平成21年2月 第2350号(2月25日)
■研究者の流動性やや増加 「わが国の科学技術人材の流動性調査」
文部科学省の科学技術政策研究所と科学技術・学術政策局調査調整課では、科学技術人材の流動性の実態を明らかにするアンケート調査を行い、このたび、「わが国の科学技術人材の流動性調査」を取りまとめた。
我が国の大学等で現在研究している二〇〇〇名の研究者に対して二〇〇八年二月から三月に調査を実施。有効回答者数は一〇三六名(うち大学等は三一一名)であった。
一、流動状況
(1)異動経験
回答者のうち異動経験者は六六・一%。二〇〇〇、〇二、〇四年度の調査結果と比較して割合は増加している。
(2)異動回数
異動回数平均は一・三二回。うち、博士号取得者(回答者全体の五五・七%)の異動平均回数は一・五三回。そのうち、ポスドク経験者(同一二・〇%)は平均異動回数二・六五回だった。
博士号取得者、特にポスドク経験者が研究者の流動性を担っているといえる。
(3)国内外の異動状況
国内機関間の異動は全体の八八・二%。国内から海外へは五・三%。海外から国内へは六・〇%。海外機関間は〇・五%。国内・海外間の流動は少ない。
(4)異動に伴う処遇の変化
異動前後の給与(平均年収)は、異動全体の七八・二%で増加。異動に伴って給与(平均年収)は上昇している。
二、流動に関する意識
(1)研究者の流動状況
五年前に比べてやや増加したが、他先進諸国と比較すると国内機関間及び国内・海外間の流動とも低いという回答が多く、特に国内から海外への流動性がより低いという回答が多い。
(2)国内から海外への流動が低い理由
帰国後のポストの不安や海外機関のコネクションの問題が強く意識されている。また、生活環境や地理的な意識も強い。
(3)流動性増加のメリット・デメリット
研究者流動性の増加のメリットについて、所属機関の研究・文化の開拓・発展に関する意識が強く、研究者個人にとっても、研究者交流の発展に関する意識が強い。
デメリットは、優れた人材、ノウハウの流出、長期研究計画の設定・実施が困難であるという意識が強い。給与は、流動性の増加にあまり左右されないという意識が伺えた。