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平成20年11月 第2340号(11月26日)

地域に評価される大学 GPの成果をどう考えるか
  仙台大学

 仙台大学は、体育系単科大学として創設された。建学の精神は、「社会で充分活動できるための智識と技能力を鍛えた心身とともに健康である人間をつくること」。大学は、このための健康育成を重視した教育を実施している。
 医療費の抑制に向けた介護予防、生活習慣病予防対策が急務だが、実践的な運動指導が出来る人材の不足が指摘されている。そこで大学では運動指導の担い手として、大学認定の健康づくりのエキスパート「健康づくり運動サポーター」を地域の健康づくり教室を活用しながら養成している。
 また、そうした学生を育成し、住民の健康づくりに寄与することで、大学が立地する柴田町をフィールドに「地域密着型の健康づくり支援システム」を構築することを目指している。
 こうした取り組みをパートナーとして推進してきた柴田町の滝口 茂町長は次のように評価している。
 「町では、大学の現代GPの取組と連動する形で、地域再生計画が内閣府に認可されました。健康づくりを町全体で受け止め、まちづくりの重要施策として展開する必要があることから、地域に活力を与える「健康づくり運動サポーター」を養成する大学の取組を、「転倒予防教室」「肥満予防教室」「行政区における健康づくり教室」など、地域の健康づくり事業に活用しているところです。
 今年度の現代GPによる地域の健康づくり事業実績(十一月四日現在)は、実施回数一六回、住民参加者数四三三名、学生参加者数延べ八一名、大学教職員派遣者数延べ一〇九名であります。
 今後、地域の人と触れ合いながら、より一層住民の健康づくりに貢献していただけるものと大いに期待しております」
 町としても、健康増進は医療費の抑制に繋がる。また、病人が減れば「医師不足」が問題になる病院の負担も減る。大学での人材育成と町による人材活用が進み、自治体トップの町長も大学の地域共創の成果を喜んでいる。
 続いて地域の声。八三歳の女性は次のように語る。
 「私たちは、七〇歳以上の男女の集まりで、足腰も弱まって思うように行動することが出来ませんが、懇切丁寧に手足の動かし方の指導を受け、指のリズム体操など大きな口をあけて笑いこけながら、一生懸命にご指導を受けました。食事の時など、学生さんと向かい合って笑いながらお話をしたりして、楽しいひと時でした。本当に若返ったような気分となりました。
 友達四、五人に聞きましたところ、これからも来ていただきたいとの要望が、全員から聞かれました。次回も元気付けてくださいますよう、よろしくお願いいたします」。
 健康とは、世代を超えて笑ったり楽しんだりして、「心の運動」もすることが大事なのだと教えられる。「これからも来て欲しい」という声は、学生が地域に不可欠な存在になりつつあるという証左であろう。
 地域から学ぶ学生はどうだろうか。体育学部健康福祉学科三年の学生は、「日頃大学で専門的な学習はしているものの、体が不自由な方、難聴の方など、個々のケースに合わせ対応することの難しさを感じた。この次の機会には、もう少しよい関わりが出来るよう努力したい」と、大学での学びを実践と結びつけ、より深い理解を得ている。
 更に特徴的なのは、体育学部運動栄養学科一年の学生の感想だ。
 「私たちが高齢者に元気を与えているというよりも、私たち学生がたくさんの元気をいただいたことを実感する一日でした」
 つまり、大学の健康増進活動は、単に身体的な健康に留まらず、精神面、心の元気を、学生、高齢者双方に与えている。
 地域が元気になるとは、地域に住む一人ひとりが元気になることだ。こうした取り組みは、医療費の削減といった形で徐々に数値的な効果も期待される。

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