平成20年9月 第2331号(9月17日)
■「中長期的な大学教育の在り方」審議へ 鈴木文科大臣が中教審に諮問
中央教育審議会(山崎正和会長)は、去る九月十一日、文部科学省内の会議室で総会を開催した。総会には鈴木恒夫文科大臣をはじめ、副大臣、政務官の全員が出席して挨拶するとともに、鈴木大臣から山崎会長に「中長期的な大学教育の在り方について」の諮問が行われた。
その諮問理由は、次のとおり。(詳細な文科省の解説は2面に掲載)
我が国を取り巻く国内外の状況が急速に変化し、社会構造全体が大きな変革期を迎えている中、豊かな教養と深い専門性を身につけた人材の育成と、様々な社会的課題の解決への貢献等、大学に対する期待と要請は極めて大きくかつ多様となっている。
各大学では、それぞれの教育理念に基づいて、自らの個性・特色を明確化しつつ、教育活動の質の維持・向上に取り組んでいるものの、進学率の向上と学生のニーズの多様化、一八歳人口の減少、国境を越えた大学の教育活動の進展といった状況に伴い、個々の大学による対応にとどまらず、大学教育全体の在り方について見直さなければならない状況にある。
去る七月一日に閣議決定された「教育振興基本計画」は、現下の教育をめぐる課題と社会の変化の動向を踏まえ、「教育立国」の実現に向け、総合的かつ計画的に取り組むべき施策が示されている。その中では、計画期間中である平成二十年度から二十四年度までの五年間を「高等教育の転換と革新に向けた始動期間と位置づけ、中長期的な高等教育の在り方について検討し、結論を得ることが求められる」とされている。
以上のことから、我が国の大学教育の質を保証し、社会からの信頼の向上を図るため、大学教育の将来を見据えた中長期的な在り方について、国際的・歴史的に確立されてきた大学制度の本質を踏まえつつ、特に、次のような事項を中心に逐次検討していく必要がある。
(1)社会や学生からの多様なニーズに対応する大学制度及びその教育の在り方について
(2)グローバル化の進展の中での大学教育の在り方について
(3)人口減少期における我が国の大学の全体像について
また、同審議会に置かれ、廃止された「教育振興基本計画特別部会」に代わって「教育振興基本計画部会」の設置案が示され、了承された。この新たな部会では、去る七月一日に閣議決定された教育振興基本計画の円滑な実施に必要な検討を行い、意見を取りまとめることになる。
この部会の設置に当たり委員からは「教育振興基本計画に、“着実に実施する”との文言はあるものの、数値目標にまで踏み込んでいない。具体的な予算に結びつけられるような議論を」、「質の向上と財政は車の両輪である。質の向上を目指す施策の具体的目標をはっきり定め、その実現を図るべく財政的裏づけも固めたい」など多くの意見が出された。