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平成20年6月 第2320号 (6月18日)

「学士課程教育」答申案を審議 教育振興基本計画で意見交換
  教育振興と基本計画の関連を明確に記述

 中央教育審議会大学分科会の制度・教育部会(部会長=郷 通子お茶の水女子大学学長)は、六月十二日文部科学省内の会議室において第九回会合を開き、教育振興基本計画をめぐる状況について意見交換するとともに、去る三月に同部会報告として大学分科会で了承された「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」以後の関係団体からのヒアリング等を踏まえた答申案が示された。答申案では、主に、中教審が答申した「教育振興基本計画について」において「社会の信頼に応える学士課程教育等を実現する」との方向が示されていることから、今後、同省が閣議決定を経て策定する同計画との関係を明確にした。

四氏からの“要望書”を支持

 当日は、はじめに文科省の「教育振興基本計画(案)」に関わる状況が説明された。四月の同計画(原案)取りまとめ以来、各省庁(主に財務省)と調整・協議中であり、中教審委員のほか各界からの意見等を踏まえ、単に数値目標を掲げるだけではなく、どのような具体的目標をどう実現させていくのかなど、施策をより具体的に明記したほか、私学助成の振興、留学生三〇万人計画に係る受入体制などについての詳細な記述が追加された。
 なお、大学分科会委員でもある安西祐一郎慶應義塾長、郷 通子お茶の水女子大学学長、金子元久東京大学大学院教育学研究科長、木村 孟大学評価・学位授与機構長の四氏の連名による同計画策定に向けた要望書“「教育亡国」回避のために投資の断行を―教育振興基本計画の策定に向けた緊急声明―”が郷部会長から報告された。
 各委員からは「四名ではなく大学分科会としての要望としたい」「投資と成果は比例するものと思うが、財務省が言うように単に“結果を示せ”と言うような議論はいかがなものか」「教育投資の拡大を社会に納得してもらうことも必要である」「教育は国家戦略の一環という視点が必要である」などといった意見が出され、要望書は各委員から支持を受けた。
 なお、四氏は機会をとらえて各方面に要望していくとした。

教育の多様性など論議

 「学士課程教育」答申案では、「はじめに」の前文で、教育振興基本計画との関係について、『本年四月の同計画(答申)は、教育基本計画第十七条に基づき、政府が策定する同計画の在り方として、今後おおむね一〇年先を見通した教育の目指すべき姿と、平成二十年度から二十四年度までの五年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策について示すことを趣旨としている。同計画答申においては、「社会の信頼に応える学士課程教育等を実現する」等の方向性が示されているが、今般の答申は、それを具現化していく上で必要な取組を示すものである。(同計画の策定について進展があれば要修正。以下、同計画に関わる記述部分は同様)』と書き加えた。
 次に、第一章「グローバル化、ユニバーサル段階等をめぐる基本認識」では、《過大とは言えない大学教育の規模》の高等教育の学生像全般にわたる論議に関連して、(注)として、『中教審の関係委員からの「大学教育の転換と革新」と題する意見書が同計画答申に参考資料として位置づけられており、“中長期的な高等教育の在り方について検討し、結論を得ること”について検討する上でも大いに参考になる』などと加えた。
 また、第二章「改革の基本方向」では、国による支援・取組における《財政支援の強化とアカウンタビリティの徹底》の国としての枠組みづくりを進めるに当って、(注)として、『同計画答申は、今後一〇年間を通じて目指すべき教育投資の方向として、特に高等教育について“家計負担を中心とした私費負担が大きい”とした上で、「世界最高水準の教育研究環境の実現を念頭に置きつつ、教育投資の充実を図る」ことの必要性を強調している』と書き加えた。
 第三章「改革の具体的な方策」では、第四節「教職員の職能開発」において、『教職員が、学士課程教育の実践に直接又は間接に携わり、相互に連携協力して管理運営等を担っていることと、ユニバーサル段階において多様な学生が大学へ入学してくる中、教学経営の在り方及びそれを担う教職員の在り方も大きな変化を迫られることになるが、我が国の現状は旧態依然としたままであり、その改革に向けた取組は急務である』と書き添えた。
 これに対し、委員からは「『国による支援・取組〜大学の自主性・自律性を尊重した多角的支援の飛躍的充実を〜』のところで教育の多様性の確保が追記されているが、大変重要な問題であり、もっと大きく扱ってもよいのではないか」「第三章の学位授与の箇所で『学位に付記する専攻名称の在り方』についての記述があるが、本答申では問題点を指摘するのみでよいのではないか」など、多くの意見が出され、修文については郷部会長に一任された。
 今後、この答申案は大学分科会の審議・了承を得て中教審(総会)として最終答申となる予定である。

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