平成21年2月 第2350号(2月25日)
■高めよ 深めよ 大学広報力〈23〉
「就職力」は実学教育から OBも応援「把握率」で就職を支援
大阪経済大学は、一九三二年に浪華高等商業学校として設置された。一九四九年の学制改革により大阪経済大学となり、経済学部を設置。二〇〇二年に人間科学部、二〇〇四年には企業法務を重視したビジネス法学科を設置。現在は四学部七学科を有する文科系総合大学。
重森学長は、昨年開かれた「変わる大学広報」をテーマにした大学関西フォーラム(読売新聞)で、大学広報について、こう語っている。
「大学広報の基本は、研究教育の目標や方法、内容を社会に広く知らせることだ。なかでも、学生たちがどのように学び、活躍しているかは広報の柱。学生たちの企画力を養成する授業から様々な成果が出ている」
学生の企画が商品化
様々な成果について、重森が説明する。「大阪発のブランド商品の企画力開発では、学生が提案した企画をもとにホリプロなどと共同で映画『おばちゃんチップス』を製作しました。また、このチップスは江崎グリコから商品化されました。
〇六年に大学近くに地下鉄の新駅ができる際には、学生たちが駅名に『大阪経大前』をつけようとアイデアを出し、学生が署名活動や地域の人たちとのイベントに参加。新聞やテレビなどに取り上げられました」
イベントでは、高大連携にも一役買っているものがある。〇一年の創立七〇周年記念事業として、開始した全国の高校生を対象にした作文コンクール「17歳からのメッセージ」は現在も続いている。
「当初は七〇〇〇人の応募でしたが、昨年は四九一校、三万四〇〇〇人の応募がありました。『17歳をやっている大阪経済大』といわれるようになり、生徒や高校とつながりが強まっていると思っています」(広報課長の梅原 猛)
冒頭にも書いたが、大阪経済大の強みのひとつであり、マスコミに取り上げられることの多いのが就職力。学長の重森が就職力の「総論」を語る。
「本学は、多彩な職業人を育成する人間的実学教育を行っています。人間的実学教育の柱は@インターンシップ、地域調査など現場体験的学習、A基礎演習・専門演習・卒業研究など少人数・交流型教育、Bキャリア講座、クラスアドバイザーなどキャリアサポートシステム―の三つです」
進路支援センター部長の藤原広太郎が「各論」を続ける。「うちでは、就職率という言葉はあまり使わず、把握率といっています。一人ひとりの学生の就職状況を把握することです。この把握率を上げることを第一に考えています。四年生には、一人ひとりに、個別に面談、さらに、就職が決まっていない学生には毎月、求人票とともに現状を報告するよう催促の手紙を送っています」
充実のキャリア教育
この手紙は、学生からは「紙爆弾」と恐れられているとか。このように、就職を希望していながら就職が決まらない学生は徹底的にフォローする。この把握率は〇五年から取り入れたという。昨年の就職率は九二・三%だったが、把握率は九九・六だった。
キャリア教育にも積極的に取り組んでいる。同大は、いち早くインターンシップ課を設けて学生を支援している。全国の大学のインターンシップ実施状況調査(〇七年、産学プラザ調べ)では、参加学生数は日本大、早稲田大などマンモス大学に伍して八位になった。
ところで、百年に一度の経済不況ということもあって、今年度の新規卒業者の就職戦線は厳しい。全国で内定取り消しが相次いだ。文部科学省のまとめ(平成二十一年一月五日現在)では二八三校で七五三人。ご他聞にもれず、大阪経済大でも五人いたが、ただちに、進路支援センターが動いた。
「すぐに内定取り消しの五人を呼んで、心配しないよう、申し渡しました。当センターとして、五人の就職に全力を傾け、四人はまもなく新しい就職先が決まりました。残る一人は、卒業が厳しいので来年頑張る、ということになりました」(藤原)
この大阪経済大の就職力には、OB力も大いに貢献している。藤原が語る。「うちの卒業生は、企業に入社してからコツコツと仕事をするので信頼されるそうです。そうしたOBの方が求人票を持って来訪されることも多いです。インターンシップを引き受けてくれる企業も採用担当に、うちのOBがいたり、ほんとうにOBの皆様には感謝しています」
大阪経済大の同窓会は結束の強さ、後輩の面倒見のよさ、で評判だ。同窓生の数は八万人を超え、民間企業を中心に官公庁、地方自治体、公共団体などに多くの人材を輩出している。
「上場企業役員輩出率ランキング」(週刊プレジデント、〇八・一〇・一三)では、関西の大学で京都大学、大阪市立大学、神戸大学に次いで四番手につけた
。
就職先は、大阪府が四四・二%、ついで近畿圏で一九・四%と、全体の六割以上が大阪周辺に仕事先を選ぶ。業種でみると、商社・卸業、メーカー・製造業、金融保険などが多いという。
地域連携も積極的
地域との連携も熱心だ。井阪健一・元理事長らが発起人として設立したNPO法人「関西を元気にする会」の会員になっている。ここでは、教員の派遣などを通じ、ベンチャー企業を支援している。
また、大阪経済大は「ECOまちネットワークよどがわ」を様々な団体とともに結成。市民共同発電所作りや、国際的な環境支援交流などを通し、地域活性化を行っている。この取り組みは「地域に開かれた体験型環境・まちづくり教育」として文部科学省の現代GP(現代的教育ニーズ取組支援プログラム)に採択された。
中規模大学の存在感
これからの大学広報について、学長の重森が縷々語った。四つのことを上げた。
@大学の社会的責任を果たすために、研究教育活動を基礎としながら、大学の重要な機能として広報活動を位置づける、Aブランディング戦略の確立など戦略的広報と大学改革の中長期的計画の整合性を採る。
B教育研究の一つひとつの取組みを広報活動と位置づけ、大学教職員の広報的意識の向上をめざす、C広報活動における双方向性とPDCAサイクルを意識して取り組む。
このうち、ブランディング戦略は、〇六年から取り組んでいる。基本コンセプトは「つながる力」で、シンボルマーク、ロゴも改訂した。重森は「中規模大学のよさを生かし、人と人とのつながりを大切にした実学教育を追求していきたい」と中規模大学、実学教育に力を込めた。
取材の最後に重森に写真撮影をお願いした。この際、「いつも一緒だし、対等にやっているよね」「ほんとうに、広報として助かります」という学長の重森と広報課長の梅原の短いやりとりが耳に入った。二人の会話が全く自然だったのが印象に残った。