれたリーダーシップが大学経営の要諦の一つであることを、同大学は示している。

堅実な教学で安定的評価、問題にも正面から立ち向かう
日本福祉大学常任理事/桜美林大学教授 篠田道夫

 新潟国際情報大学は来年創立20周年を迎える。情報文化学部単科、国際化、情報化の中で地域に役立つ即戦力の人材を育てる大学として地元では評価が高く、一度も定員割れの経験がない。設置経費は新潟県と新潟市で六五億円、周辺自治体、経済界、個人の寄付合計90億円で創設され、現平山征夫学長も元新潟県知事だ。地元評価が高いのはこうした創設時からの支援も大きいが、少人数の実践型教育、語学教育や留学、情報教育にも定評がある。
 特に、2年後期のカリキュラムに組み込まれた派遣留学制度は学生を大きく成長させる。露中韓米へ5か月間留学し、留学先で単位が取れ4年間で卒業出来るプログラムだ。語学力だけでなく親元を離れ異文化の中での自立した生活で学生は見違えるようになって帰ってくる。留学生全員に奨学金、アメリカ30万円、その他の国20万円が支給される。英語教育にも力を入れており、外国籍の専任教員、インストラクター、留学支援ネイティブの教員を多数配置、留学を奨励する語学教育重視体制として評価機関からも評価されている。
 また、20年前から新潟地域で先進的なコンピュータ教育に取り組む。現在でも県内において唯一、大学で情報教育を行っている。パソコン1人1台、学内のどこからでもアクセス可能な体制を早くから構築、優れた情報設備とネットワーク環境、教員と8人の情報センター職員で厚いサポート体制を敷いている。情報システムが実際に企業でどう使われているか、銀行や商工会議所などでの1週間の学外実習(情報技術の育成教育)は、地元企業の評判も良い。
 学業優秀者(20人程度)、課外活動優秀者には表彰と30万円、10万円の奨学金、資格取得奨励の奨学金(30人程度)には上級5万円、その他2万円を支給する。留学奨学金も含め学生支援に経費を十分確保し、学生活性化に効果を上げていると評価される。JABEEの認定プログラムにより技術士補の資格を毎年20人以上の学生が取得する。地元企業と密着したキャリア形成プログラムにより、就職実績もここ6年間、80%後半から90%前半を保持している。退学率も平均以下でキメ細かい教育の成果と言える。
 現在、定員1000人に対し、1.2倍を超える在学者がいるが、今年の志願者は入試制度等の大幅な変更がないにもかかわらず25%程度減少した。直ちに平山学長は「志願者急減を受けて皆様へのお願い」(2012年2月13日)を教職員各位宛に発表、「前期一般入試において志願者が急減、平成6年開学以来順調に志願者確保してきたが今回は3割近くも下回るかつてない大幅減で非常事態と認識、悪条件はいろいろあるがそれでは説明できず、原因分析の上で的確な対策をとること、学部・学科の見直し、20周年記念事業、大学改革の取り組みを急ぐこと、そして開学以来初の緊急事態に一致団結してこの難局を乗り越える」ことを強く訴えた。
 特に情報システム学科の減少幅が大きい。根本的には大学の教育理念、教育研究活動、学生支援活動が高校生や社会にマッチしているか、この徹底的な検証と改善が求められるとしている。大学教育の本質、魅力とは何かという原点に立ち返って志願者確保の施策を検討し、教育の質、学生指導レベルの向上を提起する。小手先の対策に終わらせない優れた方針だ。
 学部・学科の見直しも2012年中には方向性を決めるべく素早く手を打つ。すでに昨年来、大学の将来計画は極めて重要として「新潟国際情報大学の当面の課題と中期戦略構想」策定方針を教授会に報告、検討組織を立ち上げ、具体化に着手していた。学部・学科等見直し検討委員会は、学科を学部昇格させる方向で2チームに分け、教育分野からコース設定、定員規模、カリキュラム等全面的な改革内容の検討に入っている。幸い財政は極めて健全だ。2学部体制で当面定員100名増を目指している。
 国際、情報の地域ニーズに徹底して応え、着実な教学充実によって地域の安定した評価を勝ち得てきたことが、厳しい状況に直面しても本質改革の道を見失わず、改革の王道を歩む基盤を形作っている。



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