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平成22年9月 第2415号(9月8日)

ICT活用FDの実践
  成果を大学間連携で普及する 〈上〉 


大阪成蹊大学 准教授 福永栄一 

 2007年に「授業における出欠管理の教育効果(携帯電話での出欠確認2年間の効果と今後)」という表題で大阪成蹊大学現代経営情報学部(当時は青森大学)の福永栄一准教授に寄稿して頂いた。現在は関西地区FD連絡協議会FDメディア研究サブグループを中心にi―MAS(携帯電話での授業評価アンケートおよび出欠確認システム、internet mobile attendance system)、FD推進につながるICTについて研究している。このたびは、同大学でのi―MASを活用したFD活動と、同グループを通じてi―MASの普及と関西地区の大学間連携によるFDの現状を報告してもらった。

【大阪成蹊大学のFD】
 京都大学高等教育研究開発推進センターが実施した、FDに関する実態とニーズ調査によると「貴学では、成果のいかんにかかわらず、FDの活動がどのくらい活発だと思いますか」の質問に対する回答の平均は2・50であり、あまり活発でない(2)、やや活発(3)の中間になっている。「FDの活動によってどのくらい教育が改善したと感じていますか」に対する回答の平均は2・63であり、あまり改善していない(2)、やや改善した(3)のほぼ中間になっている。FDは実施されているが、活発とはいえず、改善を実感できていないということであろう。
本学でもこれまで、教員同士による授業参観やFD講演会の実施など一通りのFD活動はこなしてきたが、その効果が実感できなかった。
 FDが推進されるきっかけとなったのは、2008年度から取り組んだi―MASによる学生の携帯電話から登録させる出欠確認であった。簡単に短時間で正確に出欠確認ができたため、出席率が上がり、遅刻が激減。さらに後期の授業評価アンケートもi―MASで行い、集計結果を翌日に確認できるようにした。これらの成果が教員とFD委員会を勇気付け、これ以降、組織的なFDが急速に進んでいる。
【期中の授業評価】
 授業評価アンケートの集計には数か月間かかるため、実施が期末に限られる。そのため、評価結果を受け取ったときには授業は終了しており、改善は翌年に持ち越され、学生に直接授業改善の内容を伝えることができない。どれだけ力を入れてアンケートに取り組んでも、忘れたころに結果が返ってくるのでは、改善に限界がある。これが授業評価アンケートの最大の課題である。
この課題を解決するために、2009年度前期からi―MASで期中(8回目の授業)の授業評価アンケートに取組んでいる。アンケートは1日で集計できるので、翌週(9回目)の授業で学生に評価結果と授業改善内容を説明している。さらに、授業改善結果を確認するために、期末にも簡易の授業評価アンケートを実施している。教員の授業に対する努力の効果が、授業評価アンケートで直ぐに分かれば、改善に取り組むことができるからである。
 授業に熱心な教員のアンケートの方が、集計結果が低い場合がある。それを翌日に見せられると教員はガッカリする。それでも、その結果と改善策を学生に提示する。このように取り組めば、学生も真剣にアンケートに回答するようになる。事実、2009年度前期の授業評価アンケートでは、自由記述が9.5回答に一つしかなかったが、後期では、5.0回答に一つ、2010年度前期では、3.9回答に一つになっている。また、一般的にICTで授業評価アンケートを行えば、集計は早くなるが回答率が下がるといわれている。しかし、本学の場合は出席数に対する回答率が70%程度(一部のアンケートを除く)を維持している。
【公開授業】
 これまでの公開授業は、FD委員がコーディネータになり、公開授業を行う教員と参観者を募集して実施していた。コーディネータには、事前準備や参観後の意見交換会、参観者のコメント集約など大きな負担を強いられていた。それでも一部の教員が公開し、一部の教員が参観する程度であった。専任教員全員が授業公開、授業参観に参加しなければ、公開授業本来の効果は望めない。
そこで2010年度前期には、授業公開期間を2週間設定し、その間専任教員は必ず一授業を公開すること、最低2回は他の授業を参観することにした。参観者は参観授業で参考となった点や改善案などをi―MASで登録すること、授業実施教員は参観者からのコメントをi―MASで確認して授業改善の参考にすること、コメントに対する回答や説明もi―MASで登録することにした。コーディネータの作業負担はi―MASの利用によりほとんどゼロになり、これまでの10倍の公開・参観率を簡単に実現できたのである。
【アンケートの公開】
 なかなか進まなかった授業評価アンケートの公開を、2010年度前期分からi―MASで学内公開することにした。公開に当たって最も検討したことが自由記述の扱いである。攻撃的な記述や授業改善に関係が無い記述などは公開すべきではないが、それを誰がどうやって判断し、どうやって非公開にするか。一般的にはこの作業に多くの時間が必要である。本学ではi―MASでこれを解決した。アンケートの自由記述を授業担当教員がパソコンで確認し、公開すべきではないと判断した記述を仮非公開にする。これら仮非公開とした記述のみをFD委員会の場で一覧表示して確認し、FD委員会も公開すべきではないと判断したら正式に非公開にする。この方法だと、きめ細かく公開・非公開のルールを決める必要が無い。また、非公開にする作業が簡単で時間がかからない。自由記述の公開、非公開をi―MASで解決できることを確認して、授業評価アンケートの公開を決定した。
【ICTでのFD支援】
 教員が日々の講義を継続的に改善し、その過程で発生する疑問や発見を教員同士および教員と学生が共有できること、相互に意見交換できることが組織全体のFDを推進する。しかし共有や相互意見交換は簡単ではないため、ICTにその機能を補完させる。ところが、一般的にはICTは操作が難しく、機能があっても使いこなせないことが多い。教育で使うICTの条件は教員、職員、学生が簡単に使えることである。ICTを使いこなせてこそFDを効率的かつ効果的に推進することができるからである。本学ではそれをi―MASで実現した。そして、i―MASで得られる成果を大学間連携により共有するために、関西地区FD連絡協議会でFDメディア研究サブグループを2008年12月に立ち上げた。
(つづく)

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