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研究成果等の刊行

No.36(2009.08)

「高等教育の新しい側面 ― IRの役割と期待」

講演者:山田 礼子、沖  清豪、鳥居 朋子、森  利枝

はじめに

私学高等教育研究所主幹 瀧澤 博三

 平成20年8月1日に行われた私学高等教育研究所主催の公開研究会では、最近関心の高まっているIR(Institutional Research)の問題をテーマに取り上げました。平成16年に認証評価制度が取り入れられて以来、すでに多くの大学・短大が認証評価を受け、そのプロセスを通じて自らの現状を統計的に捉え、目に見える資料とすることの重要性が認識されるようになったと思います。しかし、IRはもちろん第三者評価のためだけのものではなく、大学自体の変化と深く関わって、大学の経営にとって欠かすことのできない課題になっています。
 今日の大学の変化の中で最も重要なことの1つは、教学も含め大学の運営全般についてマネジメントの考え方が浸透しつつあることではないでしょうか。目標を定め、目標に向けての実行計画を立て、成果を評価して改善につなげる。そこで必要なことは、組織としての全体的視野と目標に向けての戦略性です。その基盤として不可欠なのが、現状についての統計的、客観的把握と問題点の分析であり、そこで期待されるのがIR部門の活動です。これまで日本の大学では、教育は個々の教員の仕事であるとする考え方が根強く残り、教育の現状を組織的・客観的に捉えようとする努力は十分とは言えなかったと思います。
 今回の公開研究会では、早くからIRの重要性を指摘し、アメリカ等諸外国の調査にも取り組んでこられた同志社大学の山田礼子教授を中心に、早稲田大学の沖 清豪准教授、大学評価・学位授与機構の森 利枝准教授、鹿児島大学の鳥居朋子准教授の4先生に講師をお願いしました。それぞれにこれまで積み上げてこられた調査・研究の成果をもとに、IRの意義・役割、組織運営のありかた、諸外国におけるIR活動の状況等についてお話いただきました。
 今年は中教審の大学分科会で「中長期的な大学教育のあり方」の審議が始まり、すでに6月には第一次報告が出されましたが、「公的な質保証システムの検討」はその最重要課題として取り上げられています。大学や関係機関の中でも質保証のあり方の議論は、一段と高まってくるでしょう。関連してIRは、1つの焦点になってくるかも知れません。
 この冊子は、第37回公開研究会の記録をまとめたものですが、IRへの理解と前進の一歩として役立てて頂ければ幸いです。

  1. 山田 礼子氏(同志社大学社会学部教授 教育開発センター所長)
    【講演】「大学マネジメントを支援するIRの役割と機能」(PDF形式)
  2. 沖  清豪氏(早稲田大学 文学学術院 准教授)
    【講演】「アメリカ高等教育機関におけるIRの機能と担当者の養成:二大学の事例から」(PDF形式)
  3. 鳥居 朋子氏(鹿児島大学 教育学部 准教授)
    【講演】「豪州高等教育機関のIRと教育改善:シドニー大学とメルボルン大学の実践」(PDF形式)
  4. 森  利枝氏(大学評価・学位授与機構 学位審査研究部 准教授)
    【講演】「需要からのIR-日本での取り組みへ」(PDF形式)
  5. 白川 優治氏(千葉大学 普遍教育センター 助教)
    【コメント】「IRの役割と期待-第37回公開研究会の議論から」(HTML形式)

*** 「関連資料」部分等は割愛しました。 ***