平成22年8月 第2412号(8月18日)
■新刊紹介
「なぜ 男女別学は子どもを伸ばすのか」
中井俊已 著
本のタイトルを見て、「あのことが書いてある」と思うことが間々ある。その通りだった。それは、筆者が学んだ埼玉の県立高校が栃木、群馬県とともに全国でも珍しい男女別学のこと。
〈男子と女子は、別々に教育したほうが学力が伸びる〉と、第一章で男女の生まれつきの生物的な差異や性差、第二〜六章は男女別学の利点、効果などを紹介する。
著者は、私立小中学校に23年間勤務。冒頭、〈私は男女共学に反対するのではありません〉との宣誓は一見、フェアだが……。
一章で〈男女は記憶の仕方が違う〉、〈男子と女子の読書の好み〉、〈男女では学習態度も違う〉。脳科学者や心理学者の話やPISA調査などで論証。が、「だから、どうなんだい」の疑問が残る。
冒頭の埼玉県の公立高校の男女別学は、二章で〈男子がいると自分を作ってしまうが、女子だけなら自分をより素直に出せる〉という県立女子高生徒会長の談話を引用。
三章で〈埼玉の県立浦和高校、浦和一女、川越高校、川越女子高など男女別学の進学実績の高さ〉を紹介。が、次のような高校関係者の話を聞くと、やはり疑問が。
「埼玉県では共学の県立大宮高校が進学実績を伸ばしている」、「男女共学に踏み切った福島県では、女子高のトップクラスが旧男子高へ進学、新たな格差が生まれた」
著者は「おわりに」で〈日本はいま共学化の流れがあり、一部の男女別学校は危機にある。それが、この本に取組む動議でした〉とも。これで疑問は氷解。
「なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか」 中井俊已 著
学研新書
п@03―6431―1510
定価 780円+税
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定価 780円+税