平成20年5月 第2314号 (5月7日)
■日短協との連名で私大の倫理綱領経営指針成文化 私大団連
去る四月十八日開催の日本私立大学団体連合会(安西祐一郎会長)の総会において決定した「私立大学経営倫理綱領」(案)及び「私立大学の経営に関する指針」(案)については、日本私立短期大学協会との連名で成文化されるものであったが、このほど同協会理事会でも承認されたことから、各団体加盟校への正式通知がとられることになった。
【私立大学経営倫理綱領】
日本私立大学団体連合会
日本私立短期大学協会
私立大学がわが国の高等教育において果たしている役割の重要性は、広く社会の認めるところであり、そのことが私立大学の財政を含む運営全般に対する関心をも呼び起こし、常に社会の注目を集めている。
このような社会的責務の重大さに鑑み、私立大学を設置する学校法人は、教育研究及び社会貢献への一層の充実向上を図るよう努力することはもちろん、その経営について社会の疑惑や批判を受けることがあってはならない。
日本私立大学団体連合会及び日本私立短期大学協会は、社会の負託に応えるため、教育基本法、学校教育法及び私立学校法の精神を体してここに私立大学経営倫理綱領を定め、その意思表示とすることとした。
一、大学の使命
大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培い、深く真理を探究して、新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供する機関であり、教育研究を通して、そこに学ぶ学生の人格形成に資し、世界の平和と人類の福祉に貢献し、人類の学問的・文化的遺産を次世代に継承するという極めて公共性の高い使命を負っている。この公共性の高い使命達成のため学問の自由と大学の自治が保障されている。大学関係者はこのことを強く意識し、大学の使命達成のために不断に努力しなければならない。
二、私立大学の自主性
学校法人が私立大学の使命とその設置理念を達成させるためには、その性格上経営の独自性・自主性・自律性が不可欠である。この独自性・自主性・自律性は、私立大学経営に対する国家・社会の強い信頼を背景としてはじめて得られるものである。
そのため学校法人は、経営体として自らが持っている倫理性・社会性・公共性を担保するにふさわしい組織を整理し、その厳正な運営に努めなければならない。
三、私立大学の公共性
私立大学を設置する学校法人の経営は、常に大学の使命達成に向けて行われるものである。すべての収入は、目的事業たる教育研究の遂行に使用されるべきものである。殊にその資産は、いかなる私人にも帰属しないという公共財的性格を持っている。
学校法人の理事者は、大学に課せられた極めて公共性の高い使命とその財政基盤の公的・社会的性格、資産の公共財的性格に鑑み、倫理性・社会性の高い経営に徹しなければならない。
以上
【私立大学の経営に関する指針】
日本私立大学団体連合会
日本私立短期大学協会
この「指針」は、「私立大学経営倫理綱領」の精神を実現するために、学校法人の経営のあり方について必要な基本的事項を示すものである。
各学校法人は、この「指針」を尊重し、学校法人の適正な運営を図るものとする。
I. 財政の運営について
1. 資金の調達
学校法人の資金源泉には、学生納付金、公的補助金、寄付金、収益事業収益、資産運用収益、研究等に対する外部資金の受入れなどがある。その資金については、本来学校法人の自主的判断に基づいて設定、受入れ、調達等が決定されるべきものであるが、極めて公共性の高い大学の経営主体である学校法人は、その性格から厳しい制約が伴うことを自覚しなければならない。殊に、無理な資金調達はともすれば公共性・社会性を逸脱する惧れのあることを留意すべきである。
1)学生納付金は、それぞれの大学の事業計画に基づく教育研究等の諸活動を実現させるための主要な資金として自主的に決定し、徴収するものであるが、その金額は、公共的性格に鑑みて設定されねばならない。なお、できるだけ他の資金源泉の確保・増額に努める必要がある。
2)寄付金・学部資金の受入れ及び収益事業の経営に当たっては、学校法人の倫理性・公共性の確保の観点から、その適否を判断し、決定しなければならない。
3)学校法人における資産運用は資金調達の有力な手段であり、それぞれの学校法人の状況に応じて、その積極的な運用が図られる必要がある。その場合、以下に指摘する事柄について十分に配慮しなければならない。
@学校法人の持つ倫理性・公共性の観点から、その運用方法について配慮すること
Aそれぞれの資産の性格に応じた適正な方法により行われること
B資産の安全性について配慮すること
C意思決定が適正な手続きを経て行われ、監査等が制度的に機能していること
2. 資金の支出
学校法人の資金は、学校法人の目的事業たる教育研究の遂行のために使用されるべきものであり、その資金の支出に当たっては、当然のことながら、所定の手続きと法人の意思決定機関の決定なしに行われることがあってはならない。
また、それぞれの学校法人が、現在及び将来における教育研究の充実・発展のための計画を策定する場合は、その必要度と資金調達能力との均衡を配慮すべきである。
3. 経理の処理
資金の調達及び支出については、学校法人会計基準に基づき適正に処理されなければならない。
4. 経理の開示
学校法人の経理の開示については、学校法人が公共性の高い法人としての説明責任を果たすため、財産目録、貸借対照表、収支計算書及び事業報告書を各事務所に備えて置き、在学する者その他の利害関係者に対して、これを閲覧に供する方法により行わなければならない。
II. 学校法人の組織運営について
「私立大学経営倫理綱領」の精神を具体化するために、学校法人の意思決定及び業務執行の組織について、私立学校法の趣旨に則り、以下の諸点に留意しなければならない。
1. 役員及び役員会等
@理事、監事、評議員として、その本来の機能を十分に果たし得る人材が適正に選出されなければならない
A理事会、監事、評議員会は、それぞれの機能が十分に発揮される状態が確保されなければならない
2. 諸規程の整備
学校法人は、財政運営、組織運営について必要な規程を整備し、「指針」の実効性の確保に努めなければならない。
3. 内部統制組織等
学校法人の業務遂行に当たっては、内部統制組織、監査制度、予算制度等が整備され機能していなければならない。以上