平成23年6月 第2444号(6月1日)
■松本大の被災地支援
特定場所で長期的に活動
東日本大震災が3月11日、東北地方で起きた。TVの映像等を通して、誰もが「想像以上がなぜ起こるのか」「自分に何が出来るのか」と問いかけた。
松本大学では、教職員と学生との有志が集まって支援プロジェクトを立ち上げた。最初の緊急会議に集まった人数は14名で、そこでまず確認したことは二つであった。一つは支援場所を特定することであり、もう一つは長期的に活動することである。4月14日からの先遣隊の活動以来、教育機関であることや地域立大学を標榜している強みを活かし、宮城県石巻市の大街道小学校とその校区での支援活動を展開している。
現在も大街道小学校の体育館が避難所になっていて、一時は200名を超える被災者が利用していたが、今では150名程になっている。大街道小学校区は、ほとんどの家が津波に襲われ、建物の外観は残っていても、中は家具類と外からの浮遊物とで散乱し、ヘドロが堆積している。床は崩れ落ち、床下にいまだ泥水が残っている家もある。水を吸った畳は重く、運び出すのに難儀する。道路に積まれ瓦礫化した家財道具は、一旦移動されつつも下水は詰まったままで、未だ手つかずの場所はあちこちにある。
松本大学では、これまで10回にわたって活動部隊を派遣してきた。特に8〜10回は、「1day弾丸ツアー」と命名した。松本を夜に出発し、大街道小学校区まで8時間かけ早朝到着、その後昼間支援活動を行ない、その日の夕方に出発して夜中に松本に帰ってくる、まさしく弾丸で総勢85名が参加した。体を酷使しての参加だが、授業を休まず活動できることから学生や教職員のモチベーションは高い。
現在の支援活動は、大街道小学校では、児童の心のケアを目的としたカウンセリングを実施している。小学校より部屋を提供してもらい、そこで臨床心理士や社会福祉士、産業カウンセラーが対応している。今後定期化していきたい計画である。また、避難所で暮らす子供を対象に松本大学の教員と学生が学習指導を行なっている。避難所生活では消灯時間が決まっていることから充分な自己学習ができない状況にあったため、被災者からの要望で実現した。小学校の一教室を借りて、九九の暗記から高校生の受験の準備に至る内容に対応している。どうしても途切れ途切れの学習指導にならざるをえないことが気がかりである。
一方、校区周辺で上がってくるボランティアニーズに丁寧に対応し、泥出しを行なったり家財道具を出したりもしている。ほんの一部ではあるが、行政などが組織化しているボランティアセンターの機能をこの校区では直接に松本大学が果たしており、「今度はいつ来る?」と避難所の方から直接依頼されるようになってきている。一箇所に絞ってきた取組みが、1ヶ月が過ぎた頃からようやく信頼を得て、責任感を伴った確実性のある支援活動が求められていると感じている。
「この場所で、ながく」のスタンスははっきりしている。できれば長期休暇に小学生を松本に招き、笑顔の回復に大学挙げて取り組みたい。心の通った、被災者の自立のための支援活動でありたいと願い、また学生をはじめとした大学の自立のための学びの活動でもありたいと期待している。
文:プロジェクト代表 尻無浜博幸総合経営学部観光ホスピタリティ学科・准教授