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平成20年3月 第2307号 (3月5日)

社会人基礎力フォーラム開く 大賞は山梨学院大、準大賞は愛知学泉大に

 「社会人基礎力」を最も磨いたチームはどこか―経済産業省は、去る二月二十九日、東京・有楽町のよみうりホールにおいて、「社会人基礎力フォーラム2008」を開催、全国から満席となる関係者が集まった。七大学による取り組みの発表の結果、大賞に山梨学院大学、準大賞に愛知学泉大学が選ばれた。

 経済産業省が発表した「社会人基礎力」は、多様な人と仕事を行っていく上で必要な基礎能力のことで、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」などがある。このたびは、同省がモデル事業として採択した七大学の取り組みについて、学生自身が困難を乗り越えて身につけた基礎力を発表し、来場者の評価を受けるもの。来場者の投票によって、最も成長したチームを「大賞」として選ぶ。
 まず、基調講演に、経済産業省産業人材政策担当参事官の守本憲弘氏が演台に立ち、社会人基礎力の必要性とその背景を紹介。社会人基礎力育成の重要ポイントの一つは評価であり、経験を通して「何ができるようになったのか」を書かせることで、成長を実感させることが大事であると述べた。
 続いてのプレゼンテーションでは、各大学について、教職員からのプロジェクト概要が説明された後、学生からの体験談、協力企業担当者からの感想の流れで行われた。投票は、プレゼンテーションやプロジェクト自体ではなく、学生が何を体験し、どのように成長したかを重要視する。大賞と準大賞の取り組みは次の通りとなった。
 ▽大賞:山梨学院大学―学生が山梨ブランドの企画提案を行い、地元企業との協力による商品開発・販売実践に取り組んだ。ほうとうのデザート『でざほ』を開発したチームが発表、商品化と販売の困難さを語るとともに、「創ることの楽しさ」を学んだと発表した。
 ▽準大賞:愛知学泉大学―地域のコンビニエンスストアとの産学連携で「午後力弁当」の開発を行った家政学部管理栄養士専攻チームが発表。専門性を活かした弁当開発のエピソードを語った。チームは、「プロジェクトを進めていくことで、自分の足りない部分を見つめることができた」と述べた。
 その他、宮城大学の「ドラッグストアの売り場づくり」では、日用雑貨の販売促進について、レイアウトやPOPを学生の目線で薬局に提案した事例を発表。初めは受身であった学生たちが、取り組みを進めていくうちに、だんだん能動的に活動する様子を語った。
 また、東京電機大学では、携帯電話による出退勤管理システムについて、企業からの依頼で試作した事例を発表。大学の課題とは違い、メンバーによって作業量が異なるため、チームワークが大事であることに気付いた事などを述べた。
 武蔵大学では、「情報関連企業に対する文系学生からの偏見を取り除き、採用におけるよりよいコミュニケーション方法」を検討する、三学部横断型のゼミナール・プロジェクトを行った。異なる学部による連携不足や情報、作業の偏りなどが問題となったが、インターネットを利用して共有することで乗り越えたエピソードを語った。
 中京大学では、コンビニエンスストアの「スチーマー商品(肉まんなど)」の新提案を行った。プロジェクトでは、学生の取り組みの姿勢について企業から厳しく指摘された。しかし、それを機に積極的に周囲との信頼関係を築き、最後には企業に「同志」として認められたことを述べた。
 最後に、大阪大学大学院では、研究への学生の動機付けを「コーチング」と呼ばれる手法で解決する試みを行った。「研究が面白くない」と言う学生は何故なのかを分析。研究が社会に与える影響を調べさせ、責任とやりがいを自覚させることで主体性を向上させた。
 司会を務めた羽根拓也(株)アクティブラーニング代表取締役は、「全ての事例において共通するのは、目標に対して受身ではなく能動的に関わるようになったときに、高い成長を示すこと。「社会人基礎力」という言葉が登場したことにより、自分自身の中の能力が意識し易くなったのでは」と分析した。
 続いて、川上真史(株)ワトソンワイアットコンサルタントが、「困難を軽やかに乗り越えるために必要な“仕事を楽しめる力”」と題した講演を行った。これからの企業の人材マネジメントは、「仕事が興味深く自分の成長に繋がる」と実感できるような業務設計が必要であり、こうした実感を高めるために、全ての経験に対して「成果が生まれていること」を認知させ、成功した喜びを感じさせることが大事だと述べた。
 その後の表彰式では、会場からの拍手喝采の中、受賞した大学の学生たちが喜びを分かち合った。

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