平成20年11月 第2340号(11月26日)
■高等教育情勢、予算・税制改正要望等の連絡協議
河村私学部長「私大の諸課題」を講演
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、十一月十八日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントにおいて、関東地区連絡協議会=通算第四七回=(平成二十年度議長:細山田明義昭和大学学長)を同協議会所属の一二四大学から九七大学一四六人が出席して開催した。講演では、文部科学省の河村潤子私学部長が「私立大学を取り巻く諸情勢について」と題し、高等教育の諸課題とそれに対する各種施策等について語った。協議終了後には、所属大学の結束を固める有意義な情報交換会も行われた。
同協議会の会長でもある大沼会長は、「グローバルな経済不安の中で、年末の予算折衝等、重要な局面を迎えようとしている。今日、日本社会に何か構造的な変化が起ころうとしているのではないか。大学教育における質の問題など、社会とのミスマッチが指摘されてもいるが、我々の責任でもある。我々は協会の活動を通じて最新の情報のもとに進むべき道を探っていかなければならない。特に地方の振興には全力で当たっていきたい」などとの決意を込めた挨拶をした。
また、細山田議長は、「少子化が進み、大変厳しい状況下、年々私学助成も減っていく中で、質の高い教育を保っていかなければならない。協会を支える大きな柱として、みなさんの力を結集していきたい」と挨拶した。
次に、同協会事務局の吉村 猛総務部長が、副会長として廣川利男東京電機大学学事顧問、常任幹事として、平成二十年度議長の細山田氏の他、同二十一年度議長の塚本桓世東京理科大学理事長、同二十二年度議長の小田一幸東京造形大学理事長、同二十三年度議長の佐藤東洋士桜美林大学理事長・学長を紹介した。
引き続く連絡協議では、中央教育審議会の審議等を踏まえての高等教育情勢、平成二十一年度の私大関係予算及び税制改正要望等の実現に向けた折衝等、私学振興上の課題など重要ポイントの解説があった。
小休憩をはさみ、文科省の河村私学部長が「私立大学を取り巻く諸課題」について、資料データ等を示しながら熱のこもった講演をした。
同氏は、@大学を取り巻く状況、A教育の質の保証、B高等教育財政の現状と課題のテーマに沿って、それぞれのポイントを概説。
@では、大学の量的拡大と多様化・機能別分化、教育基本法の改正と教育振興基本計画の策定、大学間の連携協力とネットワークの形成について解説し、特に平成十七年のいわゆる「将来像答申」以後、大学が個性化目指し、自律的選択によって機能別分化(国際交流、キャリア支援、地元との連携など)を果たしつつあり、文科省としても下支えするGP等の各種施策を提案していること、そして、中教審に諮問された「中長期的な大学教育の在り方について」に関連して、各大学からの意見等、施策提案を呼びかけた。併せて、平成二十二年度以後の実施を予定している教育課程の共同実施制度への取組みも促した。
Aでは、公的な質保証システム、各大学による自主的・主体的な質保証の在り方等について、事前規制としての設置認可制度と事後評価・適格認定としての認証評価制度を維持するとともに、制度それ自体の在り方についても検討を要する面もあることを述べた。
Bでは、高等教育への公財政支出の状況、大学に対するファンディングの現状、私学振興のための総合的支援について解説。特に、高等教育への公財政支出の対GDP比では、OECD加盟各国平均の約一%と比べて、我が国の〇・五%はあまりにも低く、最低の水準であると述べ、行政をはじめ国民全体に強く訴えていかなければならないと強調した。
最後に、私学振興のための支援策について、学校法人が多元的に資金を集められるような寄附金税制等の税制改正、経常費等の基盤的経費の充実、個性化を十分に発揮することができる幅広の競争的資金の充実等が重要であるとした上で、関連する各種施策について解説した。
同氏の解説は系統立ててわかり易く、各大学の取組みにとって大いに参考となる内容となった。講演の最後に、「これからも私学のために全力を尽くしていきたい」との言葉で締めくくった。
協議の終了後には、河村私学部長も交じえての情報交換会も開かれた。