平成22年3月 第2395号(3月24日)
■ラーニング・ポートフォリオ活用授業〈下〉
ラーニング・ポートフォリオとは、図表@のように、省察+証拠資料+共同作業=学習の一連の作業をわかりやすく文章化したものである。証拠資料とは、私の授業では「指定図書課題・講義フィードバック」のことで、共同作業とはグループ活動のことである。このグループ活動がメンターリングのはたらきをする。
授業での具体的なラーニング・ポートフォリオの課題を図表Aに紹介する。
以下は、ラーニング・ポートフォリオ課題である。学生には省察的な記述が求められている。
さらに、図表Bのようなルーブリックを作成して、ポートフォリオ課題と一緒に学生に渡す。「ルーブリック」は、学生のみならず、教員の評価指針としても役立つ。また、ラーニング・ポートフォリオの採点後、学生に返却するときに同じ「ルーブリック」にマークをつけて渡すことで、学生はどの点が評価されたかがわかり、今後の学習改善にも繋がる。
次に、能動的学習を促すMIT方式試験について紹介する。私の授業では、最後の一週間前に学生に単元ごとで試験問題(解答も含めて)を作成させて提出させる。それらを参考に最終試験問題を作る。
これは、MIT(マサチューセッツ工科大学)が推奨する方式で学生を授業に能動的に関与させるねらいがある。学生は、試験問題を作成するために授業に集中し、考えながら授業を受けなければならない。学生から提出された試験問題の傾向を見るだけでも、学生がどのようなことに関心を持ち、授業を受けたかがわかる。
学生は、試験問題の作成を通して授業内容をより深めることができる。期末試験は、学習過程を評価する一つの方法であるから、学生が授業で何を学び、何に興味をもったかを学生から提出された試験問題で知ることができ、教員の授業改善にも繋がる効果がある。
学生は、学習過程を省察しながらラーニング・ポートフォリオをまとめることになるが、もし、15回の授業をうまく繋げることができれば、さらに深い学習に結びつけられる。
2009年度からは、学生がポートフォリオを書く前に、たとえば、図表Cのような「コンセプト・マップ」を作成させることで、効果的なラーニング・ポートフォリオの作成に繋げている。これは教員にも、学生が授業全体をどのように理解したかの指標として役立つ。
学生から提出されたラーニング・ポートフォリオの内容を全て紹介できないのが残念であるが、少しだけ事例を紹介する。<実際の「ラーニング・ポートフォリオ」の一部>
たとえば、「学習過程の省察」に対して、「課題図書を読む、仲間と討論する、ほかのグループの意見を聞く、先生からの内容について詳しく説明をもらう、授業が終わった後でその回を振り返る、…という様々な過程を経て学んでいた。それぞれの過程において、とても充実した学びの時間を過ごせていたと思う。だがこの中で最も学んでいたと感じた状態は、やはり討論の場において互いに意見をぶつけ合うことだった」(教育学部学校教育教員養成課程一年女子学生)
あるいは「いつ、学ぶことができたかと言えば、この授業に関する学習を行っている時間全てにおいてである。なぜなら、自ら疑問を持ちながら、文献を調べ、討論をすることがとても楽しいからである。自学自習する力の大切さに気付いたとか、教師になって授業するときに参考になるといったことももちろんあるが、なによりもこの授業では、楽しみながら学習することができ、とても満足している」(教育学部学校教育教員養成課程一年男子学生)というものがあった。
最後に、2009年11月に、ラーニング・ポートフォリオの世界的権威者であるアメリカのジョン・ズビザレタ教授(コロンビア・カレッジ)を教室に招いて日米大学生の比較やラーニング・ポートフォリオについて学生と一緒に語り合ったことは大きな収穫であった。
(備考:ラーニング・ポートフォリオの詳細については、拙著『ラーニング・ポートフォリオ〜学習改善の秘訣』(東信堂、2009年)を参照)
(おわり)