平成21年8月 第2371号(8月26日)
■新刊紹介
魅力ある学校づくりを
持つ資源活用せよ 少子化時代に警鐘
「実践的学校経営戦略―少子化時代を生き抜く学校経営―」
岩田雅明著
少子化時代を迎えて大学経営は厳しさを増している。高校、専門学校、短大も同じだ。そうした学校の経営者らにとってタイムリーな本が出版された。「実践的学校経営戦略―少子化時代を生き抜く学校経営―」。自らの経験に基づく魅力ある学校づくりの施策や広報、進学・就職支援などの戦略は私立学校関係者に必読の書になりそうだ。
著者は、共愛学園前橋国際大学(群馬県前橋市)大学運営センター長の岩田雅明さん。さきに、岩田さんの「未来が輝く大学の正しい選び方」(エール出版社)を本紙で紹介した。
岩田さんは、まず本を書いた動機を語った。
「学校は地域の『想い』を基に作られたものであるから、是非とも存続して欲しいという願いからです。そして、生徒・学生募集に課題のある学校も内容というよりは、ベクトルの合わせ方に問題があるケースが多いので、そこに気づいて欲しいという思いもありました」
本は、六章からなる。五章までは、学校経営にあたっての戦略づくりやビジョンを共有すること、そのための組織や風土づくりの具体的な展開例。六章は個性や特色を生かして実績を上げている学校を紹介、大学では金沢工業大学が取り上げられている。
学校関係者にとって示唆に富む意見が各章に散りばめられている。
一章の「学校経営に当たっての基本的なこと」で、〈魅力的な、かつ社会的意義のあるビジョンを持つこと、そしてそれをメンバーで共有することが一番重要である〉
四章の「組織風土のつくり方」で〈学校の場合は数字で表せない成果が多いので、承認を中心とした豊かなコミュニションが組織活性化に不可欠である〉
五章の「具体的な戦術」の広報のプレスリリースを〈入学式、卒業式も入学者何名で、どこの会場で、と書くよりユニークな入学者、卒業生のコメントを載せるといった工夫が欲しい〉
出版を機会に、岩田さんに質問をした。
少子化・大学全入といった時代に私立学校がとるべき道は?
「潰しあいの競争でなく、各校が持てる資源を活用し、特色を発揮してほしい。生徒・学生の選択肢を広げることで共生のための競争をめざすべきではないでしょうか。
また、学校は他の業界と違って、まだまだやれることがたくさんあります。過去の常識にとらわれず、『卓越したサービス』を見出し、それを実践して欲しい」
厳しい教育環境のなか、受験生や在校生らに 言いたいことは?
「長期的な視野を持って、生徒・学生の成長を徹底して図ってくれる学校を選ぶようにして欲しいと思います」
最後に、どういう人に読んで欲しいか、と問うた。
「学校の経営陣、幹部職員を主に想定していますが、変革のためには(学校関係者)一人ひとりが変わることが必要ではないでしょうか。より多くの学校関係者に読んでもらいたいと思います」
岩田雅明著
ぎょうせい
03―6892―6666
定価1714円+税。