平成21年3月 第2353号(3月25日)
■中教審審議動向
"質保証"在り方めぐり審議 大学分科会設置基準・認可・評価の関連性
第五期中央教育審議会(三村明夫会長)がスタートして二か月、「中長期的な大学教育の在り方」、「キャリア教育・職業教育」の諮問事項等に沿って活発な審議が行われている。大学分科会の「質保証システムの構築」をめぐる議論をはじめ、キャリア教育・職業教育特別部会、教育振興基本計画部会の審議動向は次のとおり。
大学分科会
大学分科会(安西祐一郎分科会長)は、去る三月十日、文科省内の会議室で第七七回会合を開催し、「中長期的な大学教育の在り方について」(諮問)に係る質保証システムを審議した。
大学の公的質保証では、最低基準を定める「設置基準」、それを担保する「設置認可審査」、設置後の確認の「認証評価」の三つの要素と、大学の活動を支える「公財政支援」を一体的に運用していく仕組みの構築が必要であり、さらに大学の機能別分化の在り方も併せて検討している。
事務局からは、これら三つの要素について、(1)設置基準と設置認可審査の関係、(2)設置基準と認証評価の関係、(3)設置認可審査と認証評価の関係のそれぞれについて検討課題例が示されるとともに、諸外国の質保証システムの概要などが説明された。また、黒田壽二委員からは、大学・行政・認証評価機関・大学団体等の役割と質保証の取組の連関図に基づいた質保証システムの在り方や課題について提案された。
委員からは「設置基準はもう少し定量的な方向への改善を」「届出設置では、一定期間内の変更はできないようにすべきではないか」「設置基準は“運転免許”を与えるもの、認証評価では例えば(優)のような評価表示があってよいのではないか」「認証評価機関の横の連絡を取る必要はないか」「規制緩和によって、審査に当たり“特別な事情”とか“なるべく”といった曖昧さがあり、設置認可審査では、客観点に審査することが難しくなっている」など、多くの意見が出された。
最後に安西分科会長は、「多くの意見を取りまとめた上で、論点を整理し、審議を深めたい」と述べるとともに、このたびの諮問内容のうち、設置基準・設置認可審査の課題、さらには大学間ネットワークの構築など、具体的な検討の進められるものについては、早期に取りまとめたい」などとの意向を述べた。
なお、前回の会合で未決定であった副分科会長には郷 通子委員(お茶の水女子大学長)と荻上紘一委員((独)大学評価・学位授与機構教授)が選任された。
キャリア教育職業教育特別部会
キャリア教育・職業教育特別部会(田村哲夫部会長)は、去る三月十一日、文科省内講堂において第三回会合を開き、「学校から社会・職業への円滑な移行に必要な基礎的・汎用的能力」について、これまでの意見を踏まえて集約された(1)基礎的・汎用的能力の明確化とその育成の在り方、(2)後期中等教育における職業教育の在り方、(3)高等教育における職業教育の在り方、の三つのテーマのうちの(1)について、次の三点に焦点を当てて審議した。
@キャリア教育について自己実現のみならず、社会との関わりを重視する観点から、どんな方策があるか。
A学生・生徒の社会・職業への円滑な移行のために共通して求められる基礎的・汎用的能力として、コミュニケーション能力や粘り強さ、課題発見能力等が挙げられているが、発達段階ごとに、どの程度の水準(アウトカム)を求めるか。また、それをキャリア教育・職業教育を通じ、どのように育成し、どのように到達度を評価するか。
B職業倫理や望ましい職業観、労働者としての権利・義務等の基本的な知識を身につけさせるために、どのような方策が考えられるか。また、職業観等の育成における学校、家庭、地域の役割分担の在り方や相互の連携を進める上で、どのような方策が考えられるか。
なお、基礎的・汎用的能力の育成は、今後の議論全体に関わるものであり、その方法について総括的な整理を行うことになった。
当日は委員から多様な意見が出され、更に議論を深めることになった。
教育振興基本計画部会
教育振興基本計画部会が去る三月二日、東京・虎ノ門の東海大学校友会館で第五期中教審での初会合(通算第二回)を開き、部会長に田村哲夫氏((学)渋谷教育学園理事長)、副部会長に小宮山 宏氏(東京大学総長)を選任するとともに、同計画を確実に実行するためのアクションプラン「教育重点施策二〇〇九」(案)〈詳細は2面〉を審議した。
●「教育重点施策二〇〇九」(案)の概要
基本的方向1:社会全体で教育の向上に取り組む
基本的方向2:個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基礎を育てる
基本的方向3:教養と専門性を備えた人材を養成し社会の発展を支える
基本的方向4:子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する
このアクションプランに対し、委員からは、「各市町村レベルでも様々な計画を検討している。それらをフォローし、当部会に反映することを考えてもよいのではないか」「大学教育も大事だが、初中教育も重要であり、その面をもっと強調してよいのではないか」「教員の免許更新制による資質向上だけでなく、団塊の世代が退職し、リーダーとなるような人材が手薄になっている。その取組みも必要だ」など多様な意見が出され、今後、更に議論を深めていくことになった。
そのほか、事例報告として「岐阜県教育ビジョン〜豊かな自然と人の絆がはぐくむ夢と志」を松川禮子委員(岐阜県教育委員会教育長)が説明した。