平成20年9月 第2331号(9月17日)
■研究費の管理体制調査へ ガイドライン研修会
文部科学省では、去る九月十六日に開かれた「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン研修会」の中で、公的研究費の管理体制整備の状況、本年度の実施状況報告書の作成と提出の留意点などを説明した。
近年、度重なる研究費の不正利用が問題化した。これを受け文科省は、科学研究費補助金等公的な研究資金を受ける機関に対して、年に一回程度、研究費等の管理体制の調査を行うこととしている。
まず、文科省から昨年度の実施調査結果の解説があった。特に今年の対応に当たっては、「実効性のある体制や仕組みを整備するためには、研究現場で抱えている問題・課題の把握が最も重要」などと指摘した。
また、今年度からは、電子ファイルにて提出を行うこととなる。文科省ホームページから様式をダウンロードし、「府省共通研究開発管理システム(e―Rad)」からアップロードをする。
その後、新日本有限責任監査法人CSR推進部長の大久保和孝氏より「ガイドラインへの具体的対応」について解説があった。大久保氏は、文部科学省の研究費不正対策検討会委員など多数の公的役職を務める。同氏の講演のポイントを紹介する。
●一方的な研修は無意味
研修会を一方的にやっても、職員が理解したことにはならない。一方的な研修は、「対策はしている」と経営者に言い訳を与えているだけ。形式的に伝えるだけでは機能しない。異なる職種間における問題解決のための前向きなコミュニケーションを増やすべきである。
●コンプライアンスとは
社会の要請に応え、社会の環境変化を正しく捉えることが大事である。単なる「法令遵守」は職員の思考停止を招き、法令の背景は何かを自分で考えなくなる。環境変化を捉えるには、普段から様々なことに関心を持つ、職員一人ひとりのセンシティビティ(感受性)を高めることが大事である。
●研究者を守る
研究機関の最大の目的は、安心して「ここで働きたい」と思う仕組みを作ること。
研究費不正利用の対策は、研究者に面倒なお願いをすると思われがちだが、最終的には研究者を守ることにつながり、ひいては優秀な研究者の招聘にもつながる。
その後、東京大学か不正防止計画書の策定、東京理科大学からガバナンスと監査体制について事例が紹介されて終了した。