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平成20年10月 第2335号(10月15日)

私大初の受賞者に益川氏(京都産業大学)
  物理:南部氏・小林氏・益川氏、化学:下村氏

 平成二十年度のノーベル物理学賞は、南部陽一郎シカゴ大学名誉教授、小林 誠高エネルギー加速器研究機構名誉教授、益川敏英京都産業大学教授が受賞した。益川教授は日本の私立大学在籍の科学者では初めての受賞。また、化学賞に下村 脩ボストン大学名誉教授が受賞した。

 スウェーデン王立科学アカデミーは去る十月七日、ノーベル物理学賞を南部氏、小林氏、益川氏、翌八日には化学賞を下村氏に贈ることを決定した。
 南部氏は、「素粒子物理学と核物理学における自発的対称性の破れの発見」が、小林・益川両氏は、「対称性の破れの起源の発見」が評価された。下村氏は「緑色蛍光タンパク質GFPの発見と開発」が評価された。

 ノーベル物理学賞
 南部氏は一九六〇年に、素粒子物理学における自発的対称性の破れを定式化した。対称性が自発的に破れている場合は、一見雑然とした外見の下に自然界の秩序が隠されている。
 この考え方は極めて有用であり、南部氏の理論は素粒子物理の標準模型(理論)の基盤を成している。標準模型ではあらゆる物質の最小の構成要素と、自然界の四つの基本的な力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)のうち三つ(強い力、弱い力、電磁気力)が一つの理論に統一されている。
 小林・益川両氏によって記述された対称性の破れは、南部氏の研究したものとは別種で、宇宙の始まりから自然界に存在したと考えているもの。これが一九六四年に初めて素粒子実験で発見されたときは大きな驚きを持って迎えられた。小林・益川両氏による一九七二年の説明の重要性が科学界で完全に確認されるに至ったのはごく最近のことである。このたびは、この業績に対し両氏にノーベル賞が贈られた。
 小林・益川両氏は対称性の破れを標準模型の枠組みに沿って説明しつつ、更にこの模型が三世代のクォーク(第一世代はアップ、ダウン、第二世代はチャーム、ストレンジ、第三世代はトップ、ボトムと、三世代に一対ずつ計六種類のクォークがある)を含むまで拡張されることが必須であるとした。
 ここで予言された新しいクォークの仮説は、筑波の検出器などによって検証され、その結果は小林・益川両氏の予言と完全に一致することとなった。

 ノーベル化学賞
 驚くほど明るい緑色の蛍光を発するタンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)は、オワンクラゲという美しいクラゲから一九六二年に初めて発見された。以後、このタンパク質は今日の生物科学で使われる最も重要な道具の一つとなった。
 研究者は、GFPの助けを借りることで、脳の神経細胞の発達過程やがん細胞が広がる過程など、これまで見ることのできなかったプロセスを追跡する手法を開発した。
 生物個体には何万個もの異なったタンパク質があり、全ての化学的過程を詳細にわたるまでコントロールしている。このタンパク機構がうまく働かなくなるとその結果病気になることがある。このために、体の中で異なったタンパク質がどんな役割を果たしているのか、“地図”に描いてみることが生物科学の必須の課題となっている。
 このたびは、GFPの最初の発見と、それを生物科学における標識(タグ)化の道具として使えるようにした一連の重要な開発に対して与えられた。今や研究者は、遺伝子工学を用いて、GFPを、興味深いが可視化の術がなかった他のタンパク質に結合することができる。この光る目印のおかげで、そのタグについてタンパク質の動き、位置、相互作用を見ることが可能となる。
 研究者はまた、様々な細胞の運命をGFPによって追跡することができる。例えば、アルツハイマー病により神経細胞がどのように壊れていくのか、発達中の胚のすい臓でどのようにしてインスリンを産出するβ細胞が作られるのかなどである。GFP発見の背後に先導的役割を果たした三人のノーベル賞受賞者がいる。
 その一人の下村氏は、北米西海岸沿岸を海流に乗って漂うオワンクラゲから、最初にGFPを単離した。紫外光を当てると、このタンパク質が明るい緑色に輝くことを発見した。
 受賞を受けて、塩谷 立文部科学大臣は、談話の中で、「文部科学省としても、この受賞を契機に、学術研究に対する支援をより一層充実していきたい」などと発表した。

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