平成22年8月 第2411号(8月4日)
■新刊紹介
「丸山眞男 人生の対話」
中野 雄 著
半世紀にわたって師事した著者が、〈一代の碩学、丸山の真の姿や意外な側面を浮き彫りにし、折に触れて聞いた言葉の数々を初めて明らかにしている〉
過日、仙谷官房長官が、丸山の言葉を引用して話題を呼んだ。その言葉「引き下げデモクラシー」も著書に出てくる。
仙谷氏は議員歳費や国家公務員給与など「厚遇」との批判に、「『引き下げデモクラシー』みたいなことには気をつけて議論しよう」と述べた。
四章にある。〈自分も向上しようというふうに考えないで、ひたすら人を引き下げることで自分の満足を得ようとする傾向を「引き下げ平等主義」、「引き下げデモクラシー」と評し、「現代日本でもいろいろな形で残っている〉
丸山の言葉は、全く古びていない。ねじれ国会に甘え、ねじれた政治家たちに聞かせてやりたい話が詰まっている
〈「良識ある政治家は、『反対派は、何故こういう意見を出してくるのだろう』と、相手の立場の根拠を探ろうとする。『他者感覚』なんだな。他者感覚が発達している国ほど、議会政治はうまくいっているんです」〉
〈「政治学廃業」したのは、高度成長を予言しなかったから〉という丸山の告白に、焦点をあてた六章が白眉だ。
著者は、「1960年の丸山眞男と下村治」のタイトルで、かつての上司であるエコノミストの下村治と丸山を対比させ、丸山の挫折を解きほぐす。この明晰な論理こそ、丸山道場の弟子の真髄。
「丸山眞男 人生の対話」 中野 雄 著
文春新書
п@03―3265―1211
定価 850円+税
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定価 850円+税