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平成20年9月 第2331号(9月17日)

ネットワーク活かし教育力向上 20年度教育改革IT戦略大会を開催

 (社)私立大学情報教育協会(戸高敏之会長)は、去る九月二日から四日の三日間にわたり、アルカディア市ヶ谷(東京・千代田区)で平成二十年度教育改革IT戦略大会を開催した。同大会は、教育改革を促進するため組織的な教育力向上の教育戦略、教育改善効果を高めるIT(情報技術)の活用法について情報提供、授業事例の紹介を行うとともに、教育現場の課題解決を模索するためテーマごとに研究討議を行うもの。また、企業の協力を得て事例に即した情報機器、教育支援ソフト等の展示・紹介も行われた。

 第一日目は、戸高会長の挨拶で幕を開けた。続いて、文科省高等教育局高等教育企画課高等教育政策室長の榎本 剛氏が「社会の期待に応える大学教育とは」と題して、大学教育で身につけるべき能力に関する国の指針として、中教審でまとめられた学士課程教育の構築に関する審議のまとめを踏まえ、大学で取り組むべき課題、国として支援すべき課題を紹介した。
 昼食休憩後に事例紹介が行われ、「教育改革推進に向けたFD活動」と題して、山口大学大学教育センター教授の小川 勤氏と大同工業大学授業開発センター長の酒井陽一氏が自校での具体的取組を紹介した。まず、小川氏が目標達成型教育改善システム、FD活動の変遷、現状と課題について講演した。山口大学では、GP(Graduation Policy)=卒業生、修了生が備えておくべき資質として明確化し、GPをどの授業を通じて実現するかを定めたカリキュラム・マップを作成、個々の授業の内容や評価方法をシラバスとして示し、それらをWEB上に公開している。
 以上の三位一体のPlanをもとに授業(Do)を行い、学生、教員による授業評価、ピア・レビュー(Check)を受け、教育改善(Action)をしていく。FD活動の現状としては、各学部で実施され充実したものになりつつあるが、学部間で温度差がみられることや、初年次教育における多様化した新入生に対するきめ細かい指導法の充実化等といった課題をあげた。
 大同工業大学の場合として、酒井氏が授業開発センターの開設背景と役割から、企画・運営を行っている研究授業・授業研究会について解説した。研究授業は、授業参観者が「研究授業レポート」を作成し提出、受講学生は「研究授業アンケート」を記載し提出する。授業の様子は同センターが録画し、ライブ配信またはオンデマンド配信を行う。研究授業日の夕刻には授業研究会を開き、授業担当者と参観教員がアンケート、レポートをもとに授業内容・方法について討議を行う。
 さらに学生への授業評価、到達度自己評価のアンケートを行い、その結果を教員、学科等、センターの三層構造で、分析・省察することで授業改善につなげている。学生へのアンケートはライブ感が必要で、一回ごとの授業の終わりに毎回行うこと。これにより、学生の感覚的な評価を避けることが大事だと述べた。
 休憩を挟んで、学校法人立命館副総長、立命館大学大学行政研究・研修センター長の本間政雄氏が「教育改革支援のためのSD活動」と題して講演を行った。大学の事務が量的に増加し、質的に高度化、多様化している現状を述べ、抱えている課題を提起した。官僚制の弊害があるなか、いかにして効率的な事務組織を構築するかといった組織的課題、事務職員の資質、能力向上を図るかといった人的課題をあげ、教員をサポートし、研究資金調達、社会への研究成果周知といったプロデュースのためにも職員の積極的関与は必要と述べた。
 そういった観点から、新たな専門職として「研究プロデューサー」、「カリキュラム・コーディネーター」を提言した。同大では、「幹部職員養成プログラム」を実施、現在他大学からも聴講生が参加している等、人事交流の重要性を強調した。
 第二日目は、八二件の大会発表が行われた。会場を分け、授業改善のための教育へのIT活用や支援環境について、日頃の取り組み、構想を発表した。
 第三日目には、テーマ別の自由討議として、FD、教育システム、初年次教育、学習スキル、学習支援、SD等をテーマに、分科会形式による参加型の討議が行われた。

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