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平成19年1月 第2257号(1月1日) 2007年新春特別号

2007年 新春座談会
  「全入時代の教育と私学経営 高度化と多様化への対応」
  学校法人制度を堅持し私学振興を 建学の精神の下、特色ある教育を展開

学校法人は永続性を担保する

 その永続性を担保できるような形態を認めたのが学校法人なのです。それが見事にうまくできている。それに税法を伴う。だから日本では大学全体の七五%を超えるだけの私立学校ができたわけです。そしてほとんど創立者の個人財産を寄附してやっているわけです。教育の熱意から寄附されてできている。そういうもので見事にこれだけ成功した国家というのは世界中にない。にもかかわらず、それを何か間違っているように思われているとしたら極めて心外です。
 したがって、設置形態が異なっている国立の学校というのは何をすべきなのか。地方公共団体がやるべき学校というのは何をすべきなのか。学校法人でやるとすれば、どういうふうにやっていくのか。その基本を明確にする必要があると思います。例えばこれからの社会が向かっている方向は拡大社会なのか、縮小均衡社会に向かっていくのか、それに向けてはどういう教育なり、どういう学校形態をとるべきなのかというようなことを根本的に議論すべきではないかと考えます。
 極端な表現になりますが、徹頭徹尾、規制緩和するのだったら、国立も公立も全部やめて、全部私立にして、江戸時代に戻すべきです。全部寺子屋にするのです。全部適塾のような私塾にするのです。
 しかし、明治以降せっかく築いてきた日本の世界に冠たる学校制度の優れた点を見直して原点に立った改善が必要だと思います。
 中原 確かにそうですね。私もまったく同感です。今、国は「官から民へ」と言い、改革を推し進めていますけれども、高等教育については昔から民である私学が担ってきたのです。お話にあったように、約七五%以上を担うわけですから、ずっと民なのです。
 福井 戦後の長い間に学校法人の制度もずいぶん変化、進化をしてきたのだと思います。それは私たちの先達が、私学振興への情熱から苦労を重ね、ある時には辛酸をなめて築き上げてきたものです。その結果、社会にもだんだんと受け入れられ定着し、それだからこそ今現在、唯一私立大学を設置できる設置母体として法的にも裏づけられているのだと思うのです。事実、一〇〇%完全なものではないかもしれませんが、私学の公共性、永続性、自主性を維持する極めて優れた制度であり、これによってわが国の文化、土壌に根づいて、私立大学はこれまでの隆盛が保たれてきたものと思います。それにもかかわらず、一方で評価とかチェックなどが言われる時に、この制度の優れた点、あるいは今後の発展への課題などの十分な検証、検討なしに、規制緩和あるいは市場原理などの理論で、突然に新たな設置母体を認めるようになったことは誠に残念です。昨年もそのような話がしばしば聞かれましたが、私たちはこのような学校法人の危機ともいえる中で、何としてもこの制度の長所を自分たちもよく確認し、社会にも広く周知するために、一段と努力を続けなければいけないのではないでしょうか。学校法人というものをどうすれば広く知ってもらえるかということを。
 学校法人は既に過去の産物みたいな考えで議論されるとすれば、大変残念に思います。
 黒田 学校法人は今まで言われていた学校法人の形態から大きく変わろうとしています。と言いますのは、学校法人というのは何のために戦後つくられたかということを真剣にもう一回問い直す時期にきているのではないかと思うのです。これは文部科学省に対してもそういうことを私学団体として訴えていかなければならないだろうと思います。学校法人が、唯一民間が参入できる機関として生まれた。株式会社を排除した一つの理由としては、利益を追求するものではないということが第一にありますし、また、永続性という、子どもを預かる以上は卒業した子どもたちが卒業した大学がなくなったらかわいそうじゃないかと。だから、しっかり永続性というものを担保しましょうということですね。
 もう一つは、教育をやる以上は公共性を持つべきであるという、そういう観点から学校法人制度というのがつくられて、ほかの公益法人よりもまして税法上でも優遇される。そういう法人として認められてきた。それが今規制改革によってどんどん崩されてきている
 また、先般、私立学校法が改正され、時代の急速な変化に対応できるよう、理事会機能の強化や監事制度の改革等がなされました。しかし多くの私学を見ると、既に国立大学には無い、悪しき国立大学の教授会組織、運営手法が幅を利かせているところが少なくありません。このことは、時代の先取りを図ろうとする経営者、理事会にとっては、足かせとなっています。早く私立学校法の改正の精神を踏まえ改善してほしいものですね。
 廣川 平成十七年五月、文部科学省が「経営困難な学校法人への対応について」という文書を出しました。それは、私立大学の経営はあくまで学校法人が自らの責任で行うものであるが、文部科学省としては、私立学校の自主性を尊重しつつ、学校法人からの相談に応じ、経営分析や指導・助言等を通して、主体的な改善努力を促す。
 そして、学校法人が経営困難に陥らないために、例えば経営状況について日本私立学校振興・共済事業団の「今日の私学財政」などを参考に把握に努めなさい。そして、どうしても改善ができない場合の対応として学生転学支援プログラムが示されました。

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