平成20年11月 第2340号(11月26日)
■学生を焚き付けろ 先輩学生が行う初年次教育
嘉悦大学(加藤 寛学長)では、一風変わった初年次教育に取り組んでいる。
「現代企業と人材(担当:杉田一真専任講師)」という講義科目で、NPO法人カタリバ(今村久美代表理事)と連携。計四回の講義を通して、学生は五、六名のグループを作り、「自分がこれからやりたいこと」について考え、最後に学生同士で「約束」を行なう。
十一月十七日は、ちょうど宣言がある第四回。講義が始まると、いくつかのグループができ、約四〇名の学生が思い思いのプレゼンテーションを始めた。
「これが大学の授業か」と思えるほどの自由な雰囲気。ガヤガヤとした声が飛び交い、人気グループの曲が流れる。しかし、学生は遊んでもいなければ寝てもいない。与えられた課題に真剣なのである。
この風変わりな講義を導入したのは、加藤学長が赴任してから。当時は、学生が自信なさげに下を向いて歩いていた。講義が終われば学生は帰ってしまい、一五時にはキャンパスはガラガラ。大学は楽しくなければダメだ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの創設や、千葉商科大学の改革に携わった経験から、まず嘉悦大学で取り組んだのは、キャンパスの二十四時間オープン化だった。
オープン化した大学に居たくなる工夫が、今回のカタリバとの連携。担当する杉田講師は話す。
「教室で仲間を見つけ、共に目標を見つけて、何か課外活動等に夢中に取り組む。その最初のステップが今回の講義」
カタリバは、高校の授業枠に、大学生と高校生が「語る場」を提供するNPO。これまでに都内の高校を中心に八〇回以上の企画を行なってきた。今回、初めて大学と連携。
このたびはカタリバが、学外の意欲的な「先輩」学生(様々な大学で構成)を嘉悦大学に派遣。こうした先輩学生が講義のグループに入り込み、嘉悦大学の学生の声に真剣に耳を傾け、また、自らの趣味や生活、活動内容や今後取り組みたいことを熱心に語る。
先輩学生の熱意に触れ、嘉悦大学の学生に「自分も何かをしてみたい」という動機が生まれる。四回の講義の後、実際にカタリバの活動に参加する学生も募集する。
何故、教員ではダメなのか。杉田講師は次のように説明する。
「教員による学生の動機付けは失敗することが多い。原因は教員では歳も離れ過ぎているし、立場も違うから。一方、「先輩」学生は、歳も気持ちも近いから互いに共感し、高め合える立場にある。先輩学生にとっても、教えることが学びにつながる。
実際、学生へのアンケート結果からも、カタリバの講義により動機付けられた学生が多いことが分かる。「半学半教」に基づく新しい初年次教育で、キャリア教育にも応用できる。
今回、講義に参加し、カタリバの活動を経験した学生が、来年から「先輩」学生となり、新一年生を焚き付ける仕組みを作りたい」
加藤学長は、「学生が変われば教員も変わる。大学改革は学生から」と強調した。
初年次教育の新しい仕組みを生み出せるか、今後に注目したい。