平成20年7月 第2323号(7月9日)
■地球温暖化対策の協議会開催
基調講演「低酸素社会と環境教育」(元文部大臣 小杉隆氏)
“自然との共生”など環境教育を強調
日本私立大学協会(大沼 淳会長)は去る七月二日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において、一一七大学から一六二名が参加して地球温暖化対策を総合的に研究・協議する「地球温暖化対策に関する研究協議会」を開催した。基調講演では、小杉 隆元文部大臣・地球環境国際議員連盟会長代行・衆議院議員が「低炭素社会と環境教育」について講演したほか、小谷利恵文部科学省私学部私学行政課長補佐、阿部 治立教大学教授・持続可能な開発のための教育の一〇年推進会議代表理事、木邑隆保私立大学環境保全協議会顧問(元会長)・芝浦工業大学名誉教授らの解説、さらに、堤 良友(学)玉川学園環境部環境保全課長の発表などが行われ、大学の環境教育や環境保全活動に積極的に取り組んでいる同協会の方針が示された。
開会に当たり同協会の私立大学基本問題研究委員会小原芳明環境担当小委員長は「昨年十月に、全私学連合会は“二〇〇七年度を基点として二〇一二年度まで、CO2排出量を毎年度、前年比マイナス一%の削減努力をする”との環境自主行動計画の目標を掲げた。教育研究活動を活発化させることとCO2排出量抑制との調和をどう図るのか、難しい問題である。私学にとって厳しい状況下だが、今日は周辺課題等も含めて幅広く議論していただきたい」と挨拶した。
続いて同協会の小出秀文事務局長から「環境研究・技術の開発、環境保全、経営課題としての環境保全活動等が相俟って推進することが重要であり、そのマインドは自然との共生に根ざした日本型の新しい文明の創造から生まれる」との趣旨説明があった。
協議に入り、はじめに元文部大臣の小杉氏が「低炭素社会と環境教育」をテーマに基調講演を行った。
同氏は、地球温暖化のメカニズムを概説したほか、温暖化が世界に与える深刻な影響等を述べ、低炭素社会へ向けた取組みと中・長期目標、さらに技術革新や環境教育の在り方まで総括的に論じた上で、「私の提言」として、“環境を切り口に全ての政策を見直す、環境を義務教育の必修科目に、エネルギー国家としての自立を目指す”など五項目を提言した。
次に、文科省の小谷氏は「京都議定書目標達成計画と省エネ法等改正」について、同計画策定までの我が国の取組み、平成二十一年四月一日から施行される温暖化対策の基礎的な枠組を構築する「地球温暖化対策の推進に関する法律」や「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」の改正等について、各条文を詳細に解説した。
続いて、立教大学の阿部氏が「大学の環境教育と持続可能な開発のための教育(ESD)」と題して、今日、地球規模で起きている異変や国際的、国内的課題を列挙し、「このままでは社会は持続不可能である」と断じた。そして、持続可能とする“自然・社会・人間”に視点を置いた統合的な取組みの在り様を指摘した。また、生涯学習としての環境教育の内容、環境人材の重要性等を解説した。そのほか、大学におけるESDの取組みや高等教育のESDについて「教養教育に全体像」「地球市民としての価値観」「教員・学生にモチベーション」「初等・中等教育に対するナビゲーション」「国際通用性と世界との連携」等が重要であると解説した。
引き続き、木邑氏が「私立大学の環境保全活動」について、同氏が顧問を務める私立大学保全協議会の活動内容等を紹介した上で、「私立大学は、それぞれ建学の精神のもと校風を持っているはずであり、それぞれの独自色を表わす環境保全(教育)方式を創りたい」などと述べ、フェリス女学院大学の取組のDVDを紹介した後、「環境教育は現代の作法である。環境保全をうまく利用すれば大学の発展にもつながる」と締めくくった。
協議の最後に、玉川学園の堤氏から「玉川学園における環境への取組み」について、スライド等による発表があった。
同氏は、同学園の全人教育、自然の尊重、三位一体の教育、労作教育、二四時間の教育など一二の教育信条を紹介し、併せて環境に取り組む基本方針として、ク同学園の教育信条に則り環境教育を通して未来思考型の活動に取り組む、ケ環境関連の法律、規則、協定、国際的環境指導原則の要求事項を遵守するとともに自主基準を制定する、コ環境目的及び目標を定め、環境マネジメントシステムの継続的な改善を図る、サ同学園は、以下の項目について優先的に活動し、環境維持と汚染防止に取り組む。(A児童、生徒、学生への環境教育の実施、B各家庭での環境教育の展開に努める、C教職員、家庭、取引関係先を含めたゼロエミッション活動への挑戦、D同学園で購入する物品のグリーン調達)などを解説した。
スライドでは、幼稚部・丘めぐり、低学年・野菜の収穫、中学年・ごみ拾い、工学部・ビーチクリーンアップ・イン湘南、全学園・風車コンテストなどの様子を紹介した。
終わりに同氏は、「最大の環境破壊は“環境に無関心”である」と強調した。
それぞれの講演、解説ごとにフロアとの質疑応答も行われ、大学等の教職員を集めての初の協議会は全日程を終了した。