平成26年7月 第2573号(7月23日)
■大学は往く
新しい学園像を求めて 〈104〉
金沢学院大学
学生が輝く大学めざす
スポーツ力就職力誇る 「生きる力の創造」バネに
「生きる力の創造」によって学生が輝く大学をめざす。金沢学院大学(秋山 稔学長、石川県金沢市)は、歴史と伝統の街、金沢で、女子学園、女子短大、女子大と“女の園”を歩んできた。金沢女子大学(文学部)として1987年に開学、1995年に金沢学院大学に改称するとともに経営情報学部を設置して男女共学に。2006年の創立60周年を契機に、教育理念を新たに「創造」と定め、再スタートを切った。11年、それまでの文学部・経営情報学部・美術文化学部に加えて、スポーツ健康学部を開設。4学部八学科を擁し、「古典からITまで、芸術からスポーツまで」を標榜する北陸随一の私立総合大学になった。ロンドン五輪に5人の代表選手を送るなど高いスポーツレベルと、学生の資格取得を強力にバックアップする就職支援の手厚さを誇る。「学ぶ力を伸ばし、地域と世界を結ぶアクティブな人材を育てたい」と話す学長に学園の歩みと改革、現状とこれからを聞いた。(文中敬称略)
北陸随一の私立総合大学
金沢学院大学は、1946年に赤井米吉が創立した金沢女子専門学園(3年制)が淵源である。「敗戦の深い反省から真の教養は単なる知識の豊かさではなく人間性のうるわしい発達にあり、人間性の本質は愛と理性であるという建学の精神を掲げ、一貫して高等教育に携わってきました」と学長の秋山。
1950年、金沢女子専門学園をもとに金沢女子短期大学が開学。87年に金沢女子大学(文学部のみの単科大学)が開学。95年の金沢学院大学改称とともに開設された経営情報学部は第1期生を送り出した。
99年、大学院を設置、2000年、美術文化学部、11年、スポーツ健康学部を増設。「美術文化学部は、金沢の美術工芸を学び育てようと文化勲章受章(当時は芸術院会員)の大樋長左衛門氏を招請して設置、スポーツ健康学部は、スポーツ教育を強化し、体育の教員養成を目指しました」
現在、4学部に1853人の学生が学ぶ。同じキャンパスに、系列の金沢学院短期大学(ライフデザイン総合学科と食物栄養学科、学生数225人)がある。「クラブ活動や大学祭などの活動や行事を共にすることはもちろん、勉学の面でも交流を深めています」
「生きる力の創造」とは、自分の力でしっかり人生を切り開き、社会に貢献できる力を生み出すことだという。学長の秋山が、新たな教育理念を説明する。
「建学の精神は、長く『愛と理性』という女子高等教育における優れた理念でした。しかし、男女共学になり、この愛と理性を発展的に昇華させた教育理念として『創造』を掲げました」
『創造』の制定に併せて、三つの教育指針を策定した。@ふるさとを愛し、地域社会に貢献するA良識を培い、礼節を重んずるB社会の要請に応え、構想する力、実践する力を育む、である。
各学部の学び。文学部は、日本文学、国際文化、歴史文化の3学科を統合して文学科とし、日本語日本文学、英語英米文学、歴史学、心理学の4専攻を置く。
「幅広い学びから自分の興味、関心に合わせ専攻を選び、自ら学び、自ら考える力を身につけます。英語プレゼンテーションを必須にして、地域や地元企業と連携し、『島清恋愛文学賞』の運営に参加するなど地域をキャンパスにします」
「島清恋愛文学賞」は、白山市出身の作家、島田清次郎を顕彰する目的で1994年に設立されたが、創設した地元自治体が廃止を決めたため、同大が地方文学賞の灯を守るため運営を継承することになった。
経営情報学部は、2学科。「経営ビジネス学科は、ビジネスに役立つ経営・会計・情報を学んで実践力を養います。経営システム学科は、ビジネスの流れを理解しいろいろな情報をコンピュータで効率的に処理する方法などを学びます」
美術文化学部は2学科。「美術学科は、基本技術から専門的な造形や表現方法を、学芸文化財専攻は、美術史や博物館学、自然や都市の芸術・文化に関して幅広く、メディアデザイン学科は、ビジュアルデザイン、映像メディア、情報メディアの3コースで、それぞれ学んでいます」
スポーツ健康学部スポーツ健康学科。「スポーツ愛好者から競技力の向上をはかるアスリートにいたるまでの最先端のトレーニング論と、健康づくりや身体づくりのための健康科学を学びます」
スポーツ力には定評がある。「学生スポーツは、日々の鍛練や試合を通じてスポーツの技能を高めるとともに、人間的に成長することに、その存在意義があります。有為なる人間の育成を目的として、学生のスポーツ活動を大いに奨励し、その振興を図っています」
2006年に「金沢学院アスリート倶楽部」を創設した。「本学が全国に誇るトップアスリートが、青少年への指導、公開練習によるPR、講演会開催などを行い、学校や地域のスポーツ振興に貢献しています」
ロンドン五輪5人出場
日本のトップアスリートが数多く在学、在籍している。「ロンドン五輪のトランポリンとウエイトリフティングの日本代表が在籍、職員にもロンドン五輪ウエイトリフティング出場選手がいますし、指導者にも五輪代表の経験を持つ教員がおり、アスリートの夢をサポートしています」
就職力。「就職をサポートするのが就職支援センター。正課に組み込んだ就職教育講座など独自の支援で就職力を身につけます。ゼミの教員、就職支援センターの職員、学生による三者面談をスタートして3年。学生個人の希望が明確になり具体的な助言ができると三者ともに好評です」
公務員試験や大手企業合格をサポートする「KGSC(金沢学院ステップアップキャリア)講座」という講座と、教員採用試験合格に向けての「教育研究所」がある。
「前者は、1年次から4年次まで段階的に教養力や、専門能力を身につけます。受講料を低く設定し、奨学生制度と連動した減免もあるため、今年の1年生は3割近くが受講しました。後者は、教育分野に貢献できる人材の養成が目的です」
教員免許は全学科で取得できる。「北陸の私立大学では最多の小学校・中学校・高等学校の教員を輩出しています。2012年は、富山県、石川県、福井県で計25人の教員を輩出しました」
地域社会もキャンパス
「地域社会もキャンパス」。地域貢献は、地域連携推進センターが担い、学生と地域社会をマッチングしている。商店街の賑わいを取り戻すにはどうしたらいいか、といった地域の抱える課題を地域の住民と学生が協働して解決をめざす地域商店街の活性化などのプロジェクトを進める。
「小松市との連携では、メディアデザイン学科の学生が、来年春に開催の全国植樹祭のPR映像を制作。来年11月開催の金沢マラソンでは、同マラソン組織委員会とボランティア派遣などの協定を締結しました」
国際交流も活発だ。海外留学や語学研修、海外の大学との提携、国際交流ボランティアへの参加などに取り組む。「グローバルな視点と思考力を備え、地域社会に貢献できる人材を育てるため、海外提携大学への長期、短期の留学で、異文化に触れながら英語力に磨きをかけています」
教養教育強化したい
大学のこれから。「来年、新体制になる文学部が象徴するように、改革を続けていく。ひとつが、教養教育の強化で、地域の実践研究といった科目を単位化して全学共通で取り入れたい。地域社会に貢献する『知の拠点』として、時代や社会が変わろうと対応でき、自分で考え行動できる学生を育てていきたい」
最後は、冒頭の言葉に戻った。「生きる力の創造によって、学生が輝くキャンパスにしたい」。「生きる力の創造によって、地域に貢献できる人材を育てることが本学の使命」。秋山の頭の中は学生への温かい思いやりで占められている。