平成23年1月 第2429号(1月26日)
■大学は往く
新しい学園像を求めて〈9〉
名古屋商科大学
国際的認証二つ取得 大学運営に生かす 教育の質保証を実現
国際的な大学の認証評価に強いこだわりをみせる。名古屋商科大学(栗本 宏学長、愛知県日進市)は、2つの海外の大学評価機関の認証を取得している。「国際化を迎えた時代、大学運営や教育の質保証を保つにはグローバルスタンダードが必須。同時に世界の大学の動きがわかるメリットもある」という。これをバックボーンに教育の質保証のほか、社会人のための大学院教育や国際人を育てるための留学制度の充実などに力を入れる。平成23年4月に入学する新入生全員に「MacBook Air」を無償譲渡、希望者には「iPad」を特別価格で提供するなど情報化教育にも熱心だ。こうした改革ときめ細かな進路支援により、高い就職率(96.8%、09年3月卒業生)を実現するなど「就職に強い大学」といわれる。名商大のこれまでの改革と成果、そして、これからを学長に聞いた。
(文中敬称略)
就職に強い大学 情報化教育に傾注
名古屋商科大学は、1935年に創立者の栗本祐一が創立した名古屋鉄道学校が前身。1950年、光陵短期大学を設置。53年、名古屋商科大学(商学部商学科)を開学。68年から日進キャンパスに移転を開始した。
90年代からの動きがめざましい。85年に学生への在宅学習用パソコンの無償譲渡を開始、90年以降は新入生全員に無償譲渡。92年、在宅学習用パソコンにアップルコンピュータを正式採用。98年、外国語学部を開設。01年、商学部を総合経営学部と経営情報学部に改組した。
2010年には「原点回帰」をコンセプトに学部再編を行い、商学部を復活させ、コミュニケーション学部を新設。現在、経済学部、経営学部、商学部、コミュニケーション学部の4学部7学科に3800人の学生が学ぶ。
学長の栗本が大学を語る。「日本では大学を選ぶ基準として、偏差値を尊重する傾向にあるが、大切なのは教育の質。本学は、偏差値至上主義ではなく、グローバルスタンダードの時代にふさわしい大学、つまり学士力を保証する大学をめざしています」
国際的な認証評価は、こうだ。2006年、国際的な大学評価機関AACSB(米国)から慶應義塾大学に次いで国内2番目の正式認証を受ける。08年には、別の国際的な大学評価機関AMBA(英国)から国内初の正式認証を受ける。
いうまでもないが、認証評価は、大学の教育・研究、運営、財政面などを客観的に外部機関が評価し、助言や勧告を行い、大学の改善を促進するというねらいがある。
なぜ、国際的な認証評価にこだわるのか?「2つの国際的な評価機関が定める教育の仕組みをつくることで、教育の質の保証が担保できる。それは、学習力を高めることになる。日頃の学習力を高めることは、結果的に就業力につながる」
具体的には?「教育研究面では、厳格な成績評価、教員の質の充実、初年次教育でのビジョン設計、教育効果の把握、学生生活支援面では、個別指導による就職指導、資格取得支援や奨学金制度の拡充などが評価の対象になる。これらを実現することで、教育力、就業力を高めます」
教員、学生に対する評価も厳しい。教員は一定の業績ポイントをクリアする必要がある。学生の成績評価も極めて厳格。教室で学生1人ひとりが座る席は決まっており、代返などごまかしはきかない。また、授業を4回以上欠席すると単位取得ができなくなる。
もっとも、学生には、セーフティネットを用意する。「単位取得が思わしくない学生には、レポートの提出や夏や春の集中講義、インターンシップや国際ボランティアなど課外活動の評価、資格取得の単位化などでフォローしています」
大学院教育は進化している。2000年、社会人向けの全国で初の1年制大学院・情報技術コース開設。「Weekend MBA」は、週末を利用してMBAを取得できることから人気をよんだ。現在、東阪名の3都市の中心部にキャンパスを開設、348人が学ぶ。
一方、学部3年プラス大学院2年の5年間でMBA取得をめざす大学院進学コースにも力を入れる。「大学院教育を修了して高等教育は完結すると考えている。学部を3年で修了した学生には大学院1年分の授業料を支給するなど支援している」
就職に強い大学。経済誌の「面倒見のいい大学」で、初年次教育から就職指導までの教育内容と実行する体制が評価された。「学生を社会に送り出す、ということから就職指導は、大学教育の一環と考えている」という。
1年次は、ビジョンプラニングセミナーで大学生活の意義と意欲的な学びを身に付け、将来の職業観につなげる。2年次からは上級生が下級生の学生生活を支援するサポーター制など本格的なキャリア支援プログラムが始まる。
進路支援センターは学生の希望する職種、企業、勤務地から内定状況、入社意思までを「就職支援基本情報」として把握。「この情報を基に、個別指導をしています。厳しい就職状況が続くが、幅広い業界への就職を実現するなど高い就職満足度はキープしています」
情報化教育と国際化教育も教育の柱。情報化教育では90年から全学生にパソコンを無償譲渡する制度をスタートさせた。今年度は数十台のiPadを導入、情報センター(図書館)での学習支援や全学的な学生指導などで活用している。
「本学は学生用掲示板の完全電子化にいち早く取り組み、全ての学生向け情報をネットワーク上のキャンパス掲示板から発信。また、講義シラバスの公開、電子教材の活用、担当教員とのコミュニケーションなどもWeb―Learningシステムを使ってインターネット上で行っています」
国際化教育では、ギャップイヤー留学(4ヵ月間派遣、奨学金約35万円)、フロンティアスピリット留学(同、奨学金約85万円)、海外提携校留学(34ヵ国60校)、学生国際ボランティアなどの留学制度を整備。「世界を舞台に、国際感覚を身につける」
学生国際ボランティアは、夏休みの2〜3週間、世界中から集まった仲間と環境保護、子どもキャンプの手伝い、教会の修復などのボランティア活動を世界各地で行う。この国際ボランティアに参加する名商大の学生数92人は日本の大学ではトップ(09年度実績)。
名商大のこれからについて、栗本に聞いた。「学生に求められるのは学士の資格ではなく、これからの時代にふさわしい能力。様々な情報を分析し、自らの発想を加え、タイムリーに情報発信する。これこそ自らの存在を際立たせる近道。こうした時代をリードする高い能力と情熱をもって自らの道を切り拓く学生を育てていきたい。そのためには教育の質の保証がキーポイントになる」
栗本は、教育の質保証にも強いこだわりをみせた。