教育学術オンライン
Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト

平成22年6月 第2404号(6月9日)

新刊紹介
 「就活革命」
  辻 太一朗 著

 いわゆる便乗本というのが氾濫している。これは、そうでもあり、そうでもなさそうな本…。
 まえがきに〈大学や企業の就職担当、学生はもちろん、保護者、子を持つ親、企業戦士らに読んでほしい〉。焦点がぼけないかと危惧した。
 本文の冒頭に、日本経済団体連合会の「採用選考に関する企業の倫理憲章」を掲載している。著者の志の高さを思う。
 就職シーズンになると、就活が話題に。大学3年時から始まる就活に「このままでいいのか」と議論が起きるが、解決のないまま時間だけが過ぎる。
 一、二章は「就活が学生をダメにする」、三章が「就活が大学」、四章が「就活が企業」をそれぞれダメにする、と書く。ダメにする理由については相槌を打つ。
 五章の学生への助言は便乗の臭いを嗅いだ。それこそ、焦点がぼける。六章で「就活を変えよう」と、こう提案する。
 〈学生、企業、大学の三者の関係で、鍵を握っているのは大学。(中略)まず大学が企業からの信頼を取り戻すこと、そして大学がつける成績が採用選考にメリットになると思わせること〉
 こう続く〈そこにメリットを感じれば、企業は動く。動かないようだったら利益を追求する団体としては失格〉
 ちょっと違うな、と思った。大学が改革すれば企業はついてくるだろうか。著者の前職(リクルート)が影響しているのでは?と勘繰った。
 四章の〈企業は莫大なコストを採用にかけている〉、〈人事担当者の不安を掻き立てる、ひとつに入社後3年間で35%という高い離職率〉という指摘には賛同する。これらを放置してきた“企業戦犯論”をとる。

 「就活革命」 辻 太一朗 著
 NHK出版生活人新書
 п@03―3780―3328
 定価 700円

Page Top