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教育学術オンライン

平成26年8月 第2576号(8月27日)

大学は往く
 新しい学園像を求めて 〈106〉
 札幌学院大学
 学生に選ばれる大学目指す
 面倒見の良さ充実の奨学金「教養力」を身に付ける

 北海道の産業と文化、福祉の発展に貢献することを大学の使命としてきた。札幌学院大学(鶴丸俊明学長、北海道江別市)の教育理念は、「自律」「人権」「共生」「協働」である。終戦の翌年の1946年に札幌文科専門学院として創立されて以来、豊かな人間性と専門的な応用力を兼ね備えた人材を社会に送り出してきた。現在、経営・経済・人文・法・社会情報の5学部からなる人文系の総合大学に。学生思いの面倒見の良さ、充実した奨学金制度、資格修得を支援する就職力が特色である。ソチ冬季五輪に在学生2人と卒業生1人の3人が出場するなど大学スポーツや、教職員と学生が一体となって地域貢献にも力を入れる。「大学の学びは、教養教育を土台とした専門教育から成ります。学生には、考える力、主体性、読解力、表現力を身につけさせたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからなどを聞いた。
(文中敬称略)

教育理念 自律、人権、共生、協働

 JR札幌駅から函館本線で約15分という札幌近郊に札幌学院大学はある。雄大な森林が残され、様々な動植物が観察できる野幌森林公園に隣接。キャンパス内も木々が生い茂り、緑に囲まれている。いかにも北海道の大学というイメージ。
 札幌学院大の淵源である札幌文科専門学院は、1955年まで、校舎は札幌市の中島公園内にあった。学長の鶴丸が、前身の札幌文科専門学院について語る。
 「戦後の混乱と生活苦の中、若者の飢餓にも似た学ぶ意欲に応えようと設立。『学の自由』『独創的研鑚』『個性の尊重』という建学の精神は、戦後の社会復興を担う新指導者の育成を目指そうとした学園創設者たちの志でもあり、いまも引き継がれています」
 1950年、札幌短期大学が開学。68年、札幌商科大学(商学部商学科)が開学。77年、札幌商科大学に人文学部(人間科学科、英語英米文学科)、商学部第2部を設置。札幌短期大学が学生募集を停止。
 84年、札幌商科大学を札幌学院大学に改称、法学部(法律学科)を設置。91年、社会情報学部(社会情報学科)、経済学部(経済学科)設置。2001年、人文学部臨床心理学科を設置。
 06年、人文学部にこども発達学科を設置。09年、商学部を改組し、経営学部(経営学科、会計ファイナンス学科)を設置。14年、法学部と経済学部が連携、新教育課程で「就業力」を育成することになった。
 現在、5学部に3054人の学生が学ぶ。出身地別では北海道内が約9割で、「就職でも東京に行くのは少なく地元志向です」。男女比は、男子が72%、女子が28%で、「女子を、もっと増やしたい」と話す。
 鶴丸が大学の学びを語る。「学士力を身につけるため教養科目と専門科目があります。教養科目は、基礎科目群、人文・社会・健康・自然科目群、キャリア・総合科目群からなり、学部の専門教育に入る前に、現代社会を豊かに生きるための教養力を身につけます。本学は、この教養教育を重視しています」
 各学部の学び。経営学部。「『現場で学ぶ、現場から学ぶ』を学究のスタンスとして、『社会人としての生命力』の基礎を養い、企業と地域社会の即戦力として活躍できる人材、現在の地域社会において必要とされている人材を育成します」
 経済学部。「人材育成教育、教養教育、人間教育に係わる教育目標を掲げ、教育を展開しています。国際的視野と地域視点を持った人材、国際化を意識しながら身近な北海道経済をどうすべきかを考えることのできる学生を育成します」
 人文学部。「常に進取の気性に富み、開拓者精神をもって今も挑戦し続けています。今年度から、小学校教諭を養成するこども発達学科に保育士資格を取得する教育課程を設置、教員免許など様々な資格を取得できます」
 法学部。「アドバンスト(法律専門職)コースなど3コース。公務員試験対策講座を開講、2014年度採用試験には、33名合格。4年在籍者総数の23.6%になります。警察官は北海道警察を含め13名が合格しました」
 社会情報学部。“社会情報”に関わることを総合的に学ぶ。インターネット社会において情報を効果的に伝える技術を身につける。14年、学生募集を停止した。
 面倒見のよい大学について。学習支援室は、単位の取り方、履修のしかたから授業の疑問まで、学生1人ひとりのやる気を手厚く支援。イングリッシュラウンジ(外国人教員が常駐して気軽に英語が喋れる場で、語学力強化にもつながる)機能を包含した学生サポートサンターがまもなく設置されます」
 オフィスアワーは、教員が学生の質問や相談に応じる時間帯。「教員は、その間は必ず研究室に在室し、学業の質問や進路、人間関係など学生生活全般について助言します」
 学生の学ぶ意欲と向上心を支える入試制度がある。「本学入学までの間に指定の資格を取得した新入生は、入学金などが免除されます。英語英米文学科では英検1級・準1級取得者、会計ファイナンス学科では日商簿記1級取得者・全経簿記上級取得者などがそうです」
 学費は開学以来、低く抑えてきた。そして、独自の奨学金制度がある。「学業特待奨励金制度は、1年次の年間授業料または前期授業料を免除、経済援助奨学金は、年間授業料または前期授業料のそれぞれ半額を給付、返還義務はありません」
 就職について。「本年度の内定率は84.4%と2年連続で前年を上回り、来年度は90%台に乗りそうです」。就職力は同大独自の資格課程とエクステンション講座が支える。
資格取得で「就職力」
 「資格課程は、指定されたカリキュラムの履修で免許や資格、受験資格を得ることができ、単位として認定されます。エクステンション講座は、人気の高い公務員講座など、資格専門学校の講師による講義を、安く、学内で、受講できるようになっています」
 社会貢献では、公開講座が人気だ。蔵書数61万冊を誇る図書館は、全国の大学に先駆けて、地元住民に開放した。「5つの機能別閲覧室を有し、インターネットや携帯電話による蔵書検索システムや、オンライン・データベースも充実しています」
 「地域に根ざす大学として、地域自治会との懇談会を23年にもわたって継続し、交流を図ってきました。また、東北・北海道地区で約100回もの、学術講演会や講演と音楽の夕べなどのイベントを開催してきました」
ソチ五輪に3人出場
 学生スポーツ。ソチ五輪にカーリングの日本代表として活躍したのが、卒業生の小笠原歩さん。「小笠原さんに続けと、カーリング部女子チームも頑張っています。1月に中国ハルビンで開かれた国際ジュニア大会で銅メダルを獲得しました」
 そのほか、陸上競技部は、全日本大学駅伝・出雲選抜駅伝の常連校。硬式野球部、弓道部、ソフトテニス部などが強豪だ。「運動部の学生は就職もいいので、各運動部の練習などを見回って励ましています」
学長自ら授業参観
 鶴丸は、運動部だけでなく、授業参観も行っている。「時間があれば1日に3から4つの授業を見ます。学生が何を求め、どうすれば学生を引き付ける授業になるかを探っています。将来的には授業は公開にしていきたい」
 大学のこれから。鶴丸は、冒頭の3・4年次の専門教育の土台となる1・2年次の教養教育の重視を繰り返した。「全ての学生に教養力を身に付けさせたい。それには、三つの要素があります。主体性、考える力、国語力です。特に、国語力では、プレスメントテストを実施したい」
 「学生に選ばれる大学は、うちにしかないものを打ち出すしかない。文化系の総合大学として、学生に学ぶ喜びを与えていきたい。新学部も視野にありますが、地域の協力で生まれ、地域に支えられてきました。今後とも、地域との関係を深めていきたい」。鶴丸が「選ばれる大学」を何度も口にしたのが印象に残った。



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