平成22年7月 第2408号(7月14日)
■新刊紹介
「さらば、立松和平」
福島泰樹 著
歌人であり早大の先輩の著者が莫逆の友である作家の立松和平に手向けた哀惜の歌であり、オマージュ。
一章は、立松が福島の歌百八首を評した遺稿、二章は福島と立松のエッセー、三章は二人の対談、四、五章が福島による立松和平論。対談の、このくだりに涙した。
立松 俺はね、死んだら下谷に行くんだよ。泰樹さんとこの寺に。
福島 そう、立松和平と俺は墓を一緒につくるんだもんな。よし、生きているうちに並べてつくっちゃおう。
圧巻は、「友へ」と題した追悼の20首。酒の歌を2首紹介する。
そうだともみんな分かれてゆくのだよ「剣菱」びしっと直立しよう
君死にしゆえにやいなやこの春は 濁酒にまぎれ闌けてゆくべし
懐かしい人物や飲み屋が出てくる。学生運動のメッカ、早大で暴れた反戦連合の高橋公、彦由常宏、立松と同郷の大先輩の文芸評論家、歌人で作家の村上一郎…。
〈『今も時だ』のモデルとなった、バリケードで山下洋輔トリオによる演奏が行われたのは1969年夏。この場面を演出した男が彦由常宏であり、指揮棒を振るった男が、高橋公である〉
村上は主計大尉として終戦を迎え、戦後は吉本隆明、谷川雁らとともに雑誌『試行』を発行。75年、頸動脈を切り自殺。三島由紀夫の死が影響を与えたといわれた。
〈君が敬愛していた村上一郎〉と福島は跋に書いている。村上を敬愛する者として立松の村上一郎論を読みたかった。
飲み屋の名は「志乃ぶ」。立松の偲ぶ会を終えた5月、〈これから高橋公と「志乃ぶ」会う〉とある。かつて自分も通った早大近くのおでんの旨い小体な店だ。
本は、こう締め括られる。〈「志乃ぶ」で君(立松)が待って居ないことが淋しい〉
(株)ウェイツ
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定価 1800円+税