平成23年1月 第2429号(1月26日)
■平成23年 年頭所感
大きな変革、転機の年に
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
私は、昨年の私大協会秋季総会において、副会長の大役を仰せつかりました。もとより浅学菲才の身でありますが、誠心誠意努力を傾注する決意でありますので、皆様にはご指導、ご鞭撻の程、何とぞよろしくお願い申し上げます。
さて、振り返りますと政治、経済、外交、安全保障など、わが国は多くの困難を抱えての越年となりました。国の将来を支える人材を育成する教育についても同様です。
高等教育について多くの議論がなされましたが、大学の地域間格差など社会構造による不可抗力的要因もあり、解決すべき多くの問題が持ち越されています。すなわち、認証評価が一巡し、次の段階としての自己点検・評価の実質化、21世紀型市民を育成するための社会的・職業的自立に向けた人間形成教育の具体化、また、公的存在としての責務である教育ならびに経営・財務情報の公表、教員養成の制度改革など、これら大学の質の評価にとって不可欠な課題は、多くの私立大学にとって言うは易く行うは困難でありますが、それぞれが時を同じくしてスタートすることになり、今年は大学にとって大きな変革、転機を迎える年となるでしょう。
これらの実施について考えますと、その目ざす目標の背景に、大学、特に各私立大学が誇る建学の精神、そこから派生する多様で特色ある教育理念が反映されてこそ、私立大学の使命、存在が社会的に一層価値あるものと評価されるのではないでしょうか。そして、その内容は他でもない、各私立大学の裁量に委ねられているはずです。
私たちは、これまで私大経営の苦労や困難を語る時に、往々にして国公立大とりわけ国立大学の在り方と、私立大学独自の問題を混同して考える傾向にあったと思います。
少子化に向かう折の国立大学(特に各地域ごとの)の数や規模、ファンディングの在り方、多大な運営費交付金の対価として負うべき社会的義務や社会に対する貢献などは、国立である以上、長期展望のもとに今後とも社会全体で根本的な議論が重ねられなければなりません。私立大学も社会の一員として、国立大学の在り方について大いに発言し要望を続けていく必要があると思います。
しかし、これとは別個に、私立大学が独自に主張できる自由で創造的な教育理念の展開と拡大、独自性の主張と同時に負うべき社会的責務、また、社会構造にも要因を持つ私学経営の困難などについて、屋上屋を重ねることなく一歩一歩解決する身近かで具体的な方策を、私立大学独自で工夫し共有して社会へ主張していく努力が急務ではないでしょうか。
このたび日本私立大学団体連合会に「私立大学21世紀委員会」が設置されたことを喜び、その成果に期待するところ大であります。