平成20年7月 第2323号(7月9日)
■地域共創 ―地域の中の大学をめざして―<中>
地域が連携、教育支援
ゆうゆう24 学生に貢献の満足感
北海道医療大学 飛岡範至氏
今回の紙面では、「当別町青少年活動センターゆうゆう24」(北海道医療大学ボランティアセンター。以下「ゆうゆう24」)の活動に焦点を当て、取組のきっかけ、プロセス、学生への教育効果等を含めて紹介する。「ゆうゆう24」は、「勇」「優」「悠」など、色々な「ゆう」が重なり合い二十四時間サービスを提供することに由来する。平成十五年度特色GPに採択され、これを契機に地域社会との連携が進展された。
看護福祉学部(看護学科・臨床福祉学科)は九三年に設置されたが、この取組は、保健・医療・福祉の連携を目指し、災害地への救援活動、地域の施設への訪問診療や実習など社会との共生・協働をめざしてきた本学の福祉の精神(ミッション)を反映した。ミッションの達成のみならず、地域社会に積極的に受け入れられることで、地域の初等・中等教育の活性化にも重要な役割を果たしている。
《取組の概要》
教育理念に「社会の福祉への貢献」を掲げ、医療や福祉に従事する専門職業人の養成を目標としている。従来から地域貢献活動やボランティア活動が盛んだったが、一層充実して教育理念を実現していくため、二〇〇二年度に大学と地域住民が協同して「ボランティアセンター」を大学のある町内に設置、学生の地域ボランティア活動支援の拠点と体制を整備した。
これにより、ボランティア活動は、町内在宅障がい児一時預かりサービスの創設、小中学生の福祉教育との連携、大学の施設利用で知的障がい者の生涯教育に資する「オープンカレッジ」の定期的開催など、飛躍的に広がった。
このようにボランティア活動を、大学全体として授業の中に位置づけて(体験型授業)、地域と大学が連携して教育支援する体制をつくり出し、地域・大学連携教育を実践している点に大きな特色がある。
《取組の骨子》
@障がい児の家族支援サービス(レスパイトサービス)、A道内初の知的障がい者のためのオープンカレッジセミナーの開催、Bオープンカレッジ写真展の開催、C当別町「地域教育力活性化事業」および小中学生に対する福祉教育の取組、D福祉施設における行事に対するボランティア、E当別町母子通園センターにおけるボランティア、F当別町主催行事のボランティア依頼への対応、Gチャリティイベントの開催、H障がい者施設分野でのボランティア活動、I精神障がい者共同作業所でのボランティア活動と支援、J全身性要介護障がい者の自立生活支援のボランティア、K高齢者デイサービスでの傾聴ボランティア
《取組の教育的効果》
「ゆうゆう24」では、看護福祉学部臨床福祉学科における、臨床福祉概論・形態別介護論・臨床福祉専門演習II・卒業論文・社会資源開発論の科目(〇七年度)の中で体験型授業が行われ、次のような教育的効果が認められた。
@体験型授業を実施した後の履修生のボランティア参加状況が高くなっており、体験学習が与えた影響は大きかったと言える
A知的障がい者を対象としたオープンカレッジ事業の開催を通じ、学習の機会を保障するという活動と学習の介助としてのサポーターを経験することにより、学生はコミュニケーションのとりかたを学ぶとともに、障がい者理解の向上につなげることができた。
Bオープンカレッジ写真展は、学生自らが企画・立案しており、来訪した地域住民や福祉関連分野の人々に知的障がい者に対する教育支援の必要性の啓発を通して、コミュニケーション能力の向上や対人行動など、学生が社会に出て的確に対応していける専門職業人としての基本能力の形成に影響を与えた。
C当別町内の小中学生を対象とした福祉教育を通して、学校における福祉教育の現状について学ぶ機会を得た。卒業論文で「福祉教育の必要性」について取組む学生もおり、学童期からの福祉教育の必要性を改めて認識する機会となった。
Dチャリティイベントを通して、地域との連携・関わりを学ぶとともに、協同して地域づくりを行うことの意義を理解し、学生の地域福祉理解の向上に資することができた。
◇
看護福祉学部および〇二年の心理科学部の増設により、地域の関係機関が極めて有効なフィールドとなる教育研究の場が用意されたことが、このような取組みを想起させることに繋がったと考える。そして、何よりも地域で長く実践に関わった教員の就任が地域連携に果たした役割が大きい。ミッションがあっても、具現化するためには、その分野に精通した指導的役割を担う教員の存在が大変重要である。
当時の当別町には、特別養護老人ホームと介護支援センターを併設する「高齢者福祉センター」はあったが、障がい者施設の設置はなく、精神障がい者のための一〇名規模の「小規模作業所」が〇二年四月にようやく設置された状態であり、福祉施策が遅れていた。特に、在宅の障がい児(約六〇名)およびその家族を支援する福祉施策の充実が急がれていた。
このような背景から、大学が組織的に地域福祉のニーズを把握し、それに学生ボランティアが応えることにより、本学の教育目標である地域社会への貢献を実現するという点で地域と大学の理解が一致していたこと、そして何よりも学生自らが「地域や社会のことに関心を持ち、学生にも何かできることはないか」と考えたことが大きなきっかけとなった。
このような取組をスタート、進展させるに当って、教職員の存在は勿論であるが、多くの学生ボランティアによる地道な活動があり、今日に至っている。当初は、「学生に何ができる」「こんなもの作ってこのあとどうするんだ」という声も強かったが、少なくとも学生をはじめとする関係者は、当事者のために何かをしようとするとき、当事者は最大の支持者であるという信念のもとに行動していたようである。
設立当初のボランティア学生は約三三〇名であったが、現在は四五〇名程度にまで達している。このことは、学生が身をもって地域社会へ貢献することの満足感や重要な学習機会と認識していることの表れと考える。
(つづく)