平成21年3月 第2353号(3月25日)
■質保証システム構築の課題 公開研究会開く
日本私立大学協会附置私学高等教育研究所(大沼淳所長)は、去る三月九日東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で、「質保証システムの再構築」をテーマに第三九回公開研究会を開催した。
講師には、山本眞一広島大教授・高等教育研究開発センター長(日本高等教育学会会長、大学分科会質保証システムWG主査)と黒田壽二金沢工業大学学園長・総長(前大学設置・学校法人審議会学校法人分科会長、大学分科会委員)の二人が招かれ、現状と問題点、さらに今後の方向性などについて講演した。
同研究所の瀧澤博三主幹の挨拶で開会となり、はじめに山本氏は、「大学改革と教育の質保証」と題し、まず大学改革と環境の変化について、▽大学設置基準の大綱化〜教養教育問題、▽国大の法人化、▽大学・学部等設置の規制緩和、▽大学の役割の多様化・個性化、▽FDの義務化、▽学士課程教育の充実と教育の質保証などを挙げた。
次に、これらの改革とともに少子化といった社会環境等によって、大学を巡る諸環境の変化についても触れた。そして、新たな教育コンセプトとしての「学士力」の実質化とその質保証へ向けた改革が不可避であることとともに、各大学ごとの個別の状況によってその方法や在り方を考えなければならないと論じた。
次に、黒田氏は、「大学教育の質の向上に向けて」と題し、質保証システム構築のための大学、行政機関、評価機関、大学団体等の連関図を示した上で、(1)公的な質保証としての@設置基準、A設置認可、B認証評価の役割を挙げるとともに、それぞれの改善すべき点を述べた。
また、大学内の質保証体制では、組織化された質保証のPDCAサイクルの機能が重要であると論じ、今後の課題として、@教育の質の保証を誰がするのか、A国際的通用性をどのように考えるか、B専門分野の学習成果と質保証をどのように図るのか、C「学士力」の学習成果をどう判定するのか、D単位の実質化の在り方はどのようにするのか、など、重要ポイントを解説した。
引き続いて、瀧澤氏が山本、黒田両氏の講演内容を踏まえて、今後の認証評価の在り方・改善の方向などについて述べた。
その後、フロアとの質疑応答が行われて閉会した。