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平成21年6月 第2363号(6月17日)

多様化する科技人材育成
  21年度科学技術白書が閣議決定

 政府はこのたび、「平成20年度科学技術の振興に関する年次報告」、いわゆる科学技術白書を閣議決定した。特に大学に対する施策についての記述がある第二部第三章を重点的に紹介する。

 同白書は二部構成となっている。第一部は「世界の大転換期を乗り越える日本発の革新的科学技術を目指して」と題し、多くページがさかれている。昨年、わが国から四名の研究者がノーベル賞を受賞するという快挙があり、わが国の高い研究開発力が内外に示されることにもなった。
 一方、イノベーションのオープン化やグローバル化等の新たな潮流や、研究人材の国際流動の増大と獲得競争の激化等が生じており、わが国はまさに世界の大転換期に直面している。
 第一部では、このような大転換期を、高い研究開発力を生かしたイノベーションにより乗り越えていくための「研究者優先」の制度の創設や「低炭素革命」実現のための研究の推進等の科学技術政策の在り方を記述している。
 第二部は、平成20年度に関係府省が講じた科学技術施策を、科学技術基本計画に沿ってまとめている。特に、第三章の「科学技術システム改革」では、人材育成や大学の記述が多いためここでは重点的に紹介する。
 同章第一節「人材の育成、確保、活躍の促進」では、若手研究者の自立支援や人材の流動性向上と自校出身者比率の抑制、女性・外国人研究者の活躍推進等について触れられている。また、大学の人材育成は、次のように紹介されている。
 「各大学においては、教育内容の改善を図る取り組みが積極的に行なわれているところであるが、例えば、専門分野以外の分野の授業科目を体系的に履修させる主専攻・副専攻を導入する大学は年々増加し、平成19年度現在、学部段階では152大学、研究科段階では89大学において導入されている。また、教育環境の改善・充実を図るため教員の教育力向上のための組織的な取組(FD)を平成19年度は664大学が実施しており、教員の教育面の業績評価も平成19年度は学部段階では319大学、研究科段階では235大学が実施している。」
 次に、産学が協働した人材育成として、文部科学省と経済産業省が推進する「産学人材育成パートナーシップ」に触れるとともに、知的財産・技術経営人材、科学技術コミュニケーター、技術者の養成・確保等、科学技術の多様な人材育成が紹介されている。
 同章第二節では、大学の競争力を強化するグローバルとローカルな科学技術支援策がまとめられている。承認TLOは平成21年4月1日現在で46機関となり、大学発ベンチャー数は1700を超えるなど、大学における研究成果の実用化推進も掲載されている。
 同章第三節では、国公私立大学の施設・設備の整備施設について書かれている。特に、私立大学では、優れた研究プロジェクトに対し研究施設・設備等の一体的な支援を行なう「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」を推進していると述べられている。
 同章第四節では、国際活動の戦略的推進について、科学技術外交や国際活動強化の環境整備と研究者交流の促進、諸外国との協力などの施策に触れている。

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