平成22年3月 第2395号(3月24日)
■中教審審議動向
「情報公開」「社会人受入れ」など審議
高等教育における 職業教育の充実方策も
法科大学院の見直しに厳しい提言(予算削減の検討も)
中央教育審議会では、大学分科会が昨年8月に取りまとめた「中長期的な大学教育のあり方」(諮問)の第二次報告以後の各部会の審議、また、キャリア教育・職業教育特別部会の審議等が活発に行われている。大学分科会では主に質保証システム部会の「教育情報の公表の促進」について、大学規模・大学経営部会の「財務・経営に関する情報公開の促進及び社会人学生の受入れの促進」について、そのほか、法科大学院特別委員会の「認証評価の見直し及び組織の見直し促進」についてなどの審議が行われている。また、キャリア教育・職業教育特別部会では「高等教育における職業教育の充実方策」についての審議が行われている。
大学分科会
【質保証システム部会】
同部会では、@大学における質保証システムの在り方について、A教育情報の公表の促進について審議が行われている。
@では、昨年の「中長期的な大学教育のあり方」における認証評価の検討課題をもとに論点を整理し、最低基準の確認(設置基準との関係、設置認可申請との関係、認証評価の実施義務)、大学の自主的・自立的な質保証の支援については検討の途上にあり、機能別分化への対応、国際的な質保証への取組の対応については、今後、更に検討を深めることとしている。
次にAの教育情報の公表の促進については、(1)公的な教育機関として学生、保護者、社会に公表が求められる基本的な組織等に関する教育課程・学生・学習環境等の情報(収容定員、教員数、入学者数、在学者数、卒業者数、学納金の種類と金額、運動施設の状況、利用できる奨学金など)のほか、(2)教育力の向上の観点から公表が求められる情報(教育研究上の目的、修得が期待される知識・技能体系、学修の成果に係る評価や学位授与の方針、教育研究水準向上のための取組みなど)、そのほか、(3)国際的にも見劣りしない国際競争力の向上のための取組みを示すことも求められていると取りまとめている。
なお、法令により実施が義務づけられていない情報の公表等については、多くの大学が取り組んでいるものの、社会に十分にアピールできていない面もあることから、情報の公表方法のより効果的なモデルを示す必要性についても検討している。
【大学規模・大学経営部会】
同部会では「大学における社会人の受入れの促進」についてのこれまでの審議経過を取りまとめた論点整理(案)の審議を進めている。
18歳人口だけでなく社会人や高齢者等の多様な人々がどの程度大学で学ぶようになるかは、大学の量的規模、又は政策的に妥当とされる規模を検討する上で重要な論点となる。
しかし、大学入学者のうち25歳以上の者の割合は、OECD加盟国平均の20.6%に対して、我が国はわずかに2.0%に止まっている。
これまで大学制度の弾力化や科目等履修生制度等を策定しているほか、社会人の学修に係る負担の軽減(奨学金事業や授業料等の減免制度、中小企業等が雇用者を大学等に派遣する場合の法人税額控除など)が挙げられている。
しかし、これらの施策を講じているものの、依然として学修目的に合った教育プログラム不在や職業との両立や時間・費用が大学就学を妨げているのが実情だ。
そこで、@大学教育の内容を職業生活上の要請に的確に応えるものとすること、A学修成果が職業生活等で適切に評価され、社会や経済の発展のために活用されること、B社会人の大学就学への負担を取り除くこと、などの検討を進めている。
併せて、国の支援策も講じていくことが欠かせないとしている。
なお、これまで審議していた財務・経営情報の公表の在り方については、大学関係者により基準等を作成する方向となり、「一律に法で定めるのではなく、私学団体としても主体的な公表の在り方を検討する」ことになっている。
【法科大学院特別委員会】
司法試験の合格率が初年の平成18年の48.3%から落ち込み、昨年には27.6%と低迷していること、また、受験者の志願状況も悪い状況であり、統廃合も含めた組織の見直しや認証評価の基準の見直し等が求められている。
司法試験の合格率について、合格率平均の半分以下の状況が続く場合には、公的支援の在り方を平成23年度予算から検討すべきだと提言している。また、入学試験の競争率なども公的支援削減等の指標になる。
法曹養成の役割を十分に果たしているとは言えない法科大学院は改革を迫られることになる。
キャリア教育職業教育特別部会
同部会では、「高等教育における職業教育の充実方策」について、大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会の@「大学教育と職業との接続検討分科会」、A「質保証枠組み検討分科会」、B「教養教育・共通教育検討分科会」の三つの分科会における検討状況が報告された。
@では、大学、企業、政府のいずれにおいても問題状況の構造を踏まえての「大学教育」「労働市場・企業の人事制度」「両者をつなぐ就職・採用活動」の相互依存的な関係を理解し、専門性を媒介とした新しい接続の在り方を模索する必要があるとしている。
特に、就職・採用活動や学生に対する支援の充実、就職できない若者に対するセーフティネットの構築など、早急な対応が求められるとした。
Aでは、各大学での教育課程編成のため、現在、学術会議で分野別の参照基準を策定しており、各大学は具体的な学習目標設定の参考とする。その際、職業能力の形成は重要な観点であることから、分野固有の能力とジェネリックスキルの両面を検討することが求められる。また、同部会では企業の中堅人材ニーズに関する調査結果の検討も行っている。
そのほか、大学分科会の大学行財政部会では、国公私立大学の設置形態別の役割等を審議することになっている。