平成20年11月 第2340号(11月26日)
■地域に評価される大学 GPの成果をどう考えるか
筑波学院大学
筑波学院大学の教育目標は、「社会力」豊かな人間の育成である。社会力は、誰からも好かれ、社会の役に立ち、社会作りやその運営に積極的に貢献できる力のこと。学生を様々な社会参加活動に参画させ、社会のダイナミズムを学ばせる。この取り組みは、オフ・キャンパス・プログラム(OCP)として、現代GPにも採択された。
OCPは一年から三年の通年の必修科目。年次が上がる毎に取り組むレベルが高度になるステップアップ型の実践科目である。
三年次には、社会の様々な資源を活用して、自分が取り組みたい六〇時間以上の活動を計画し、実際に社会に飛び出す。
現代GPに採択されたことで、OCPの要ともいえる、学生の受入れ団体との橋渡しを行なう「社会人コーディネーター」の業務委託もスムーズに進んだ。
地域活動を必修として組み込み教育の軸に据える大学は珍しいと言える。
これまでの具体的な活動は、@医療・福祉:知的障害児との遊び、知的障害者との芸術活動・農作業など、A環境:里山保全、外来魚の駆除、リサイクルマーケット・ショップの運営補助など、B街づくり:クリスマスイベント、つくばサイエンスツアーのバスガイドなど、C社会教育・子供:フリースクールでの子供との遊び、学校図書館・公立図書館での運営補助など、Dスポーツ:霞ヶ浦での障害者ヨットクルーズ、ライフセービング活動など、E国際:国際協力・外国人への日本語教授、タイ語勉強会でのタイ語講師など、F女性:育児、授乳服イベント、ピンクリボン活動補助、G文化:ストリートミュージック、大学周辺で行われる祭りなど、H情報・科学・学術:ラジオ番組作成、高齢者へのパソコン教室、ロボットセラピーなどと多種多様。
受入れ四八団体からのアンケート結果は次の通り。
@学生の社会活動参加は団体に役立ったか。
「学生の存在や考え・アイディアが刺激になった」、「マンパワーとして役立った」、「学生の参加により多世代がコミュニケーションを図れる環境が作れた」。
また、情報スキル、団体や活動内容への理解、柔軟で積極的な対応等により「安心して業務を任せることができた」という回答が多かった。
学生の参加により、「団体の新たな可能性が見つけられた」、「組織運営の勉強になった」との声もあった。
A学生の活動は社会力向上に役立ったか。
「社会と関わり、人とコミュニケーションを図る体験自体の大切さ」と回答した団体が多かった。また、「普段と異なる場での生活は、学生の意欲向上、自立心、コミュニケーション能力を高める機会となった」という意見もあった。
多く回答があった「このような体験は将来必ず役に立つ」との意見は、全ての関係者が感じるところであろう。しかし、こうした感覚は評価軸には表現し辛いことが課題といえる。
平成十九年八月、経済産業省「社会人基礎力」政策担当者が視察に訪れ、学生の活動を視察した。担当官からは、「貴学の教育には『地域に貢献する』だけでなく、『地域と共に成長する』という新しい大学の存在意義を見せていただいた。この取り組みが、学生の成長と地域のNPOやボランティアの活性化を促進し、それが地域の人々の繋がりの強化、幸福の増進に繋がっていく起爆剤になり得る。また、社会力コーディネーターの存在は、日本社会が、人間同士をつなぐ役割をどこまで重視するのかという重要な試金石になるだろう」と高く評価した。
地域での人と人との「繋がり」自体は、活性化の指標にはなりづらい。しかし、活性化するための大きな要素ではあるだろう。