平成21年2月 第2350号(2月25日)
■丑歳の新年に思うこと
この世に生を受けて六回目の丑歳を迎えることになった。これまで、干支については年賀状の時期以外さほど気にすることなく過ごしてきたが、古希を越えてから、過去に経験した丑歳とその時代背景について振り返ってみたいという気になってきた。今年丑歳を迎える人達は戦前、戦中そして戦後という激動の昭和時代を経験して、さらに動きの激しい平成時代を生き抜いてきた。幼少の頃に終戦の玉音放送を耳にし、戦後の教育制度の急激な変革に戸惑いながら、空腹を抱えて小学校に通った。このような、苦難の道を歩んできた者にとっては、科学や医学の目覚しい進歩の中で生きていることが夢のように思えるが、その一方で、これからの日本がどの方向を向いて進むのか気になるところである。
大学全入時代を迎え、わが国の大学を取り巻く環境はますます厳しさを増し、特に、地方の私立大学においてはこの傾向が顕著である。何れの大学においても、定員の確保に向けて叡智を傾け、生き残りをかけて日夜努力している姿はまさに戦国時代であるといっても過言ではない。このような困難な時期を乗り越えるためには、それぞれの大学が特色を生かしながら大学改革に取り組み、質的向上を目指して切磋琢磨することが重要である。また、国際化が進むにつれて大学に対する世間の目も変わり、今や国際的評価に耐えうる大学が求められる時代を迎えようとしている。これからの大学が国際競争化時代をどう生き抜くのか。この課題の解決のためには、是非とも若い人達の力が必要であり、彼らのエネルギーに期待したい。
一方、入学した学生に付加価値を付けて世に送り出すことも大学に課せられた重要な使命のひとつである。ここ数年は景気も回復傾向をたどり、就職状況にも好転の兆しが見られひと安堵していたが、それもつかの間、突如として襲った世界的な金融危機の煽りで状況は一転した。二〇〇七年夏のサブプライム問題に端を発した世界的金融危機は、わが国の経済界にも影響を及ぼし、大手企業においても従業員の大量解雇を余儀なくされるような状況に陥っている。この影響は大学にも及び、既に学生の就職内定取り消しが生じており、今後も中途退学者の増加や大学進学率の低下などにより深刻な事態が懸念される。前途有望な若者達を失望させるようなことは何としても避けねばならない。今年こそ、若者達が安心して学べる年になるよう切に願う次第である。