平成18年9月 第2246号(9月20日)
■高等教育局概算要求
現代GP対前年度予算額の1.5倍の70億円
国公私大を通じた 競争的資金が倍増 グローバルCOEプログラム231億円など
八月末に財務省に提出した平成十九年度文部科学省概算要求のうち、(1)大学教育改革支援の競争的資金、(2)国立大学・私立大学等への機関補助、さらに(3)個人的補助の奨学金支援・留学生支援など高等教育局の主要事項について、九月八日、日本私立大学団体連合会は、高等教育局の小松親次郎高等教育企画課長と中岡司大学振興課長等の担当官を招き説明を聞いた。そのうち、(1)と(3)について掲載する。((2)は前々号に掲載)
国公私立大学を通じた大学教育改革の支援
大学教育改革の取組が一層促進されるよう、各大学が取り組む教育プロジェクトの中から、国公私立大学を通じた競争原理に基づいて優れた取組を選定し、重点的な財政支援を行うことや、情報提供をすることによって高等教育の更なる活性化を図る。各大学も各種プログラムのねらいを的確につかみ、工夫次第で活性化へ向けた展開が可能となるものである。
総額で九七二億円(対前年度四〇一億円増)である。
一、課程に応じた教育内容・方法の高度化・豊富化の充実
○特色ある大学教育支援プログラム〈特色GP〉:三四億七七〇〇万円(対前年度同額)=学位を与える各課程(学士・短期大学士)に応じた教育内容・方法等の高度化・豊富化に資する特色ある優れた取組を支援する。
二、現代的課題に対応できる人材養成と大学の多様な機能の展開
○現代的教育ニーズ取組支援プログラム〈現代GP〉:七〇億三四〇〇万円(対前年度二四億四四〇〇万円増)=各種審議会からの提言等を踏まえ、社会的要請の強い政策課題に対応した優れた取組を支援するもので、対前年度一・五倍強の予算を要望している。十九年度の公募テーマは、地域活性化、知的財産関連、環境教育、キャリア教育等を予定している。
○大学教育の国際化推進プログラム:二八億一七〇〇万円(対前年度九億一七〇〇万円増)=海外の大学と連携した教育活動や、大学等が行う教職員等の海外派遣の優れた取組を支援する。
(1)長期海外留学支援:四億八二〇〇万円(海外の大学院等の学位取得などを目的とした学生等の海外派遣の取組を支援する)、
(2)海外先進教育研究実践支援:一二億一〇〇〇万円(教職員を海外の大学等に派遣し、高等教育の国際化を図る取組を支援する)、
(3)先略的国際連携支援:五億二四〇〇万円(海外の大学と連携し、総合的な国際教育活動の取組を支援するもので、十九年度新規公募はしない)、
(4)先端的国際連携支援〈新規〉:六億円(海外の複数大学等と連携し、三大学以上のコンソーシアムを組織するなどし、カリキュラムの共同開発、タブルディグリーの開発等を支援する)
○社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム〈新規〉:四八億円=大学等の教育研究資源を活用して、地域等(商工会等)と連携しながら社会人(ニート等含む)がまとまったスキルを身につけるなど学び直しニーズに対応した教育プログラムを展開する優れた取組を支援する。
○新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム〈新規・仮称〉:四五億八八〇〇万円=各大学等が実施する新たな社会的ニーズに対応した優れた総合的な学生支援(厚生補導等)の取組を支援する。
三、社会の要請に応える専門職業人養成の推進
○法科大学院等専門職大学院教育推進プログラム:一九億二五〇〇万円(対前年度三億五〇〇万円増)=法務、経営管理、会計等の各分野の専門職大学院において、関係する団体等との連携により、先導的な教育内容・方法について開発・充実等を図る優れた取組を支援する。
○資質の高い教員養成推進プログラム:一六億七五〇〇万円(対前年度七億五二〇〇万円増)=大学の教職課程において、教科指導や生徒指導等に関する専門性と実践的な指導力を持った教員養成や、学校現場での緊急課題に応えるための教員養成の取組(例えば、昨今注目されている理数教育での生徒指導など)を支援する。
四、世界最高水準の卓越した教育研究拠点形成と大学院教育の抜本的強化
○グローバルCOEプログラム〈新規〉:二三〇億八七〇〇万円=「二十一世紀COEプログラム」の後継事業であり、世界的な卓越した教育研究拠点形成をより重点的に支援する。(博士課程後期からポスドク段階が視野)
○大学院教育実質化推進プログラム〈新規〉:一〇四億三四〇〇万円=「魅力ある大学院教育イニシアティブ」の後継事業であり、産業界をはじめ社会の様々な分野で幅広く活躍する高度人材養成のため、大学院(修士課程後半から博士課程が視野)における優れた組織的・体系的な教育の取組を支援する。
なお、「二十一世紀COEプログラム」と「魅力ある大学院教育イニシアティブ」については新規公募はせず、継続支援となる。
五、地域医療、がん等に関わる医療人材養成機能の強化
○地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム:二四億五三〇〇万円(対前年度一一億六〇〇〇万円増)=十九年度新規公募のテーマ(予定)は、地域医療への貢献を志す医師の養成、女性医師・看護師の臨床現場定着及び復帰支援、臨床研究・研究支援人材の養成、新興・再興感染症に対応する質の高い医療人養成など。
○がんプロフェッショナル養成プラン〈新規〉:四〇億円=新たながん治療体制の構築に向け、高度な知識・技術を持つがん専門医師及びがんに携わるコメディカル等、がんに特化した医療人養成を行うため、横断的な教育プログラムの構築と実施、実地修練を支援するシステムの整備等を行う大学(大学院、大学病院)の取組を推進する。
六、産学連携による高度人材育成の充実
知識基盤社会を多様に支える高度で知的な素養のある人材を育成するため、産学連携による高度な人材育成を推進する。
○派遣型高度人材育成協同プラン:三億七一〇〇万円(対前年度一億二四〇〇万円増)=大学院生を対象に、企業現場等の実践的環境を活用した質の高い長期インターンシップの開発・実施を支援する。
○先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム:一〇億五〇〇〇万円(対前年度四億二〇〇〇万円増)=社会情勢の変化等に先見性をもって柔軟に対処し、企業等において先導的役割を担う人材の育成拠点形成を支援する。
○ものづくり技術者育成支援事業〈新規〉:八億円=地域や産業界と連携した実験・実習と講義の有機的な組合せによる教育プログラムの開発・実施を通じ、ものづくり分野を革新させる高度な知識及び技術を併せ持ったものづくり技術者の育成を支援する。
○サービス・イノベーション人材育成推進プログラム〈新規〉:四億五〇〇〇万円=社会科学、自然科学の融合による新たな知識の体系化等を通じた教育モデルを構築し、サービスに関して高いレベルの専門性(例えば観光関係、IT関係、福祉関係など)を持ってイノベーションを創出し得る人材育成を支援する。
奨学金事業の充実
教育の機会均等の確保の観点から、意欲と能力がありながら経済的理由により修学に困難のある学生等が安心して勉学に励めるよう奨学金事業の健全性を確保しつつ、更なる充実を図る:事業費総額八五七四億円(対前年度五七五億円増)=日本学生支援機構奨学金事業/貸与人員増(無利子四七・四万人〈一・三万人増〉、有利子六七・七万人〈四・六万人増〉)、貸与月額増(無利子一〇〇〇円)、法科大学院の学生の奨学金制度(八三四四人〈九七五人増〉)、海外留学希望者への貸与制度(有利子三四六一人〈三二九人増〉)、入学時等の需要に対応した奨学金(有利子一時金五万人)。
留学生交流の推進
留学生の質の確保及び受入れ支援体制の整備・充実や相互交流を重視した日本人学生の海外留学等を支援する:四四一億一七〇〇万円(二八億六六〇〇万円増)=(1)国費外国人留学生受入れ:二四八億二〇〇万円(受入れ総数一万二五五四人〈新規七〇〇人〉)、(2)私費外国人留学生等への援助等:一三六億一〇〇〇万円(学習奨励費〈大学・専門学校等一万一五五〇人、二〇〇人増等、短期留学推進制度一七六〇人、一六〇人増〉)、(3)日本人学生に対する海外留学支援の充実:一〇億六〇〇万円(長期海外留学支援一八六人、六六人増、短期留学推進制度七二〇人、五五人増)、(4)留学生に対する教育・研究指導の充実等:四七億円など。