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教育学術オンライン

平成24年11月 第2505号(11月28日)

大学は往く 新しい学園像を求めて〈61〉
  行動伴った知性を育む
  真の国際人を育てる
  語学能力と情報処理力養う 徹底した少人数教育
  福岡国際大学

 少人数の徹底教育で語学・国際理解のプロフェッショナルを育てる。福岡国際大学(安達義弘学長、福岡県太宰府市)の基本理念は、「全人教育を基礎に国際化社会に即応した人材の育成、それを踏まえた社会への貢献」である。九州・福岡という立地条件もあり、東アジアとの結びつきを重視。第一外国語は、英語のほか中国語か韓国語を履修することができる。最大の特長である少人数教育は、1年次のプレゼミナール(プレゼミ)、2年次から4年次の専門ゼミ、学生生活を支援するクラスアドバイザー制度などに裏打ちされている。就職支援やキャリア科目も充実。「近年、人的・物的交流が急速に活発化している東アジア。国際社会で活躍できる人材を育てていたい」という学長に、これまでの大学の歩みとこれからを聞いた。
(文中敬称略)

社会貢献にも傾注 基本理念は全人教育

 福岡国際大学は、1907年に設立された私立九州高等女学校が淵源である。66年、九州学園福岡女子短期大学を開設、72年、同短期大学を福岡女子短期大学に名称変更。80年、九州女子高等学校を別法人とした。
 98年、福岡国際大学は、国際コミュニケーション学部国際コミュニケーション学科の1学部1学科、男女共学の4年制大学として開学。03年、メディアコミュニケーション学科を新設。04年、同学科をデジタルメディア学科に名称変更。10年、デジタルメディア学科を国際コミュニケーション学科に統合した。
 学長の安達が大学を語る。「全人教育を柱に、国際社会に対応する教育研究に重点を置いています。語学力と情報処理能力の養成を基に、国際コミュニケーション力を備え、国際的な視野に立った判断力と処理能力を備えた人材を育成したい」
 現在、450人の学生が学ぶ。男女比は半々だと言う。国際コミュニケーション学科は、コース制をとる。現代英語、アジア言語文化、国際社会、ビジネス経済の各コース。「旅行・観光業、通訳・翻訳業、貿易業、教員を目指すための学科構成になっています」。第一外国語は、英語43%、韓国語29%、中国語27%。
 基本理念にある全人教育。「個々の学生に寄り添いながらきめの細かい教育です。1年次のプレゼミは15人程度、語学クラスは20人程度にするなど少人数教育を施す。4年間を通じたクラスアドバイザー制度を設けるなど、一人ひとりの学生の個性や状況に応じた指導を行っています」
 教育の中身を聞いた。「語学能力と情報処理能力を重視。1年次、2年次の基礎教育で語学力と情報処理能力の基本を十分修得させるためのカリキュラムを組み、専門課程でも、この二つの能力を高めるための科目を配置しています」
 初年次教育を重視する。今年度からオリエンテーションは合宿制にした。「初年次のプレゼミは1年間開講し、新入生の基礎学力の確認・補充を行うとともに、大学での資料収集や発表、レポートの書き方などを指導。プレゼミ担当者はクラスアドバイザーも兼ね、学生一人ひとりと向き合います」
 実学に重きを置く。「本学は、専門的研究者を養成する教育は行っていません。卒業後、社会に出て国際化社会に対応できる職業人として、それぞれの職業領域で求められる基礎知識を身に付けさせています」
 東アジアに目を向ける。「歴史的に東アジアの玄関口としての役割を担ってきた九州、福岡にある国際大学として、国際化社会に対応した学術研究を行うとともに、国際化社会に対応した教育を行っています」
 英語に力を入れる。「学生の習熟度に応じたクラス編成を行っています。英語に関しては、入学時に全新入学生を対象にプレイスメントテストを行い、その結果をもとにクラス編成をします」
 習熟度別教育は英語以外でも実施している。「情報処理や簿記会計などの科目では、高校時代の学習の有無や学習程度によってクラス分けを行っています」
手厚い就職サポート
 就職サポート。21年度は「在学生および卒業生の就職不安と悩みをサポートする就職支援」が、22年度は「電脳パワーとマンパワーによる就業力アップ」が文部科学省の就職支援・就業力プログラムに採択された。
 「就職支援プログラムは1年次から開始。学生の個性を見極めながら就職活動を支援。初年次のプレゼミで動機づけを行い、2年次後期からはインターネットを活用した就職活動ノウハウや業界研究の進め方についても指導します」
 公務員試験や秘書、英検などの各種検定への対策講座も用意。教職課程では中学校(英語、社会)、高等学校(英語、地理歴史、公民)の各教員免許(一種)の取得も可能だ。
 国際交流。海外語学研修や留学を重視。これまでに、海外の15大学と交流協定を締結し、短期留学をはじめ英語・中国語・韓国語の語学研修を企画して学生を派遣。「中国に留学して卒業後、中国の航空会社に就職した学生もいます」
 「協定校への留学は、学費はいらず寮に入るのでお金はかかりません。留学や語学研修を経験することで、外国語を一から始めた学生でも、きちんと勉強すれば4年間で話せるようになります」
 福岡市の主催する中国語の弁論大会では、市内の国公私立大学の学生が参加するなか、同大の学生が10回の開催中、最優秀賞を3回獲得。韓国語では、同大主催の弁論大会(高校生と大学生部門)に多くの生徒・学生が参加する。
 海外の協定大学からの編入学生の受け入れにも積極的だ。「授業は半期完結のセメスター制を基本とし、秋季の入学・卒業制度を採用。中国と韓国の7大学から編入学生を受け入れています。本学で2年間学び、東大や早慶の大学院に進む留学生が結構います」
 地域貢献も積極的だ。太宰府市民に向けての開放講座がある。太宰府の歴史や文化を知ってもらおうと5年前から開講。「100人近い市民が参加、12回の講義のうち8回以上出席した市民には修了証を与えます」
ライフスキルを修得
 近年、学生に対してライフスキル(生きる力)の修得に力を入れている。ライフスキルは、判断力、考察力、交渉力、理解力、適応力の五つの力が含まれる。
 「いま、企業や社会が求めているのはコミュニケーション能力。それは、多様な他者と協働・共生するために必要な能力です。このライフスキルを身につけさせます。4年間を通じて、この力を培った学生にはコミュニケーション学士を授与しています」
 具体的には?「1から4年次の全ての授業の中で、少人数、双方向の教育手法によってライフスキルを学び、身につけます。そして、年間を通して組まれている異文化交流や短期留学などアクティビティに参加してコミュニケーション能力を向上させます。アクティビティに参加した学生は自己チェック表で自分の活動を振り返り、次の行動に活かすようにします」
 大学のこれから。「一人ひとりの学生にできる限り寄り添いながら、それぞれの学生の個性や能力に応じた指導を行い、個々の学生の能力を引き出したい。全人教育によって、今後とも社会に貢献する人材を育てていきたい」
地域社会との連携強化
 こう続けた。「これからは、東アジアに近い福岡にある国際大学という特長をもっと前面に出し、中国や韓国の大学との連携を密度の濃いものにしたい。同時に、地域に根ざす大学として、地域社会との連携をより強めていきたい」
 学長の安達は、東アジア、そして地域との結びつきが生命線であることを力説するのだった。九州にある小さな国際大学の夢は大きくも手の届くところにある。


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