平成22年7月 第2410号(7月28日)
■新刊紹介
「ハプスブルク三都物語」
河野純一 編
昨年から今年にかけて「ハプスブルク展」が開催されたこともあって、ハプスブルク家をめぐる出版が相次いだ。
ハプスブルク帝国(オーストリア帝国)は、第1次世界大戦で消滅するまで約600年間、欧州を支配。多民族国家でウィーンを中心に絢爛たる文化・学術を誇った。
タイトルの三都はオーストリアのウィーン、チェコのプラハ、ハンガリーのブタペスト。〈中欧の国々の首都であるが、ハプスブルク帝国の重要な都市でもあった〉
ウィーンは、著者が引用した言葉でイメージされる。「時よ止まれ、お前はあまりに美しい」(ゲーテ『ファウスト』)、「多くの都市はアスファルトで舗装されているが、ここは文化で舗装されている」(現地の随筆家)
著者は大学教授としてウィーンに2年間暮らした。〈ハプスブルク家は美しい都を残した〉と教会、宮殿、20世紀の名建築やモーツァルトら音楽家の足跡をたどり、名門王家の歴史と栄華を平易に描く。歴史の勉強、旅の参考になる。
いささか古い出版だが、「わが青春のハプスブルク」(塚本哲也)はジャーナリストの視点が色濃い。〈第2次大戦後、当時のオーストリア大統領は「日本は天皇制を残しておいてよかった。オーストリアにもハプスブルク王朝が残っていれば…」と述べた〉
学者とジャーナリストとのフォーカスの違い。ひとつのテーマにいくつかの本が出版されたとき、著者の「肩書」が参考になるという教訓。
「ハプスブルク三都物語」 河野純一 著
中公新書
п@03―3563―3668
定価 780円+税
中公新書
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定価 780円+税