平成22年11月 第2422号(11月17日)
■新刊紹介
「大学破綻」
諸星 裕 著
本を読み進めるうち、この著者の主張は、同じ問題を論じるA氏の主張とは違うな、A氏のほうが正鵠を射ている、と思うことがままある。
著者は、桜美林大学大学院教授、全国の大学経営者の求めに応じてキャンパス改革の方向性をコンサルティングしているという。
ショッキングなタイトル、内容も〈今から10年後には100校近い大学が消滅しているでしょう〉と刺激的。が、読んでいて、驚きやリアル感が乏しい。なぜか。
著者は、日本の大学には@ミッションを持っていないAマネジメント力の欠如B学部の壁の弊害C教員の職業意識の欠如…といった「致命的欠陥」があるという。
そこで、欠陥を除去せよ、と制度や意識の改革が必要だと様ざまな処方箋を示す。〈新設校こそミッションが命〉、〈学部の壁を取っ払え〉、〈教員の意識改革を〉を訴える。ミッションのオンパレードには閉口したが、処方箋は正論だ。
さて、ここでのA氏とは、前々号で取り上げた神戸女学院大教授の内田 樹。彼は同じ問題で、こう述べている。
「日本に1200もの大学があるのは地域にとって文化的にも環境的にも、経済波及効果からみても貴重な資源。大学の実数を減らさず定員を一律削減すべきだ」
いま大学は乱世にある。平時だったら著者の意見も通るが、乱世では内田のようなドラスティックなやり方が向いているのではないのか。
(狸)
「大学破綻」 諸星 裕 著
角川oneテーマ21
Tel.03―3238―8555
定価 724円(税別)
角川oneテーマ21
Tel.03―3238―8555
定価 724円(税別)