平成20年11月 第2340号(11月26日)
■地域に評価される大学 GPの成果をどう考えるか
松本大学
松本大学は、「地域を活かす、ひとづくり大学」を理念に二〇〇二年に誕生。松商学園の一一〇年の歴史に裏づけられた地域との信頼関係をベースに、地域に根ざし、地域に貢献できる人材を育成している。地域に出て実践的に学ぶ「アウトキャンパス・スタディ」を軸に、地域社会との連携を強めている。
地域活動は、もともと広く行なわれていたが、特色GPに採択されたことを機に、地域活動が理論化・体系化され、地域連携の形態の多様性に対する教職員の意識が研ぎ澄まされてきた。学生と地域のニーズを一致させ、学生がより主体的に取り組む環境整備として注目されたのが、コミュニティ・ビジネスであった。
例えば、山形村の特産品「むかご」を採取して商品化し、地域の自立とネットワークを創造する「むかごちゃんプロジェクト」、人力自転車を使った「ベロタクシー事業」、廃油をリサイクルして走る車を作る「天ぷら廃油Carプロジェクト」など現在八つの事業が進行している。
「初めは松本のいいところを紹介する程度の意識だったけれど、住民の一人として松本の街をどうよくしていけるかを考えるようになった」
松本の中心市街地を調査し、その成果を「タウンマップ」としてホームページにまとめる活動を進めた四年生の言葉である。
大学での学びを自ら形にした学生もいる。仕事に疲れて家にこもりがちな妹や介護に追われる母親の生き甲斐づくりに、自ら図面を引き、保健所の講習を受けて地域の交流の場となるようパン屋「ベーカリー麦の穂」を開業した。また社会人学生は、子育て支援組織「ウィメンズ・ネットワーク」を立ち上げ、学生も巻き込んで事業を展開している。
学生は、街の中に自分たちの役割と場を見出した。学生は地域で育つ一方で、地域を育てる担い手でもあり、学生にしかできないこともある。
ステークホルダーからも十分な評価を得ている。企業、行政、町会、現場と結びついた活動も多く、一般市民からの激励が目に付くし、頻繁に新聞・テレビ等のマスコミでも報道されている。マスメディアを通して知ってもらったり、直接活動に参加してもらったりする中で、「地域住民に元気をもたらしてくれている」「若い人の姿を見ていると、こちらまで元気になってくる」など、学生は、地域社会の元気印のシンボル的役割を果たしている。
また、短期大学部は、湘北短期大学部と相互点検・評価の活動を行っている。両校ともGPに複数回採択されており、お互いに優れた内容を学びあい、取り入れている。
遠方の大学や短大、自治体からの視察回数も増えている。ある自治体では、地元の大学と松本大学のように連携して、地域の活性化を図りたいと言って帰っていった。
若者が魅力ある地域を生み出し、それが他の若者にとって地域に留まるきっかけになる…この正の循環を生み出すプロセスが、大学を中心に生まれ始めている。何かを達成することが成果なのではなく、この循環を回していく仕組みそのものが大学の地域共創の真価でもあるといえる。