平成23年1月 第2428号(1月19日)
■平成23年 年頭所感
新春を迎えて
新春を寿ぎ、私大協会加盟大学の益々のご清栄を祈念申し上げます。
さて、日本は現時点でも十数年来のデフレーションが続いています。
少子高齢化と人口減少は、先進国におけるグローバルな現象でもありますが、特に日本のデフレ不況の国内的原因は、世界一の長寿高齢化と少子化による総人口減少によるものとされています。
昨年末の社会状況に対するTV番組のQ&Aで「少子化による18歳人口減少があるにもかかわらず、新卒大学生が就職難になっている理由を問う」との素朴な質問がありました。これに対する回答の内容はともかく、就職・雇用にかかわる企業の常用雇用者数300人未満の中小企業は、全体数の99.2%(総務省・統計調査資料)を占めるということなので、いわゆる大企業は0.8%にすぎないことになります。
新規雇用者数についてみれば、大企業の全国展開の支社等全体の雇用者数に比して、地域密着型の中小企業の年度新規雇用者数は、おそらく微々たるものでしょう。また、少子高齢化と人口減少は、非正規雇用者を含む生産年齢人口の減少を生じますが、前政権の2006年4月から「改正高齢者雇用安定法」が施行され、事業所は従業員の65歳までの雇用確保の措置を講ずることが義務化されましたが、現時点で行われている段階的なこの定年対応は、2013年4月には65歳までの完全雇用をすべての事業所が実施すべき必要事項とされています。
堺屋太一氏が提唱された「団塊の世代」の最終グループが65歳を超えて定年を迎える2015年以降の生産年齢人口数は、定年後の常用雇用者と非常用雇用者を含めてどのようになるのでしょうか。デフレ状況が続く情勢下では、多くの大企業が人件費の廉価な外国に生産拠点を移すことで逆に国内雇用は疎外され、企業ノウハウの流失と国内中小企業への下請け事業も減少することから、この部分のさらなる国内事業の生産性と雇用の減少を招いています。
少子高齢化と総人口減少がデフレの基本的な国内的原因としても、現在、スパイラル状態にある状況のデフレーション連鎖を断ち切るには、社会全体が連鎖の問題点のすべてに対応して、解決しなければなりません。
私立大学も、デフレ・スパイラルのなかにいます。新卒大学生の多くが大学で学んだ専門性にかかわりのない非常用雇用者として、不本意な就業状況にあることを見聞した現時点において、「中央教育審議会(キャリア教育・職業教育特別部会)」で審議されている「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」の報告に即して対応さえすれば、ことが足りるものではないようです。
私立大学は、各学部の専門性に基づく職業上の就業キャリアとして、あるいは、学部の職業教育と関連のない立場の就業キャリアだとしても、どちらの場合であっても順応できる社会対応のキャリア教育を大学独自で教授する方策を実施することが、現時点の大学の役割ではないかという僭越な意見を申し述べて、新年のご挨拶といたします。