平成23年2月 第2433号(2月23日)
■大学は往く
新しい学園像を求めて〈12〉
阪南大学
企業・地域と緊密連携
独自のキャリア教育
独自のキャリア教育で存在感を示す新しい大学。阪南大学(辰巳浅嗣学長、大阪府松原市)は、時代のニーズに即した大学をめざす。昨年、国際コミュニケーション学部国際観光学科を国際観光学部として独立させ、流通学部にブランド・マーケティング、スポーツマネジメントコース 、ビジネスマネジメントコース を創設。正課カリキュラムとして、「キャリア科目群」 を設置してキャリア支援を一層強化。企業・地域と緊密に連携することで就業力をアップさせる。教育・研究面では、ユニークな教授陣による地域と連携した ゼミが際立つ。スケートやトランポリンなどスポーツの躍進が大学を元気付ける。目標は「学生成長率ナンバーワンの大学」である。独自のキャリア教育の中身と成果、大学のこれからのことなどを学長に聞いた。
(文中敬称略)
学生成長率NO1めざす
スポーツも躍進 ユニークな教授とゼミ
新しい大学の息吹がみられた。校章はHANNANの頭文字「H」をとり、「リバティ・ウイング」と名づけている。大きく手を広げ希望に満ちた人をイメージ。 スクールカラーはグリーン、校章やWebページなどに使用する。
建学の精神にも、新鮮さが反映する。「すすんで世界に雄飛していくに足る有能有為な人材、真の国際商業人の育成 」
阪南大学は1965年、商学部商学科のみの大学として開学した。72年、経済学部経済学科、86年、商学部に経営情報学科を設置。96年、商学部を流通学部と経営情報学部に改組 。97年、国際コミュニケーション学部文化コミュニケーション学科と国際観光学科を設置。04年国際コミュニケーション学科に名称変更、 10年、国際観光学部を新設した。
本キャンパスと 南キャンパスは指呼の間にある。現在、流通学部、経済学部 、経営情報学部、国際コミュニケーション学部、国際観光学部の5学部に約5000人の学生が学ぶ。
学長の辰巳が大学を語る。「本学の特長は、各学部とも『教職員と学生の距離が近い』ということ。5000人規模の大学としてメリットが発揮されている結果だと思います。『face toface』の教育を通じて、社会への適応能力と自立する力を備えた人材を育てていきたい」
辰巳は続けた。「うちの大学にはマスコミによく登場する先生が多い。ゼミは多彩で、こうしたユニークさも特長です」。ゼミを紹介することで大学を俯瞰した。
国際観光学部教授の松村嘉久のゼミは、09年に大阪の観光名所・通天閣に近い新今宮に観光案内所を開室。低予算の旅行者、とりわけ外国人旅行者に人気だ。この事業は経産省「社会人基礎力育成グランプリ2010」で準大賞を獲得。
経済学部教授の石井雄二のゼミでは、毎年、海外研修旅行(フィールドワーク)がある。09、10年度、酷暑のタイで、「マングローブ」の植林活動を実施した。
国際観光学部教授の森山 正は教員になる前、ホテルやテーマパークで仕事に従事。都市型ホテルやテーマパークをフィールドにマーケティングを研究。ゼミの3回生は昨年8月の6日間、韓国で研究合宿を行った。
流通学部教授の平山弘のゼミはコース開設 記念事業として「阪南コレクション」という大イベントを実施。元パリコレのモデル、アンミカさんを引っ張り出し、300人の来場者を集めた。「かけがえのない体験と達成感が学生を成長させた」(平山)
国際コミュニケーション学部教授でテレビ界出身 の曽根英二は評判の著書「限界集落 吾(わ)の村なれば」(日経新聞)の著者。ゼミの学生はカメラを持って街角に取材に出る。現場で学びながらプロへの挑戦を試みている。
経営情報学部教授の花川典子の研究室が開発した「コピペ検索システム」。Web情報をコピーして張り付ける「コピー&ペースト」(略称コピペ)を多用してリポートを作成する学生が急増。簡単にコピペを見つけ出すソフト。花川のニンテンドーDSを使った質の高い講義も人気だ。
関西1のサッカー部
流通学部教授の須佐徹太郎の担当科目はスポーツ科学論など。OB30人がJリーグ入りし関西における大学 No.1のサッカー部監督。地域の小学生らに総合授業「夢☆キラリ〜未来への希望〜」でサッカーを教えたりもしている。
スポーツはサッカーだけではない。トランポリンの廣田 遥は現在、同大職員。04年のアテネ五輪で7位入賞、次期五輪をめざす。スピードスケート部では、九八年長野五輪で西谷岳文がショートトラックで金メダルを獲得した。
辰巳が話す。「トランポリンもスピードスケートも、強い選手が入学してきてからクラブ活動が活発になりました。両部とも世界でも勝てるような選手をめざしている」
さて、独自のキャリア教育。2010年度から正課カリキュラムとして、全学共通科目(一般教養)、学部・学科専門科目と並んでキャリア科目群を設置し、キャリア支援、資格取得支援、就職支援の強化に乗り出した。
「阪南コネクション」が文科省の平成21年度「大学教育・学生支援推進事業」に選定された。正式名は「阪南コネクションの構築によるキャリア教育及び就職支援の強化」。
「大学、産業界、地域社会とのネットワークを構築し、『阪南コネクション総合講座』などキャリア教育科目の拡充と学生の就職支援に取り組みました。就職未決定者への迅速な対応、就職情報の提供、土日や休業期間中の相談体制の確立などキャリアセンターを強化、就業力アップにつながりました」(辰巳)
インターンシップもユニークだ。実習先によってクラス編成。国内は業種別に一般、情報、観光と3つに分けている。語学別に3つに分けた海外でのインターンシップも阪南大らしさがある。
「英語圏1では、オーストラリアを中心とした英語圏で、英語圏2では、IT関連企業の集積地であるインド・バンガロールで、コリア語圏では、政府投資機関である韓国観光公社および政府財団等で、実習します」
エアラインスクールも
キャビンアテンダントやグランドスタッフ志望の女子学生向けに「阪南大学エアラインスクール」も評判だ。就職率のよさが人気の源泉。
「1、2年生対象の入門講座から3年生対象の基礎力養成、実力養成コースが設定され 、講師陣は客室乗務員OG・OB等、個人で他の専門学校へ通うよりも低額料金で受講できるのも魅力」
辰巳は、これからを語った。「入学時と卒業時を比べ、どれだけ成長したかを数値であらわしたい。学業はもとより、クラブ活動やボランティア、英語力、就職などを尺度にし、この学生成長力がナンバーワンの大学をめざしたい」
辰巳の話す言葉にも、新しい大学の息吹が感じられた。同時に、大学、そして学生に対する期待と夢があふれていた。